ソリティア 転生者の望まぬ隠遁生活

蒼村嬉享

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第二章 新しい日常へ

第一話 何気ない日々に感謝するのは大切なこと

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 僕とマウが神社に戻ったのは、もう日が沈んだ頃……。大したことはしてない筈なのにどっと疲れた。

 あ……。どうせならマウにご飯を食べさせて来れば良かったな……。

「ゴメンね、マウ……。今から食べておいで」
「ンナァ~ゥ」

 マウは小さく尻尾を横に振った。拒否?

「でも、お腹空いてるでしょ?」
「ン~……」

 マウは僕の身体を更によじ登ってきた。その内神社に着いたので社の中でマウと向かい合う様に座る。

「遠慮しなくても良いんだよ?」
「ンルゥ~……」
「でもさ……いや。分かったよ。じゃあ、明日二人で食べに行こうね」
「ニャア~」

 マウは再び僕の身体に近付いて胡座をかいた膝の上に丸まった。随分甘えてる気がする……。無理もないか……僕がまた考え無しに動いたせいでマウを心配させた。

 僕は馬鹿だ……。自分の命は自分だけのものじゃない。マウに家族になって欲しいって頼んだの、僕じゃないか。それを……あんなに心配させるなんて……。

 僕は自分が赦せなかった──。イライラして思い切り自分で頬を殴った。痛い……けど、直ぐに痛みは消えた……。自分にロクな罰も与えられない……。

 ……。もう身体を張っても死なないって分かったけど、マウの前ではあんな真似はしないようにしよう。

「……。ありがとう、マウ。君が居るからこの世界で生きていたいって思えたんだよ?」
「…………」

 ピクリと尻尾が反応したけど、今は動きたくないらしい。


 さて……明日からは暮らしが変わる………かもしれない。

 あ……そういえば、ギデリさんが最低限の暮らしを準備するって言ってたけど……何だろ?

 そう考えた瞬間、腕時計が輝いた。元々金ピカの腕時計だけど眩しいほどに光った。マウも驚いて顔を上げる。

 やがて社の床がガクリと動き始めた。ゆっくりと降下している感覚が伝わり少ししてから停止した。社の入り口があった方角には何やら扉が見える。
 マウと顔を見合わせた後、ゆっくりと扉を押し開いた先──そこには部屋があった。

 中を確認すると1LDKの間取り。地下なのに窓の外には景色が見える。何で?というより何処?

 結構良い家具が揃ってるし、本棚には紙の蔵書が……ギデリさんはこの辺りは僕に配慮してくれたみたいだ。ベッドにソファー、冷蔵庫、キッチン、トイレ、風呂、テレビ……スマホまで置いてある。空調は見当たらないけど、多分自動調整されてる。

 初めてカルムンドに来た時に比べたら雲泥の差だ……。

 ん……?スマホの下にメモが……。

『神が宿無しってのは頂けねぇからな。飯も何日か分は用意してやったが、後は自分で何とかしろ』

 ……やっぱりギデリさんは、何だかんだと面倒見が良いと思う。あんな恰好しているのは上に立つ立場があるからだよね……神様の世界も大変だなぁ。……他人事じゃないけどね。

 改めて冷蔵庫を開ければ色んな食材が入っていた。あまり料理得意じゃないけど料理本もあったから大丈夫だと思う。あ!魚があった!
 ………猫って生魚大丈夫なんだっけ?判らないから一応焼こう。

 その間に僕は卵とハムを焼く。ああ……香ばしくて涙が出る。ハムはマウにもお裾分け。減塩だけどマウの健康の為に今日だけにしよう。
 電子レンジで温めたパックのご飯とインスタントの味噌汁。ようやく胃袋に食べ物を入れられる。

「マウ~! ご飯だよ~!」
「ニャア~!」

 奥のソファーからマウが駆け寄ってきた。やっぱり家族との食事が一番美味しいよね。

 食後、風呂に入ってフカフカのベッドに身を任せる。日々の暮らしがどれだけ恵まれていたか今なら判る。日本は幸せな国だった。少なくとも僕は恵まれていた……。

 皆、元気かな……。災害の影響は無かったかな……。

「ンナァ~ゥ」

 マウが僕のベッドに潜り込んできた。猫用のベッドもあるけど、僕も傍に居てくれた方が嬉しい。

 ギデリさんのお陰で暮らしぶりは快適になった。後の生活は僕次第なんだよね。マウの為にも、後から来る日本の家族達の為にも、安心して転生出来る世界を目指さなくっちゃ。


 さぁ……明日は世界を良くする為に今後の計画を立てないと。先ずは……この街から良くして行こう。



 
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