ソリティア 転生者の望まぬ隠遁生活

蒼村嬉享

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第一章 一人ぼっち

第十一話 “生きている”と“生きていたい”では大きく意味が違う

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 あれ……。僕は何してたんだっけ……。


 ああ……確か神社で女の子の願い事を聞いて猫を捜したんだっけ……。で、色々と上手くいって子供達を家に送る途中で車に……。

 …………。

 僕はまた死んだのかな……。

 …………。

(あれ? でも、僕の身体はあるんだけど……)

 以前と同じ暗闇の中だけど、僕は僕の姿を認識できている。これって……。

「そりゃそうだ。お前ぇさんの身体は特別製だからな……。たとえ高層ビルが倒れてきても死なねぇよ」

 カッ!と暗闇に光が差した。そこに居たのは……。

「神様……」
「おう、久し振りだな」
「………」

 聞きたいこと、言いたいことは山程あった。でも、何故か言葉が出ない。
 それを悟った神様は不敵な笑顔を見せてゆっくりと語り始めた。

「お前ぇさんの言いてぇことは判るぜ? ソイツを今から説明してやる。ああ……心配は要らねぇぞ? ここは時間なんて関係ねぇからな」

 神様がパチリと指を鳴らした途端、 僕の傍にソファーが出現した。神様に頭を下げた僕は脱力して崩れるように腰を下ろす。

「さて……先ずは『何でお前ぇさんが姿を保ってるか』、だな。悪ぃがお前ぇさんはもう人じゃねぇ」
「?? ……どういう意味ですか?」
「文字通りの意味だぜ。お前ぇさんの魂が変化しちまって転生対象から外れちまった」

 僕はそれでも神様の言葉を理解できない。すると神様は初めて申し訳無さそうな顔をした。

「神ってのは間違えねぇのよ。だから失敗しても必然だっつって絶対に謝らねぇ。それは俺も同じだ」
「失敗……」
「まぁ、俺が失敗した訳でもねぇがよ? 一応俺のシマでの不始末よ。説明はしてやらねぇと俺の気が済まねぇ」
「………結局何があったんですか?」

 神様は葉巻を取り出すと思いきり吸い込み、そして吐き出した。

「お前ぇさんの転生の時……俺が慌ててたの覚えてるか?」
「はい……確か外からの侵入者がどうとか……」
「ああ。アレはな? 余所の『セカイ』の神だ。正確には余所の神に仕える下っ端だがな……ウチの組のモン見ただろ? あんな感じだ」
「はぁ……」

 僕の頭の中には『鉄砲玉』に使われたチンピラのイメージが浮かぶ。途端に神様は笑い始めた。

「ハッハッハ。まぁ当たらずも遠からずだな。で……そのチンピラが追い込まれたところで、何と転生し掛けていたお前さんの魂に逃げ込んだ」
「…………は?」
「普通はな? 神の眷族に取り憑かれたらお前さんの心がぶっ壊れる訳だがどういう訳か平気だった。チンピラの魂が限界まで消耗していたからか、お前ぇさんの精神が強かったからかは分からん。が、チンピラの魂はお前ぇさんが完全に取り込んだみてぇだな」
「つ、つ、つまり……」
「お前ぇさんは神の眷族になっちまった訳よ。しかも俺のじゃなく余所の神のな?」

 それは最悪、目の前の神様との敵対を意味しているんじゃないのだろうか……?

「そこで一つ問題があんのよ。実はな……お前ぇさんの魂が変化したことで余所の神の眷族でも無くなった。つまり野良のら神だな」
「野良……」
「時折居るんだよ。魂が変化して神に昇格する奴が……。まぁ、そういう奴は大概他の神に食われる」

 僕は背筋が寒くなった……。神様の目が怖い。

「本来ならお前ぇさんも同じ運命よ。力を喰われて魂は消える。だが、何度も言うように今回は俺のシマ……つまりウチの組の不始末よ。だから謝れねぇ代わりに救いをやろう」
「す、救いですか?」
「おう。お前ぇさんは俺の兄弟分ってことにする。そうすりゃ面倒は大きく減る。自分で言うのも何だが、ウチの組のシマはデカイからな……」

 つまり庇護下に入れてくれるってことかな……。

「簡単に言やぁそうだな。まぁ、色々と得もあるが時折仕事も振るぜ?」
「仕事……。僕、ケンカからきしですよ?」
「その辺は適材適所をやるさ。で、どうする?」

 一瞬躊躇ったけど、断ったら僕は消えることになるんだろうな。でも……まだ消えたくない。家族だった皆ともまた会いたいし、新しい家族になってくれたマウに……謝らないと。

「まぁ、お前ぇさんならそういうと思ったぜ。じゃあ、コイツを身に付けろ」

 神様が放り投げたのは時計だ。凄く高そうな金色の宝石付き時計。僕には明らかに似合わないけど……。

「兄弟の契りってのは酒が相場だが、お前ぇさんはまだ若ぇ。代わりに俺が身に付けていたモノをやる。で、お前ぇさんの身に付けているものと交換するんだが……」
「お恥ずかしい話ですが着の身着のままの無一文です」
「だよな。じゃあ代わりにその服のボタンを貰うぜ?」

 僕のシャツのボタンが独りでに外れて神様の手に収まった。

「これでお前ぇさんは俺の舎弟だ。仲良くやろうや」

 ………神様の舎弟。僕はただただ呆然とするしかなかった
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