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リオン 1
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空に浮かぶ真ん丸い月を見上げる事が好きだった。
澄んだ空に浮かぶ綺麗な月と、きらきらと輝く星を見上げる事が好きだった。
だけど、いつからだろうな、空が淀んで星が見えなくなったのは。
いつからだろう?ちっとも月が綺麗に見えなくなったのは。
月には生き残る為に移住した人間が住みつき、地球にはロボットと移住できなかった人間と改造人間を作る研究員と改造人間が残された。
ロボットと戦って、地球に平和を取り戻す事が改造人間の戦う理由らしいんだけど、俺から言わせてみれば、そんな事どうだって良い。
地球上からロボットが消えた後には改造人間が残る。人間は改造人間をも滅ぼそうとする。そうやってロボットを徹底的に排除した後は何をする?
人間がより良く暮らす為に機械を作るんだろう。
何十年、何百年……それとも数年か、地球上には数え切れないほどの機械が生まれるだろう。
生きる為にはなくてはならないほど身近な存在になるだろう。
そうなった後は?
もっと高度な機械を作る人間が出る筈だ。で、結果的には再びロボットが出来上がる。
長い時間をかけて同じ事を繰り返すだけの馬鹿が月にはわんさかと暮らしてるんだから、月が綺麗に見える訳がない。
けど、俺は戦うんだ。ロボットを地球上から排除する為に戦う改造人間達となんら変わりない。
ただ、ちょっとだけ目的が違う。
綺麗だった月を取り戻す為……月から人間を排除するためには、地球を平和にする事が1番の近道だから。
とは言っても、毎日毎日月から何人もの若者達がやってくるから、月の人口はそんなに多くはないと思う。
月から若者が何をしに地球に来るのか?
そんなの、改造人間になるために決まってる。自分から進んで来るのか、それとも無理矢理か……なんだって良い。
地球に置き去りにされた人間が月に移住するには、相当な金額が必要になる。その金を工面する為だけに施設に売られる子供を大勢見てきた身として、月から来る若者なんか皆箱入りにしか見えない。
まぁ、あっちにはあっちの事情があるんだろうが、知った事じゃないし。
「うわぁああああ!!な、なんだよこれ!なんなんだよこれぇ!」
あぁ、またか。
地球には、自分が改造人間の素材である事を知らされないまま改造される人間もいる。何の覚悟もなく、ある日目覚めたら突然改造人間にされていた……どれ程の恐怖だろう?全く想像もできない。
酷い事に、それだけじゃ終わらなくて、パニックに陥って暴れた改造人間は「欠陥品」扱いされて即廃棄。
クソだ。
許されるのなら……そんな方法があるのなら、俺はロボットとして人間を滅ぼしたいと思ってる。そうなったら、地球を改造人間の楽園にでもしようかな?そうすると月が薄汚いままだけど、綺麗な地球を見せつけているとか考え直せば気分は良いかもね。
でもなぁ……改造人間を残す意味はあるか?元々は月で育った箱入りが多いんだからクソでしかないんじゃないか?地球にいた子達は……助けたいんだけどさ、それをどう見分ければ良いんだって話。
「大人しくしろ!」
暴れている改造人間1人どうにも出来ないくせに、研究員様、か。
本当にクソ。
「触るなっ!来るな!あぁあああぁああぁあ」
あの子は、もう駄目だな。欠陥品扱いにされた事も勿論だけど、精神も壊れて……
ドン!ドン!
ん?
部屋の外からそんな声がして振り返ると、防弾ガラスの向こう側に1人の改造人間が立っていて、何度も何度もガラスを叩いていた。
「どこから来たんだ?」
隣にいた研究員の1人が怪訝そうな表情で改造人間を眺めている。このままだとあの子まで廃棄処分か?
「少し様子を見ようじゃないか」
どうなるのか、どうするのか、少し興味がある。
「ですが……」
廃棄処分にする時は即決の癖に、それ以外の所ではやけに消極的なんだな。
奥の部屋に移動すると慌てて着いてきた研究員。ドアが完全に閉まった所で改造人間を室内に招く為のドアを開けた。
「入って良いよ」
マイクを使って声をかけてから数分後にソロソロと入ってきた改造人間は、疲れもせずに暴れ続けていた改造人間に近付いていくと何度も何度も肩を揺らした。
「タイキしっかりしろ!タイキ!」
暴れていた子の名前はタイキと言うらしい。
名前を知っていると言う事は知り合いか?いや、単なる知り合いだけなら廃棄される危険を冒してまでここには来ないだろうし……だとしたら兄弟か、友達?
