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8. ぶらりメイクラッド探訪
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「ふわぁぁ……やっぱ都会はすごいなあ」
昼食後、早速街にくりだしたセイロは開口一番、お登りさん丸出しの感想を吐き出していた。
『セイロは来たことなかったのか?』
『あ、うん。パパが十歳になるまではダメだって。本当は今回の売り出しで一緒に来るはずだったんだけど……』
『そうか、それは残念だったな』
もう一週間もすれば親御さんたちもだいぶ動けるようになるらしいが、親子水入らずの楽しい観光とは流石にならないだろう。
『ううん、そんなことないよ! だっておかげで、フェズと会えたんだからね!』
『おっ、おぅ』
いきなり嬉しいことを言ってくれるじゃないか照れちゃったぞこんちきしょう。
『フェズは来たことあるの? メイクラッド』
『ん、俺か? 俺は……ない、な。多分。いや、絶対きたことないはずなんだが、不思議と初めて来た気がしない』
デ・ジャ・ヴュというやつだろうか。
セイロの目を通して見る風景は、日本には絶対になさそうな街並みなのに何故か、見たことがあるような気がしていた。
異世界と言われて想像する、いわゆる中世ヨーロッパ的な景観、とはちょっと違う。
石畳や、木造と石造りの混在した背の低い建物群なんかは確かに異国じみているんだが、ぱっと見の印象が野暮ったくない。
つまり、建築技術は高度に洗練されているし、清潔で、シンプルながらも見栄えする美しさがあるのだ。
それに、全体的な技術水準も相当なものと見える。
広い道を行き来する馬車らしきものは粗末な幌馬車といった雰囲気ではなく、しっかりとした作りの金属製フレームのタイヤなどが用いられている。
らしきもの……と濁したのは、なにせその車を引いているのが馬ではなく、ロボット、いや、おそらくゴーレムに類するものだったからである。
『ふぅん、やっぱり土地神様だからそういう風に感じちゃうのかな?』
『だから俺は神様じゃないって……』
『そうだっけ?』
話し方はだいぶ砕けてきたものの、なかなか俺がただの人間だっていう説明は聞いてくれそうもない。
ま、別に困るものでもないんだが、さすがに神様だなんておこがまし過ぎる。
『ま、そんなことより早く見て回ろうぜ』
『うん、あっちに広場があるみたいだから行ってみるね』
ハンターズギルドを出てから十分ほど歩いたところに、大きな噴水の広場があった。
広場はベンチに座って雑談をしている人たちや、ちょっとした運動をしている人、露店を開いている人なんかで大いに賑わっていた。
『なあセイロ、あの露店を覗いてみてくれないか? どういう物が売られているのか興味がある』
『うん、いいよ。けど、お金ないのに見たりして怒られないかなあ?』
『大丈夫さ。買う気がなくても足を止めてくれるだけで嬉しい。それが露店ってもんだ』
『へー、フェズは色々知ってるんだね』
実際、セイロがその露店の前で足を止めると低い椅子に腰掛けた無精髭の男店主はチラリと一瞥した後、特に何も言わずに頷いた。
『色々あるんだね。よく分かんないけど』
『これは金属細工か……? アクセサリーもあるし置物なんかもあるな』
『何に使うものなの?』
『基本的には見て楽しんだり身につけておしゃれを楽しむんだろうが……それにしては地味な気がするな』
「坊主、魔巧細工に興味があるのか?」
分からないなりに興味深げに見つめていると、店主が声をかけてきた。
マコウ細工? どういう字を書くんだ?
