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10. お約束
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「意味わかんないこと言ってんじゃねぇ‼︎」
「すまん、自分でも意味わかんない名乗りだった」
「馬鹿にしてんのかっ。いいからこっちは忙しいんだ、邪魔しねえでとっとと失せやがれ!」
「あー、うん。分かってて声かけてるから、邪魔しにきただけだから」
「あぁん⁉︎ 最近のガキは痛い目見たい奴ばっかりみてぇだな?」
よし、これでとりあえず少女は大丈夫だろ。
頭の悪い奴らだからすぐ挑発に乗ってくれた。
「ちょっとあんた! 誰だか知らないけど危ないわよ!」
なんてことを思っていると、逆に少女がチンピラ達から俺を守るように、ヘイトを取り返すような大声をあげた。
うーん、優しい子なんだってことはわかるけど、そういうのはいらないんだよな。
「危ないと思ってるならこんな風に声かけたりしないって」
「なんっ⁉︎」
仕方ないので、敢えてさらに挑発する態度をとってみる。
案の定、チンピラはすぐに乗っかってくれた。馬鹿で助かる。
「テメェ、俺たちがハンターだって分かってねぇみたいだな? ガキが調子乗ってんじゃねぇぞ」
え、ただのゴロツキかと思ってたのに、これがあのローシュと同じハンター? 嘘でしょ?
っていうかあの女の子もこいつがハンターだって知ってなんか驚いたような顔してるぞ。
やっぱり現地人的にもらしくない格好なんだな。
うん、まあ、そんなことはどうでもいいか。どっちにしろ気絶してもらうだけだし。
練習の成果をいっちょ見せてやるとしよう。
「はぁ。ま、よく分かんないけどさ? その子に手を出そうっていうんならこっちも手加減はしないぞ」
「てめっ」
わざとらしく凄んでやると、ついにブチ切れた男が右腕を大きく振りかぶりながら飛びかかろうとしてくる。
……ふむ。さすがにあれをマトモに喰らえばひとたまりもないだろうな。
少なくとも流血は避けられない。
もし俺に武術の心得でもあったなら、ゆっくり見極めて回避なりカウンターなり出来ただろうが、あいにくそっち方面の才能はない。
セイロ自身も鍛えられているわけでもなさそうだし、普通はやられておしまいだろう。
――普通ならな。
間合いは男の歩幅で約三歩。
その短い距離を詰めようとして振りかぶった男のが一歩目を踏み込もうとした――その時だ。
「ぐわっ」
情けない声をあげながら、そいつはまるで低い段差に足を踏み外したかのようにぐらりと体勢を崩し、そのままばたりと倒れてしまった。
突然の出来事に、その場の誰もが目を見開いているようだった。
「なっ、何をした⁉︎」
「さぁ? 勝手に転んだんじゃないか?」
「んなわけあるかぁっっ!」
もう一人の男は激昂し、構えながらもしかし、襲いかかってくるのを一歩踏みとどまっていた。
なるほど、ハンターだというのはあながち嘘ではないのかもしれない。
動いたら何かをされる、という直感が、彼を踏みとどまらせたのだ。
だが、
「まあ、それは関係ないんだけどな」
すっと分かりやすく男に右手を向けてやる。
この動作にそれほどの意味はない。だが、こうした方がやりやすい気がしたという、それだけの理由である。
やることは単純。体内で調整しておいた魔力を放出して、相手の魂にぶつけ、揺さぶる。
大きな出力は必要ない。大事なのは、波長を合わせること、こちらが何をしようとしているのか気取られないということ。その二つである。
案の定、男は何が起きているのか理解していなかった。
だからこうして一瞬のうちに、
「うっ」
みっともない呻き声を残して、その場に崩れ落ちることになったというわけだ。
「ふぅ、こんなもんか。割と上手くいったな」
正直、ここまであっさり倒せるとは思っていなかった。
内心失敗したらどうしよう、なんて不安も感じてたからな。ビビってるのがバレなくてよかったぜ。
「ちょっと、あんた!」
「ん?」
おっと、お嬢様のことを忘れていた。
「一体何をしたのよ? 急にこいつら倒れ出して……ひょっとして魔術師なの? 見たところあたしとそこまで歳は違うように見えないんだけど。あなた歳はいくつ?」
「あー、質問は一度に一つにしてくれないか」
どこの世界に行ってもうるさい女ってのはいるもんだな。
「あら、それは悪かったわね。で、あなたは結局どこの誰で何者なの? その、さっきの通りすがりの……ってのは何なわけ?」
「だから質問は一度に一つにしろと……俺の名前は、あー」
おっと、これは名乗っていいものなのか?