「触るなぁあああ!」
思いっきり腕を振り上げた反動で投げ飛ばされた改造人間は、クルッと回転して壁に足をついて意図も簡単に着地すると、懲りずにタイキの肩を揺らしに向かった。
「大丈夫、俺も改造人間だから。これからも一緒だ」
そう言いながら自分の耳の後ろをタイキに見せている改造人間。そこには改造人間を動けなくする為の制御装置がある。
「なんで……ジュタまで?なんで……なんでっ?」
今度はタイキが改造人間の肩を揺らし始めた。
そうか、あの子はジュタと言うのか。
「前よりも激しく暴れられる体になっただけ。それだけじゃねーか」
なんて前向きで清々しい解釈なんだろう……。
「冗談じゃねーよ……こんな現実、俺は認めない!」
タイキはキョロキョロと室内を見渡し、ガラス越しに俺と目があうとギッと睨んできた。
ここで飛び掛ってきても、俺はガラス越しなのだから無傷だろうし、壁に設置されているトラップのスイッチを押せば電流が流れてタイキのロボット部分がショートする。そうなった時、廃棄が決定している改造人間を研究員達が修理すると思う?
絶対にしない。
あの子達は、ここで終わりかな?
今にも飛び掛ってきそうなタイキの腕を掴んでいるジュタは、タイキと同じような目で俺を睨んでいるけど冷静だった。
「タイキ、頼むから落ち着いてくれ」
2人は向かい合って少しばかり見つめあった後、その場に座り込んだ。
何か喋っているのだろうけど、ここまで声は聞こえてこない。でも、口の動きを見る限り名前を呼び、大丈夫だと言い聞かせているような感じ。それでタイキも小さく頷き、名前を呼んでいる。
トントンとジュタがタイキの背中をあやすように叩き始めると、タイキは完全に顔を両手で覆って隠してしまった。
泣いているのだろうか?
無理もない……。
すっかりと勢いの消えた2人は座り込んだままで、俺に向けて来る視線はキツイけど襲い掛かってくるような素振りは見せない。
なんとか、大丈夫そうだね。
残った問題は、タイキの破棄を決定してしまった俺の隣にいる研究員の存在か。まぁ、こっちは俺がなんとかするから安心してよ。
「2人共CFクラスだ。さっさと行け」
マイクを通して2人に声をかけると、廃棄だと思っていたらしい2人は同時にキョトンとした表情を浮かべてしまった。それがまた可愛らしくて、こうやって見てると本当にただの人間なんだなぁって……ジュタの言っていた通り、前よりも激しく暴れられる体になっただけって気がするよ。
現実は、ロボットと戦うだけの道具に過ぎない。ロボットに勝っても、破棄されるだけの未来が用意されているだけ。
残酷過ぎる。
そんな残酷な事を平気でやってのける人間様は、どれだけ立派なんだ?
こんなガラスとトラップに守られてなきゃ何にも出来ない研究員様は、どれほど偉いんだ?
反吐が出る。
研究員である自分自身にも嫌気がする。
「あの2体は普通破棄でしょ」
研究員は、2人が出て行くのを見送った後になって文句を言う。それも俺に直接ではなくて、そこら辺の片付けを始めながら、ぼやく様にブツブツと。
この施設内にいる研究員の多くは、文句があってもその場では何も言わず、上層部に直接通報すると言う形をとる。しかも匿名で。だから、こうしてブツブツでも本音を言う研究員は珍しい。
「ねぇキミ。あの子達はちゃんと大人しくCFクラスに向かった。違う?それの何処に破棄する理由があるのさ」
少し話をしようじゃないか。
キミの意見を聞かせてくれないか?
ちょっとでも言う事を聞かなかったら破棄する方針をどう思う?
ちょっとでも気に入らなければ破棄するやり方をどう思う?
「歯向かってくる固体は危険。破棄は当然だと思います」
研究員は片付けていた手を止め、俺の目を見てそう答えてくれた。
確かに、生身である俺達は改造人間に攻撃されたらひとたまりもないから、反抗的な固体はその場で処分するという方法も、まぁ間違ってはないんだと思う。だけど、そういう方針であるが故に反抗されているという悪循環になってないか?