「あっ、えっと、はい? 何なのかなあって気になって」
「はっは、そうかそうか。まあ坊主くらいの歳のガキンチョが喜ぶようなもんでもないしな。気になってくれただけ嬉しいってもんだ」
「え、えーっと……」
「ああ、これが何なのかって話だな。そうだな……例えばこれなんだが」
そう言って、店主は広げてあった商品の中から一つ摘まみ上げる。
ちょうど手のひらに乗るくらいの、意匠を凝ったランタンのような小物だった。
「こいつに、こう……魔力を軽く注いでやるとな」
店主が言った直後、彼の体から魔力が流れ出るのを感じた。微量の魔力流が穏やかな速度で、小物の中心に据えられた半透明の球体に注ぎ込まれていく。
「わ、光った」
なるほど、魔力に反応して光る仕掛けなのか。
それに、細かく掘られた模様から漏れ出る光が絶妙な濃淡で模様を作るようになっている。これは女子に人気がありそうだ。
「すごいだろ? しかも今は青く光ってるが、この魔力波を調整する道具を通すと……」
「色が変わった! 今度は緑色だ!」
ほほう、こいつは面白いな。
受け取った魔力の波長に応じた色を出すようになっているんだな。
「これが魔巧細工さ。注ぎ込まれる魔力によって、いろんな光を出したり、形が変わったり。そういう遊び心を込めて作った手芸品ってことだな。興味出てきたか?」
「うん! 魔術ってまだ習ってないからよく分からなかったけど、こんなことも出来るんだね!」
魔法の機巧。だから魔巧細工。
異世界で魔法って言えば戦うためのもんだって思ってたけど、この世界は文化にまで発展させてるんだな。
なかなか面白くなってきたじゃないか。
「坊主も大きくなって好きな女の子ができたらこういうのを買ってやるといいぞ。きっと喜んでくれるからな」
「あはは、そしたらその時にはまたおじさんの所にこなくっちゃね」
「おう、未来のお客様になってくれよな」
その後もいくつか店主に魔巧細工を見せてもらって、俺はたっぷりと勉強させてもらった。
この前魔獣を倒した時はありったけの魔力を雑に放出するだけという随分なことをしてしまったのだが、魔力コントロールは思っていた以上に応用が効くらしい。
魔巧細工が起動するときの魔力の流れをじっくり観察したことで、その大まかなやり方を何となく掴むことができたのだ。
忘れないうちに、後でこっそり練習しておくことにしよう。
ちなみにこれはセイロが寝ているときに実験して分かったことなのだが、限定的な魔力操作だけなら身体のコントロール権を得なくても出来るみたいだ。
実際に現象化させる、となると物理的な視界が欲しいのでセイロに協力してもらう必要はあるが、純粋な魔力操作だけなら問題ない。
というわけで、毎晩セイロには内緒で俺は一人魔力制御の練習をし始めることにした。
そしてその練習の成果は、早くもその二日後には訪れることになったのである。
昼食後、早速街にくりだしたセイロは開口一番、お登りさん丸出しの感想を吐き出していた。
『セイロは来たことなかったのか?』
『あ、うん。パパが十歳になるまではダメだって。本当は今回の売り出しで一緒に来るはずだったんだけど……』
『そうか、それは残念だったな』
もう一週間もすれば親御さんたちもだいぶ動けるようになるらしいが、親子水入らずの楽しい観光とは流石にならないだろう。
『ううん、そんなことないよ! だっておかげで、フェズと会えたんだからね!』
『おっ、おぅ』
いきなり嬉しいことを言ってくれるじゃないか照れちゃったぞこんちきしょう。
『フェズは来たことあるの? メイクラッド』
『ん、俺か? 俺は……ない、な。多分。いや、絶対きたことないはずなんだが、不思議と初めて来た気がしない』
デ・ジャ・ヴュというやつだろうか。
セイロの目を通して見る風景は、日本には絶対になさそうな街並みなのに何故か、見たことがあるような気がしていた。
異世界と言われて想像する、いわゆる中世ヨーロッパ的な景観、とはちょっと違う。
石畳や、木造と石造りの混在した背の低い建物群なんかは確かに異国じみているんだが、ぱっと見の印象が野暮ったくない。
つまり、建築技術は高度に洗練されているし、清潔で、シンプルながらも見栄えする美しさがあるのだ。
それに、全体的な技術水準も相当なものと見える。
広い道を行き来する馬車らしきものは粗末な幌馬車といった雰囲気ではなく、しっかりとした作りの金属製フレームのタイヤなどが用いられている。
らしきもの……と濁したのは、なにせその車を引いているのが馬ではなく、ロボット、いや、おそらくゴーレムに類するものだったからである。
