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5. ハロー、もう一人の俺
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「よう、調子はどうだ、相棒?」
真っ白い空間。何もすることがないからぼんやりと目の前のそいつを眺めていると、ようやくモソモソと動き始めた。
まだ意識がはっきりしているとは思えないが、とりあえず挨拶だけしておく。
こういうのは先手を取るのが大切だからな。
「ん……ここ、は……?」
ややあって、言葉を捻り出せるくらいには意識のピントが合い始めた少年が喋り出す。
「ここはお前の中だよ、相棒。お前の、そうだな。魂の表層部分、とでもいうべきかな」
「僕の、中? えっと、君、は……」
「悪魔様だ」
「あくま、さま? ……? ……‼︎ 悪魔、様っ‼︎」
冗談めかして俺が名乗ると、何度か反芻してから、少年は飛び上がって姿勢を正した。
おいおい、そんな驚く必要はないだろうに。
「あー、そんなかしこまらないでくれ。悪魔っていうのはお前が俺のことをそう言ったから、からかってみただけだ。実際は悪魔でもなんでもない。お前と同じ人間だよ。……いや、だった、かな?」
「どういうこと、ですか?」
「だから、そうかしこまらないでくれって。その歳から敬語なんてやめといたほうがいい。子供はもっと自由であるべきだ」
「は、はぁ」
キョトンとされてしまった。
まあ、十歳程度の子供にはこの感覚は理解できないだろうな。
「で、だ。えーと、何の話してたっけ?」
「あなたが悪魔様じゃない、って話でし……だったと思うけど」
「うんうん、そういう感じでいい。俺とお前は今や一蓮托生の間柄だからな」
「いちれんたくしょう?」
「あー、共存共栄……依存関係……いや、違うな。やっぱ、相棒くらいの感覚、だな、うん」
「相棒……」
少年はいまいちピンときていなそうだったが、まあいい。
徐々に分かっていくだろう。
「それで、相棒。お前はどこまで覚えてる?」
「えっと、ここは僕の心の中で、現実とはちょっと違うんだよね?」
「そう。現実のお前は多分気絶してる。だから現実の状況は俺にもわからん」
「確かデッカい魔獣に襲われて、パパとママが死んじゃいそうになって、そのとき声が聞こえて……力がどうとかって」
「その声が俺だな」
俺がそういうと、少年は目を見開いた。
にわかには信じがたい、とでも言いたそうな顔だ。
「信じられない気持ちもわかる。だけど今のこの状況がもう信じられないだろ? つまり、そういうことだ」
「えーっと……つまり君は神様?」
はぁ? なんでそうなる。
悪魔の次は神さまって……いや、そういう信仰があるのか?
もしくは世界構造が……?
「そっか、穴に落ちた時に何か壊れたような音がしたから…土地神様を起こしちゃったんだ。それで、繋がったのかな?」
「ま、とりあえずそういう事にしとこう。正直俺にも全部理解できてるわけじゃないし」
「そっか、そっかぁ……僕、神様と繋がれたんだ……‼︎」
少年の反応的に、もしかしたらこの世界ではこういう現象もよくある事なのかもしれない。
魔力がある世界だし、魔法は神様と繋がる事で発動する、的なパターンか?
「ああそうだ、名前教えてくれよ、名前。いつまでもお前とか相棒じゃ、困るし」
「僕の名前? セイロだよ。セイロ・パイリス」
「セイロか。よろしくな」
「うん、土地神様は?」
「俺の名前?」
俺の名前……日本にいた時の名前を名乗ってもいいが、多分感覚が合わない気がするんだよな。
うーん、そうだな。こういうときは……。
「フェズ、だ」
「そっか、よろしくね、フェズ!」
日本にいた時に使っていたハンドルネーム。
これなら呼ばれた時に自分のことだってすぐ分かるし、ちょうどいいだろう。
「さて、こうして向き合って会話できるうちにいくつか決めておきたいんだが……先に聞いておきたいことがある」
「うん? 僕に分かることならいいけど」
「いや、多分分かると思う。こんな風に誰かと意識が繋がる事っていうのは普通にある事なのか?」
「うーん、珍しい、とは思うかな? パパに聞いた話だと、すっごい才能がある魔導師は神様との繋がりが強くて、お告げみたいなものを聞いたりするって」
「ああ、そういうレベルなんだな……なるほど」
それなら、少し慎重になる必要がありそうだ。
「なら、セイロに頼みたいことがある。俺がこうしてお前と話せたり、魂に繋がりがあることは誰かに喋ったりしないでくれ。どうしてみ話す必要があるなと感じたら、まず俺に相談してほしい」
「いいけど、どうして?」
「お前の身の安全のため、だな」
「? 分かんないけど、フェズがそう言うなら分かったよ!」
「物分かりいいのな……」
純粋すぎてこっちが申し訳なくなってくるくらいのセイロにいくつか確認を取りながら、その後も二人だけのルールを決めていく。
これはセイロのためでもあるし、俺のためでもある。
正直まだ分からないことだらけだが……俺の中でやりたいことは決まった。
せっかく異世界に来れたんだ。
このまま成仏するよりは、たまたま手に入れた現地人の肉体という器を最大限に活かして俺は……この少年、セイロを成り上がらせてみせる‼︎
俺がなれないのなら、俺の相棒であるこいつを理想の主人公に育て上げればいいんだ‼︎
