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20:理由を聞かせてもらったんです
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「遠いところからわざわざお越しいただき恐縮ですが…」
「いいえ、構いませんわ。お呼びいただきありがとうございます」
「愚息が勝手なことをしてしまったようで。当家は茶会は行わない方針なのでね」
スカートの裾を持って軽いお辞儀をする。ちらりと見たラグナ辺境伯の目は余計なことをするなとでも言いたげである。
一応子供でも王女という肩書きの手前はっきりとは言わないが。
「お茶は飲めませんでしたが、とても楽しい時間は過ごさせて貰いましたわ」
「下らないことを…」
にっこりと笑顔を崩さないまま言えば、溜め息を吐かれてしまった。
ちらりと横目でアスフェリオスを見れば、少し震えていて……俯いてしまった。俯く前に見たアスフェリオスの瞳は、涙ぐんでいるようにも見えた。
「お父様、そのような言い方は」
「お前は甘いのだ、ドーラ。黙っていなさい」
辺境伯は、現騎士団団長の息子だったっけ。まだ騎士長が健在なので、息子が代わりに領地を受け継ぐことになった…んだっけ?
騎士の息子だからなのかな。ものすごく威厳たっぷりだ。RPGならラスボスもぴったりである。
綺麗に整えられた髭を撫で付けて、もう一度溜め息を吐くと辺境伯は「どうぞ」とソファに座るように促す。
促されるままにソファに座ると、動こうとしないアスフェリオスをドーラが引っ張ってわたしの隣へと座らせた。
「王女殿下、家族の問題ですので余計な真似はしないで頂きたい」
「あら、余計な真似とは?」
「アスフェリオスのことです」
やっぱりちょっとメイクを直したことが問題なのか。男は男らしく、女は女らしく。それが当たり前の世界だというのはわかっているけど……。
「いいえ、お節介はしてしまいましたが余計とは思ってませんわ。先程も申しました通り、わたくし楽しかったもの」
化粧に興味津々なアスフェリオスはたくさん質問してきたし、わたしのやることに嬉しそうにしてくれたし……余計なんて言われるなんて。
「わたくしは…自由に好きな格好をしていいと思ってますわ。こんなに可愛らしい顔して、ドレスも似合うなんて、何人かの令嬢とお会いしてきましたが、同じくらい愛らしい姿ですわ」
はっきりと告げれば辺境伯の顔が少し淀んだ。…なんだか、男の子にしたくて怒っている様子ではなさそうだ。
他人の家の事情にここまで口を出す立場ではないが、わたしの未来のためにもその権利はある。
「どうしてそんなに反対しておりますの?」
わたしには、アスフェリオスの意思を少しでも尊重しているように思えたのだ。
騎士の家系だから恥ずかしくて、というなら騎士団へ有無を言わせず放り投げればいい。ドレスやメイクなんてする暇もないほどの訓練が待っているだろうし。
屋敷にドレスや化粧道具を置かなければいい。化粧道具はどれもきれいで、使われてないものだった。ドレスだってドーラのお下がりでもないだろう。
…少なくとも、ドレスも化粧道具も新しいものを用意している。化粧道具にそこまで詳しくなかったアスフェリオスが勝手にここまで集めることだって出来ないだろうし。
「…それは」
ドーラとアスフェリオスが息を飲む。
「それは?」
「それは…アスフェリオスが可愛いからに決まっているだろう――!」
……予想外の言葉に、わたし達三人は目を丸くして固まってしまったのであった…。
「いいえ、構いませんわ。お呼びいただきありがとうございます」
「愚息が勝手なことをしてしまったようで。当家は茶会は行わない方針なのでね」
スカートの裾を持って軽いお辞儀をする。ちらりと見たラグナ辺境伯の目は余計なことをするなとでも言いたげである。
一応子供でも王女という肩書きの手前はっきりとは言わないが。
「お茶は飲めませんでしたが、とても楽しい時間は過ごさせて貰いましたわ」
「下らないことを…」
にっこりと笑顔を崩さないまま言えば、溜め息を吐かれてしまった。
ちらりと横目でアスフェリオスを見れば、少し震えていて……俯いてしまった。俯く前に見たアスフェリオスの瞳は、涙ぐんでいるようにも見えた。
「お父様、そのような言い方は」
「お前は甘いのだ、ドーラ。黙っていなさい」
辺境伯は、現騎士団団長の息子だったっけ。まだ騎士長が健在なので、息子が代わりに領地を受け継ぐことになった…んだっけ?
騎士の息子だからなのかな。ものすごく威厳たっぷりだ。RPGならラスボスもぴったりである。
綺麗に整えられた髭を撫で付けて、もう一度溜め息を吐くと辺境伯は「どうぞ」とソファに座るように促す。
促されるままにソファに座ると、動こうとしないアスフェリオスをドーラが引っ張ってわたしの隣へと座らせた。
「王女殿下、家族の問題ですので余計な真似はしないで頂きたい」
「あら、余計な真似とは?」
「アスフェリオスのことです」
やっぱりちょっとメイクを直したことが問題なのか。男は男らしく、女は女らしく。それが当たり前の世界だというのはわかっているけど……。
「いいえ、お節介はしてしまいましたが余計とは思ってませんわ。先程も申しました通り、わたくし楽しかったもの」
化粧に興味津々なアスフェリオスはたくさん質問してきたし、わたしのやることに嬉しそうにしてくれたし……余計なんて言われるなんて。
「わたくしは…自由に好きな格好をしていいと思ってますわ。こんなに可愛らしい顔して、ドレスも似合うなんて、何人かの令嬢とお会いしてきましたが、同じくらい愛らしい姿ですわ」
はっきりと告げれば辺境伯の顔が少し淀んだ。…なんだか、男の子にしたくて怒っている様子ではなさそうだ。
他人の家の事情にここまで口を出す立場ではないが、わたしの未来のためにもその権利はある。
「どうしてそんなに反対しておりますの?」
わたしには、アスフェリオスの意思を少しでも尊重しているように思えたのだ。
騎士の家系だから恥ずかしくて、というなら騎士団へ有無を言わせず放り投げればいい。ドレスやメイクなんてする暇もないほどの訓練が待っているだろうし。
屋敷にドレスや化粧道具を置かなければいい。化粧道具はどれもきれいで、使われてないものだった。ドレスだってドーラのお下がりでもないだろう。
…少なくとも、ドレスも化粧道具も新しいものを用意している。化粧道具にそこまで詳しくなかったアスフェリオスが勝手にここまで集めることだって出来ないだろうし。
「…それは」
ドーラとアスフェリオスが息を飲む。
「それは?」
「それは…アスフェリオスが可愛いからに決まっているだろう――!」
……予想外の言葉に、わたし達三人は目を丸くして固まってしまったのであった…。
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