『ふぅん、やっぱり土地神様だからそういう風に感じちゃうのかな?』
『だから俺は神様じゃないって……』
『そうだっけ?』
話し方はだいぶ砕けてきたものの、なかなか俺がただの人間だっていう説明は聞いてくれそうもない。
ま、別に困るものでもないんだが、さすがに神様だなんておこがまし過ぎる。
『ま、そんなことより早く見て回ろうぜ』
『うん、あっちに広場があるみたいだから行ってみるね』
ハンターズギルドを出てから十分ほど歩いたところに、大きな噴水の広場があった。
広場はベンチに座って雑談をしている人たちや、ちょっとした運動をしている人、露店を開いている人なんかで大いに賑わっていた。
『なあセイロ、あの露店を覗いてみてくれないか? どういう物が売られているのか興味がある』
『うん、いいよ。けど、お金ないのに見たりして怒られないかなあ?』
『大丈夫さ。買う気がなくても足を止めてくれるだけで嬉しい。それが露店ってもんだ』
『へー、フェズは色々知ってるんだね』
実際、セイロがその露店の前で足を止めると低い椅子に腰掛けた無精髭の男店主はチラリと一瞥した後、特に何も言わずに頷いた。
『色々あるんだね。よく分かんないけど』
『これは金属細工か……? アクセサリーもあるし置物なんかもあるな』
『何に使うものなの?』
『基本的には見て楽しんだり身につけておしゃれを楽しむんだろうが……それにしては地味な気がするな』
「坊主、魔巧細工に興味があるのか?」
分からないなりに興味深げに見つめていると、店主が声をかけてきた。
マコウ細工? どういう字を書くんだ?
「あっ、えっと、はい? 何なのかなあって気になって」
「はっは、そうかそうか。まあ坊主くらいの歳のガキンチョが喜ぶようなもんでもないしな。気になってくれただけ嬉しいってもんだ」
「え、えーっと……」
「ああ、これが何なのかって話だな。そうだな……例えばこれなんだが」
そう言って、店主は広げてあった商品の中から一つ摘まみ上げる。
ちょうど手のひらに乗るくらいの、意匠を凝ったランタンのような小物だった。
「こいつに、こう……魔力を軽く注いでやるとな」
店主が言った直後、彼の体から魔力が流れ出るのを感じた。微量の魔力流が穏やかな速度で、小物の中心に据えられた半透明の球体に注ぎ込まれていく。
「わ、光った」
なるほど、魔力に反応して光る仕掛けなのか。
それに、細かく掘られた模様から漏れ出る光が絶妙な濃淡で模様を作るようになっている。これは女子に人気がありそうだ。
「すごいだろ? しかも今は青く光ってるが、この魔力波を調整する道具を通すと……」
「色が変わった! 今度は緑色だ!」
ほほう、こいつは面白いな。
受け取った魔力の波長に応じた色を出すようになっているんだな。
「これが魔巧細工さ。注ぎ込まれる魔力によって、いろんな光を出したり、形が変わったり。そういう遊び心を込めて作った手芸品ってことだな。興味出てきたか?」
「うん! 魔術ってまだ習ってないからよく分からなかったけど、こんなことも出来るんだね!」
魔法の機巧。だから魔巧細工。
異世界で魔法って言えば戦うためのもんだって思ってたけど、この世界は文化にまで発展させてるんだな。
なかなか面白くなってきたじゃないか。
「坊主も大きくなって好きな女の子ができたらこういうのを買ってやるといいぞ。きっと喜んでくれるからな」
「あはは、そしたらその時にはまたおじさんの所にこなくっちゃね」
「おう、未来のお客様になってくれよな」
その後もいくつか店主に魔巧細工を見せてもらって、俺はたっぷりと勉強させてもらった。
この前魔獣を倒した時はありったけの魔力を雑に放出するだけという随分なことをしてしまったのだが、魔力コントロールは思っていた以上に応用が効くらしい。
魔巧細工が起動するときの魔力の流れをじっくり観察したことで、その大まかなやり方を何となく掴むことができたのだ。
忘れないうちに、後でこっそり練習しておくことにしよう。
ちなみにこれはセイロが寝ているときに実験して分かったことなのだが、限定的な魔力操作だけなら身体のコントロール権を得なくても出来るみたいだ。
実際に現象化させる、となると物理的な視界が欲しいのでセイロに協力してもらう必要はあるが、純粋な魔力操作だけなら問題ない。
というわけで、毎晩セイロには内緒で俺は一人魔力制御の練習をし始めることにした。
そしてその練習の成果は、早くもその二日後には訪れることになったのである。
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