それに、何の説明もなく改造人間にされたら誰だって混乱するだろう。少し取り乱して両手を振り回しただけで歯向かっていると判断する考えが恐ろしいよ。
それなら保護施設や孤児院に、ここは改造人間素材育成施設である。と、説明する義務を負わせるべきだ。その上で自分から改造人間になりたいと名乗り出た子だけを改造するようにすれば良い。
違う?
子供の未来を奪い、改造し、そして戦わせているくせに、その改造人間達への態度は何だ?何故そこまで非道になれる?
はぁ……本当に、こんな施設消えてなくなってしまえば良いのに。
あ、そうだ。
「ねぇ、頼みたい事があるんだけど」
実に簡単で、単純な事を見落としていたよ。
「この流れで頼み事ですか?」
まぁね、少し険悪だった所で頼み事は不自然だったのかも知れないね。だけど、この場にいるキミにしか頼めない事なんだ。
「細かい事は気にしない。ね、俺を改造人間にしてくれない?」
簡単だろ?だってキミはタイキをたったの10時間で改造人間にして見せた腕を持っているじゃないか。その腕にかかれば、同時に2体の改造なんて屁でもない筈だよ。
「なにを言って……」
送られてくる子達は容赦なく改造するのに、どうして俺には躊躇するんだい?
「改造人間をもっと知りたいんだよ」
そしてロボットの事も。
人工頭脳を持ったロボットが今何を考えているのか、何を思って改造人間と戦っているのか。
人間を実験材料として使いたいのならこの施設が狙われていない理由は?空を飛んで月に向かわない理由は?
「馬鹿馬鹿しいです!」
そうかな?
「改造人間の研究員が、ロボットの事を知りたいと思って何が可笑しい?」
改造人間になりたい……ロボットになりたいと思う事の何がそんなに可笑しい?
真っ先に月に逃げて行った偉い人間に不信感を抱く事は間違ってる?
改造人間の材料である子達に、詳しい説明もしない施設のやり方に嫌悪感を抱く事は?
自分の意にそぐわないってだけで改造人間を簡単に破棄処分、前線に送った後は修理もしない研究員のやり方に怒りが湧き出して来る事は?
「……本気ですか?」
そうだね。
もういっそ改造人間と言わずに完全なロボットにして欲しいってくらいには真面目だ。
澄んだ空に浮かぶ綺麗な月と、きらきらと輝く星を見上げる事が好きだった。
だけど、いつからだろうな、空が淀んで星が見えなくなったのは。
いつからだろう?ちっとも月が綺麗に見えなくなったのは。
月には生き残る為に移住した人間が住みつき、地球にはロボットと移住できなかった人間と改造人間を作る研究員と改造人間が残された。
ロボットと戦って、地球に平和を取り戻す事が改造人間の戦う理由らしいんだけど、俺から言わせてみれば、そんな事どうだって良い。
地球上からロボットが消えた後には改造人間が残る。人間は改造人間をも滅ぼそうとする。そうやってロボットを徹底的に排除した後は何をする?
人間がより良く暮らす為に機械を作るんだろう。
何十年、何百年……それとも数年か、地球上には数え切れないほどの機械が生まれるだろう。
生きる為にはなくてはならないほど身近な存在になるだろう。
そうなった後は?
もっと高度な機械を作る人間が出る筈だ。で、結果的には再びロボットが出来上がる。
長い時間をかけて同じ事を繰り返すだけの馬鹿が月にはわんさかと暮らしてるんだから、月が綺麗に見える訳がない。
けど、俺は戦うんだ。ロボットを地球上から排除する為に戦う改造人間達となんら変わりない。
ただ、ちょっとだけ目的が違う。
綺麗だった月を取り戻す為……月から人間を排除するためには、地球を平和にする事が1番の近道だから。
とは言っても、毎日毎日月から何人もの若者達がやってくるから、月の人口はそんなに多くはないと思う。
月から若者が何をしに地球に来るのか?