本人に聞いてみよう。
『これ、名前教えても平気か?』
『うん? 別にいいけど……』
「セイロだ。他の質問はとりあえず無しで」
「セイロね。一応、結果的に助けられたということだから感謝はしておいてあげるわ。でも、別に助けなんていらなかったんだからね。勘違いはしないで欲しいわ」
「お、おぉ」
ツンデレだ‼︎ 本物のツンデレ少女がいる‼︎
しかも何? よくよく見てみれば金髪だし、ドリルツインテールではないけどちょっとウェーブがかっててお嬢様っぽいし!
フレアスカートのワンピースはシンプルながらもどこか上品な感じだし!
これはもしかして、セイロ主人公計画のヒロイン候補といっても良いのではないだろうか?
「って、いけない! あたし急いでるんだったわ! それじゃあね!」
「あ、うん。気をつけてな」
ヒロイン候補の少女はそれだけ言い残して、あっというまに走り去っていってしまった。
嵐のような女の子だなあ、と俺はますます好感を持ってしまった。
『さて、そろそろお前に返すな。チェンジ』
合言葉を唱えると、きちんと元に戻れた。
一瞬の浮遊感の後、いつも通りの視点に還っていく。
もちろん、セイロ本人の方も大丈夫そうだ。
『ありがとうね、フェズ。おかげであの子のことを助けられたよ!』
『何、最初に力を貸すって約束したからな。どうってことはない。ま、あの子のほうは余計なお世話だと思ってたみたいだがな』
『へへ、それでもお礼は言わなくっちゃだよ』
『さ、ひと段落したし散歩の続きをしようぜ』
『うん……ってあれ?』
そのまま路地から出て行こうとして、セイロが何かに気づいたようだ。
視線の先には、光るものがある。
『これって……さっきの子の落し物?』
拾い上げると、それは少しくたびれたロケットペンダントだった。年季こそ入っているものの、装飾の入り具合からいってなかなかの代物らしい。
中には何が入っているのだろうか?
『かもな。開けてみれば分かることもあるかもだが』
『それは止めようよ。大事なものみたいだったし、勝手に開けるのは良くない』
『それもそうだな。そして大事なものなら、こんなところに放置しておくわけにもいかない』
『だね。なんとか届けられればいいけど……』
『名前、聞きそびれたなあ』
結局、それは持ち帰ってハンターズギルドに相談してみることにした。
服装から考えるに良家の娘である可能性が高かったし、それなら街に詳しい人に聞くべきだと考えたからだ。
「すまん、自分でも意味わかんない名乗りだった」
「馬鹿にしてんのかっ。いいからこっちは忙しいんだ、邪魔しねえでとっとと失せやがれ!」
「あー、うん。分かってて声かけてるから、邪魔しにきただけだから」
「あぁん⁉︎ 最近のガキは痛い目見たい奴ばっかりみてぇだな?」
よし、これでとりあえず少女は大丈夫だろ。
頭の悪い奴らだからすぐ挑発に乗ってくれた。
「ちょっとあんた! 誰だか知らないけど危ないわよ!」
なんてことを思っていると、逆に少女がチンピラ達から俺を守るように、ヘイトを取り返すような大声をあげた。
うーん、優しい子なんだってことはわかるけど、そういうのはいらないんだよな。
「危ないと思ってるならこんな風に声かけたりしないって」
「なんっ⁉︎」
仕方ないので、敢えてさらに挑発する態度をとってみる。
案の定、チンピラはすぐに乗っかってくれた。馬鹿で助かる。
「テメェ、俺たちがハンターだって分かってねぇみたいだな? ガキが調子乗ってんじゃねぇぞ」
え、ただのゴロツキかと思ってたのに、これがあのローシュと同じハンター? 嘘でしょ?