そしていずれは、日本に残してきた悪友にこう言ってやりたい。
『あいつはワシが育てた』
なんてな。
真っ白い空間。何もすることがないからぼんやりと目の前のそいつを眺めていると、ようやくモソモソと動き始めた。
まだ意識がはっきりしているとは思えないが、とりあえず挨拶だけしておく。
こういうのは先手を取るのが大切だからな。
「ん……ここ、は……?」
ややあって、言葉を捻り出せるくらいには意識のピントが合い始めた少年が喋り出す。
「ここはお前の中だよ、相棒。お前の、そうだな。魂の表層部分、とでもいうべきかな」
「僕の、中? えっと、君、は……」
「悪魔様だ」
「あくま、さま? ……? ……‼︎ 悪魔、様っ‼︎」
冗談めかして俺が名乗ると、何度か反芻してから、少年は飛び上がって姿勢を正した。
おいおい、そんな驚く必要はないだろうに。
「あー、そんなかしこまらないでくれ。悪魔っていうのはお前が俺のことをそう言ったから、からかってみただけだ。実際は悪魔でもなんでもない。お前と同じ人間だよ。……いや、だった、かな?」
「どういうこと、ですか?」
「だから、そうかしこまらないでくれって。その歳から敬語なんてやめといたほうがいい。子供はもっと自由であるべきだ」
「は、はぁ」
キョトンとされてしまった。
まあ、十歳程度の子供にはこの感覚は理解できないだろうな。
「で、だ。えーと、何の話してたっけ?」
「あなたが悪魔様じゃない、って話でし……だったと思うけど」
「うんうん、そういう感じでいい。俺とお前は今や一蓮托生の間柄だからな」
「いちれんたくしょう?」
「あー、共存共栄……依存関係……いや、違うな。やっぱ、相棒くらいの感覚、だな、うん」
「相棒……」
少年はいまいちピンときていなそうだったが、まあいい。
徐々に分かっていくだろう。
「それで、相棒。お前はどこまで覚えてる?」
「えっと、ここは僕の心の中で、現実とはちょっと違うんだよね?」
「そう。現実のお前は多分気絶してる。だから現実の状況は俺にもわからん」
「確かデッカい魔獣に襲われて、パパとママが死んじゃいそうになって、そのとき声が聞こえて……力がどうとかって」
「その声が俺だな」
俺がそういうと、少年は目を見開いた。
にわかには信じがたい、とでも言いたそうな顔だ。
「信じられない気持ちもわかる。だけど今のこの状況がもう信じられないだろ? つまり、そういうことだ」
「えーっと……つまり君は神様?」
はぁ? なんでそうなる。
悪魔の次は神さまって……いや、そういう信仰があるのか?
もしくは世界構造が……?
「そっか、穴に落ちた時に何か壊れたような音がしたから…土地神様を起こしちゃったんだ。それで、繋がったのかな?」
「ま、とりあえずそういう事にしとこう。正直俺にも全部理解できてるわけじゃないし」
「そっか、そっかぁ……僕、神様と繋がれたんだ……‼︎」
少年の反応的に、もしかしたらこの世界ではこういう現象もよくある事なのかもしれない。
魔力がある世界だし、魔法は神様と繋がる事で発動する、的なパターンか?
「ああそうだ、名前教えてくれよ、名前。いつまでもお前とか相棒じゃ、困るし」
「僕の名前? セイロだよ。セイロ・パイリス」
「セイロか。よろしくな」
「うん、土地神様は?」
「俺の名前?」
俺の名前……日本にいた時の名前を名乗ってもいいが、多分感覚が合わない気がするんだよな。
うーん、そうだな。こういうときは……。
「フェズ、だ」
「そっか、よろしくね、フェズ!」
日本にいた時に使っていたハンドルネーム。
これなら呼ばれた時に自分のことだってすぐ分かるし、ちょうどいいだろう。
「さて、こうして向き合って会話できるうちにいくつか決めておきたいんだが……先に聞いておきたいことがある」
「うん? 僕に分かることならいいけど」
「いや、多分分かると思う。こんな風に誰かと意識が繋がる事っていうのは普通にある事なのか?」
「うーん、珍しい、とは思うかな? パパに聞いた話だと、すっごい才能がある魔導師は神様との繋がりが強くて、お告げみたいなものを聞いたりするって」
「ああ、そういうレベルなんだな……なるほど」
それなら、少し慎重になる必要がありそうだ。
「なら、セイロに頼みたいことがある。俺がこうしてお前と話せたり、魂に繋がりがあることは誰かに喋ったりしないでくれ。どうしてみ話す必要があるなと感じたら、まず俺に相談してほしい」
「いいけど、どうして?」
「お前の身の安全のため、だな」
「? 分かんないけど、フェズがそう言うなら分かったよ!」
「物分かりいいのな……」
純粋すぎてこっちが申し訳なくなってくるくらいのセイロにいくつか確認を取りながら、その後も二人だけのルールを決めていく。
これはセイロのためでもあるし、俺のためでもある。
正直まだ分からないことだらけだが……俺の中でやりたいことは決まった。
せっかく異世界に来れたんだ。
このまま成仏するよりは、たまたま手に入れた現地人の肉体という器を最大限に活かして俺は……この少年、セイロを成り上がらせてみせる‼︎
俺がなれないのなら、俺の相棒であるこいつを理想の主人公に育て上げればいいんだ‼︎
そしていずれは、日本に残してきた悪友にこう言ってやりたい。
『あいつはワシが育てた』
なんてな。
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