そんなの、改造人間になるために決まってる。自分から進んで来るのか、それとも無理矢理か……なんだって良い。
地球に置き去りにされた人間が月に移住するには、相当な金額が必要になる。その金を工面する為だけに施設に売られる子供を大勢見てきた身として、月から来る若者なんか皆箱入りにしか見えない。
まぁ、あっちにはあっちの事情があるんだろうが、知った事じゃないし。
「うわぁああああ!!な、なんだよこれ!なんなんだよこれぇ!」
あぁ、またか。
地球には、自分が改造人間の素材である事を知らされないまま改造される人間もいる。何の覚悟もなく、ある日目覚めたら突然改造人間にされていた……どれ程の恐怖だろう?全く想像もできない。
酷い事に、それだけじゃ終わらなくて、パニックに陥って暴れた改造人間は「欠陥品」扱いされて即廃棄。
クソだ。
許されるのなら……そんな方法があるのなら、俺はロボットとして人間を滅ぼしたいと思ってる。そうなったら、地球を改造人間の楽園にでもしようかな?そうすると月が薄汚いままだけど、綺麗な地球を見せつけているとか考え直せば気分は良いかもね。
でもなぁ……改造人間を残す意味はあるか?元々は月で育った箱入りが多いんだからクソでしかないんじゃないか?地球にいた子達は……助けたいんだけどさ、それをどう見分ければ良いんだって話。
「大人しくしろ!」
暴れている改造人間1人どうにも出来ないくせに、研究員様、か。
本当にクソ。
「触るなっ!来るな!あぁあああぁああぁあ」
あの子は、もう駄目だな。欠陥品扱いにされた事も勿論だけど、精神も壊れて……
ドン!ドン!
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「どこから来たんだ?」
隣にいた研究員の1人が怪訝そうな表情で改造人間を眺めている。このままだとあの子まで廃棄処分か?
「少し様子を見ようじゃないか」
どうなるのか、どうするのか、少し興味がある。
「ですが……」
廃棄処分にする時は即決の癖に、それ以外の所ではやけに消極的なんだな。
奥の部屋に移動すると慌てて着いてきた研究員。ドアが完全に閉まった所で改造人間を室内に招く為のドアを開けた。
「入って良いよ」
マイクを使って声をかけてから数分後にソロソロと入ってきた改造人間は、疲れもせずに暴れ続けていた改造人間に近付いていくと何度も何度も肩を揺らした。
「タイキしっかりしろ!タイキ!」
暴れていた子の名前はタイキと言うらしい。
名前を知っていると言う事は知り合いか?いや、単なる知り合いだけなら廃棄される危険を冒してまでここには来ないだろうし……だとしたら兄弟か、友達?
「触るなぁあああ!」
思いっきり腕を振り上げた反動で投げ飛ばされた改造人間は、クルッと回転して壁に足をついて意図も簡単に着地すると、懲りずにタイキの肩を揺らしに向かった。
「大丈夫、俺も改造人間だから。これからも一緒だ」
そう言いながら自分の耳の後ろをタイキに見せている改造人間。そこには改造人間を動けなくする為の制御装置がある。
「なんで……ジュタまで?なんで……なんでっ?」
今度はタイキが改造人間の肩を揺らし始めた。
そうか、あの子はジュタと言うのか。
「前よりも激しく暴れられる体になっただけ。それだけじゃねーか」
なんて前向きで清々しい解釈なんだろう……。
「冗談じゃねーよ……こんな現実、俺は認めない!」
タイキはキョロキョロと室内を見渡し、ガラス越しに俺と目があうとギッと睨んできた。
ここで飛び掛ってきても、俺はガラス越しなのだから無傷だろうし、壁に設置されているトラップのスイッチを押せば電流が流れてタイキのロボット部分がショートする。そうなった時、廃棄が決定している改造人間を研究員達が修理すると思う?
絶対にしない。
あの子達は、ここで終わりかな?
今にも飛び掛ってきそうなタイキの腕を掴んでいるジュタは、タイキと同じような目で俺を睨んでいるけど冷静だった。
「タイキ、頼むから落ち着いてくれ」
2人は向かい合って少しばかり見つめあった後、その場に座り込んだ。
何か喋っているのだろうけど、ここまで声は聞こえてこない。でも、口の動きを見る限り名前を呼び、大丈夫だと言い聞かせているような感じ。それでタイキも小さく頷き、名前を呼んでいる。
トントンとジュタがタイキの背中をあやすように叩き始めると、タイキは完全に顔を両手で覆って隠してしまった。
泣いているのだろうか?
