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一歩近付いた距離
しおりを挟む城門の前にいるのも、ということでお城の中の一室に居る。
…たった七年では何も変わらないと思っていたが、あの頃よりもずっと城の中が汚く見える。
「今日こそあの女にびしって言ってやろうと思ってたのに、つまんね」
「ルナ、何度も言うように余計なことはするな」
「へーへー。どうせあの王様にゃ不貞を見せたって信じねーだろうしな。ちぇっ」
あの女…というのはアリアのことだろうか。少し強めに言うギル王子はいつもと違くて、新鮮だな。そして人目がわたしだけだからか、ルナマリアのことを愛称で呼んでいる。
「ところで、どうしてリアマリア皇女が王国へ?……まさか、馬車に乗ってきたわけじゃ…」
ギル王子の言葉にどきっとして俯いてしまう。いくら前世の関係を色々調べたいからといって無理矢理すぎたことは反省している。
わたしの反応で察したギル王子は困った顔をしていた。
「なに?忍び込んできたの?皇女サマが?すげーおもしれーじゃん!」
きらきら輝いた瞳でわたしを見るルナマリア。…ルナマリアは女性名だったはずで、こんなに可愛らしい子が男の子とは未だに信じられない。
「ルナマリアって名前は、俺がかーちゃんに似て可愛く生まれちまったからさ。親父が勢い余って付けたんだよ。つーか俺ら名前似てんな!なっ!」
「ルナ、言葉遣いが失礼だぞ」
「いーじゃん。なあ?」
わたしを見て首を傾げられて、慌ててこくこく頷く。前世でもこんなに距離を詰めてくる人なんて居なかったからどう反応したらいいのかわからなくて。
にっと歯を見せて笑うルナマリアに、ギル王子はなんだか少しむっとしている。
「俺のことはルナって呼んでよ。俺もリアって呼ぶし」
「ルナ、そこまでは」
「い、いえ、構いません。…よろしければギル王子もリアと呼び捨てて頂ければ」
愛称で呼び合う仲、というのは正直憧れがある。学園に通っていた際も仲の良い人たちは愛称で呼んでいたし。
わたしの言葉にギル王子は視線を泳がせた後に小さく頷いて。
「…では、リア皇女と」
「はい、ありがとうございます」
…わたしはアリアに憧れているところもあったんだな、と感じる。愛称で呼び合うとぐっと距離が近付いた気がする。
「えと…ギル王子は何故城門の前に?」
「ルナが来るような気がして。……少し、男女の騒ぎがあったので、そういうときはいつも飛んでくるので止めなければと」
アリアのことというのは伏せたいようだ。騒ぎを起こしてしまったのはわたしなんだけれど、敢えて知らないふりをして、そうですかと頷く。
「親父にずっと言い寄ってる女がいてさ、親父は断ってるみてーだけど許せねえんだよ」
…もしかして、ガイというあの兵士が父親なんだろうか。
アリアのことを嫌っている様子のルナを見ると、城門の前でギル王子に言っていたことを納得する。
「ひとまず、夜も遅いですから休んで行かれてはいかがでしょうか。調べものに関しては協力しますから」
「…はい、そうさせていただきますね」
ギル王子もあまりエドワードやアリアには知られたくないようで、ルナに口酸っぱく口外しないようにと言っていた。
…わたしはお父様に叱られる覚悟だけして、夜を過ごした。
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