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蔓延るものを改めて知って
しおりを挟む翌朝――ギル王子は父に手紙を送ってくれたようで、「一緒に怒られましょう」と笑って言ってくれた。顔は似ているのに中身がこうも違うと婚約破棄しようとしていたわたしが悪い子だと良心を責められる。
ルナは普段、女の子の格好をしているらしく服を借りてしまった。普通の町娘になったようで、ちょっと新鮮だ。
「で?何調べるって?」
「いえ……その」
他国の人間が、処刑された令嬢の近辺を調べる……というのは怪しいよね。なんて言い訳をするか悩んでしまう。
「リア皇女おひとりにさせるわけにはいきませんし…目的だけでも」
「そーそー皇女サマになんかあったら戦争になっちゃうんじゃね?」
二人の言うとおりである。お父様はわたしのことを大事にしてくださっているから、もし何かあれば……ありえない話ではない。
もし言及されたら素直に言うしかない。わたしが…ジリアナだったということを。
「…その……クリスティーナ公爵家のことを調べたくて」
わたしの言葉に二人はとても驚いているようだった。
…エドワードの元婚約者であり処刑された人のことを調べようとしているのだから当然の反応ではある。
二人は顔を見合わせて、少し不安そうな顔を浮かべた後に頷いてわたしを見た。
「…それなら城の書庫に載っているはずだよ」
――――書庫。屋敷ではなく、書庫と言われた時点で、察してしまった。
…いや、考えすぎかもしれない。ジリアナのことなら書庫にあるだろう。
城内を歩いて、書庫へと向かう。近付くたびに一歩一歩が重くなっていく。
昔から変わらない重たそうな扉の前で息を止める。ルナがゆっくりと扉を開けると、知っている頃よりもずっと埃っぽくて古くなった紙の匂いがした。
「相変わらず陰気くせーとこ。さっさと調べちゃおーぜ」
「クリスティーナ公爵家は古くから続く家系だから…どこから調べようか」
ルナとギル王子がうろうろと本棚の奥へと向かう。わたしも遅れて本棚を眺めながらクリスティーナ公爵家が書かれてる本を探す。最近の事が知れたらいいんだけど……。
少しして、見付けた。
――七年前で終わっている本が。
予想はしていた…けど、事実にぐっと目頭が熱くなるのを感じてしまう。
すう、と息を吸い込んでから中を開く。最後のページを見て、我慢していた粒が目から落ちる。
『クリスティーナ公爵家は王族を貶めようとした罪で、火炙りの刑に処す』
わたしのせいで家族も死んでしまっていたなんて…。王族とは古くからの付き合いで、陥れようだなんて父も思っていないことはわかっていたのに…他の貴族は自分の身を守るための者や、公爵家が落ちれば自分が成り上がれる可能性を考えて加担した者も居るのだろう。
怒りはなかった。ただ、悲しさと虚しさを感じた。
最近までのことを調べると皆適当な罪で処罰されているようだった。
エドワードの独裁政治ぶりがよくわかる。
逆らう者は皆処刑。他国に逃げた者もいるようだけど、気付かれた者も同様に処刑されている。
そしてその分、平民から貴族になったものもいるようだ。……ある一定の地域が主にのようだな。カルム村…どこかで聞いたような覚えがあるけど、思い出せない。
エドワードと、アリア。
独裁政治と不貞が蔓延って、綺麗だと思っていた祖国は汚らしいものになってしまっている。
「どうにかしないと」
自分の責任だけを感じてぽつりと言葉を漏らした。
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