無理もない……。
すっかりと勢いの消えた2人は座り込んだままで、俺に向けて来る視線はキツイけど襲い掛かってくるような素振りは見せない。
なんとか、大丈夫そうだね。
残った問題は、タイキの破棄を決定してしまった俺の隣にいる研究員の存在か。まぁ、こっちは俺がなんとかするから安心してよ。
「2人共CFクラスだ。さっさと行け」
マイクを通して2人に声をかけると、廃棄だと思っていたらしい2人は同時にキョトンとした表情を浮かべてしまった。それがまた可愛らしくて、こうやって見てると本当にただの人間なんだなぁって……ジュタの言っていた通り、前よりも激しく暴れられる体になっただけって気がするよ。
現実は、ロボットと戦うだけの道具に過ぎない。ロボットに勝っても、破棄されるだけの未来が用意されているだけ。
残酷過ぎる。
そんな残酷な事を平気でやってのける人間様は、どれだけ立派なんだ?
こんなガラスとトラップに守られてなきゃ何にも出来ない研究員様は、どれほど偉いんだ?
反吐が出る。
研究員である自分自身にも嫌気がする。
「あの2体は普通破棄でしょ」
研究員は、2人が出て行くのを見送った後になって文句を言う。それも俺に直接ではなくて、そこら辺の片付けを始めながら、ぼやく様にブツブツと。
この施設内にいる研究員の多くは、文句があってもその場では何も言わず、上層部に直接通報すると言う形をとる。しかも匿名で。だから、こうしてブツブツでも本音を言う研究員は珍しい。
「ねぇキミ。あの子達はちゃんと大人しくCFクラスに向かった。違う?それの何処に破棄する理由があるのさ」
少し話をしようじゃないか。
キミの意見を聞かせてくれないか?
ちょっとでも言う事を聞かなかったら破棄する方針をどう思う?
ちょっとでも気に入らなければ破棄するやり方をどう思う?
「歯向かってくる固体は危険。破棄は当然だと思います」
研究員は片付けていた手を止め、俺の目を見てそう答えてくれた。
確かに、生身である俺達は改造人間に攻撃されたらひとたまりもないから、反抗的な固体はその場で処分するという方法も、まぁ間違ってはないんだと思う。だけど、そういう方針であるが故に反抗されているという悪循環になってないか?
それに、何の説明もなく改造人間にされたら誰だって混乱するだろう。少し取り乱して両手を振り回しただけで歯向かっていると判断する考えが恐ろしいよ。
それなら保護施設や孤児院に、ここは改造人間素材育成施設である。と、説明する義務を負わせるべきだ。その上で自分から改造人間になりたいと名乗り出た子だけを改造するようにすれば良い。
違う?
子供の未来を奪い、改造し、そして戦わせているくせに、その改造人間達への態度は何だ?何故そこまで非道になれる?
はぁ……本当に、こんな施設消えてなくなってしまえば良いのに。
あ、そうだ。
「ねぇ、頼みたい事があるんだけど」
実に簡単で、単純な事を見落としていたよ。
「この流れで頼み事ですか?」
まぁね、少し険悪だった所で頼み事は不自然だったのかも知れないね。だけど、この場にいるキミにしか頼めない事なんだ。
「細かい事は気にしない。ね、俺を改造人間にしてくれない?」
簡単だろ?だってキミはタイキをたったの10時間で改造人間にして見せた腕を持っているじゃないか。その腕にかかれば、同時に2体の改造なんて屁でもない筈だよ。
「なにを言って……」
送られてくる子達は容赦なく改造するのに、どうして俺には躊躇するんだい?
「改造人間をもっと知りたいんだよ」
そしてロボットの事も。
人工頭脳を持ったロボットが今何を考えているのか、何を思って改造人間と戦っているのか。
人間を実験材料として使いたいのならこの施設が狙われていない理由は?空を飛んで月に向かわない理由は?
「馬鹿馬鹿しいです!」
そうかな?
「改造人間の研究員が、ロボットの事を知りたいと思って何が可笑しい?」
改造人間になりたい……ロボットになりたいと思う事の何がそんなに可笑しい?
真っ先に月に逃げて行った偉い人間に不信感を抱く事は間違ってる?
改造人間の材料である子達に、詳しい説明もしない施設のやり方に嫌悪感を抱く事は?
自分の意にそぐわないってだけで改造人間を簡単に破棄処分、前線に送った後は修理もしない研究員のやり方に怒りが湧き出して来る事は?
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