っていうかあの女の子もこいつがハンターだって知ってなんか驚いたような顔してるぞ。
やっぱり現地人的にもらしくない格好なんだな。
うん、まあ、そんなことはどうでもいいか。どっちにしろ気絶してもらうだけだし。
練習の成果をいっちょ見せてやるとしよう。
「はぁ。ま、よく分かんないけどさ? その子に手を出そうっていうんならこっちも手加減はしないぞ」
「てめっ」
わざとらしく凄んでやると、ついにブチ切れた男が右腕を大きく振りかぶりながら飛びかかろうとしてくる。
……ふむ。さすがにあれをマトモに喰らえばひとたまりもないだろうな。
少なくとも流血は避けられない。
もし俺に武術の心得でもあったなら、ゆっくり見極めて回避なりカウンターなり出来ただろうが、あいにくそっち方面の才能はない。
セイロ自身も鍛えられているわけでもなさそうだし、普通はやられておしまいだろう。
――普通ならな。
間合いは男の歩幅で約三歩。
その短い距離を詰めようとして振りかぶった男のが一歩目を踏み込もうとした――その時だ。
「ぐわっ」
情けない声をあげながら、そいつはまるで低い段差に足を踏み外したかのようにぐらりと体勢を崩し、そのままばたりと倒れてしまった。
突然の出来事に、その場の誰もが目を見開いているようだった。
「なっ、何をした⁉︎」
「さぁ? 勝手に転んだんじゃないか?」
「んなわけあるかぁっっ!」
もう一人の男は激昂し、構えながらもしかし、襲いかかってくるのを一歩踏みとどまっていた。
なるほど、ハンターだというのはあながち嘘ではないのかもしれない。
動いたら何かをされる、という直感が、彼を踏みとどまらせたのだ。
だが、
「まあ、それは関係ないんだけどな」
すっと分かりやすく男に右手を向けてやる。
この動作にそれほどの意味はない。だが、こうした方がやりやすい気がしたという、それだけの理由である。
やることは単純。体内で調整しておいた魔力を放出して、相手の魂にぶつけ、揺さぶる。
大きな出力は必要ない。大事なのは、波長を合わせること、こちらが何をしようとしているのか気取られないということ。その二つである。
案の定、男は何が起きているのか理解していなかった。
だからこうして一瞬のうちに、
「うっ」
みっともない呻き声を残して、その場に崩れ落ちることになったというわけだ。
「ふぅ、こんなもんか。割と上手くいったな」
正直、ここまであっさり倒せるとは思っていなかった。
内心失敗したらどうしよう、なんて不安も感じてたからな。ビビってるのがバレなくてよかったぜ。
「ちょっと、あんた!」
「ん?」
おっと、お嬢様のことを忘れていた。
「一体何をしたのよ? 急にこいつら倒れ出して……ひょっとして魔術師なの? 見たところあたしとそこまで歳は違うように見えないんだけど。あなた歳はいくつ?」
「あー、質問は一度に一つにしてくれないか」
どこの世界に行ってもうるさい女ってのはいるもんだな。
「あら、それは悪かったわね。で、あなたは結局どこの誰で何者なの? その、さっきの通りすがりの……ってのは何なわけ?」
「だから質問は一度に一つにしろと……俺の名前は、あー」
おっと、これは名乗っていいものなのか?
本人に聞いてみよう。
『これ、名前教えても平気か?』
『うん? 別にいいけど……』
「セイロだ。他の質問はとりあえず無しで」
「セイロね。一応、結果的に助けられたということだから感謝はしておいてあげるわ。でも、別に助けなんていらなかったんだからね。勘違いはしないで欲しいわ」
「お、おぉ」
ツンデレだ‼︎ 本物のツンデレ少女がいる‼︎
しかも何? よくよく見てみれば金髪だし、ドリルツインテールではないけどちょっとウェーブがかっててお嬢様っぽいし!
フレアスカートのワンピースはシンプルながらもどこか上品な感じだし!
これはもしかして、セイロ主人公計画のヒロイン候補といっても良いのではないだろうか?
「って、いけない! あたし急いでるんだったわ! それじゃあね!」
「あ、うん。気をつけてな」
ヒロイン候補の少女はそれだけ言い残して、あっというまに走り去っていってしまった。
嵐のような女の子だなあ、と俺はますます好感を持ってしまった。
『さて、そろそろお前に返すな。チェンジ』
合言葉を唱えると、きちんと元に戻れた。
一瞬の浮遊感の後、いつも通りの視点に還っていく。
もちろん、セイロ本人の方も大丈夫そうだ。
『ありがとうね、フェズ。おかげであの子のことを助けられたよ!』
『何、最初に力を貸すって約束したからな。どうってことはない。ま、あの子のほうは余計なお世話だと思ってたみたいだがな』
『へへ、それでもお礼は言わなくっちゃだよ』
『さ、ひと段落したし散歩の続きをしようぜ』
『うん……ってあれ?』
そのまま路地から出て行こうとして、セイロが何かに気づいたようだ。
視線の先には、光るものがある。
『これって……さっきの子の落し物?』
拾い上げると、それは少しくたびれたロケットペンダントだった。年季こそ入っているものの、装飾の入り具合からいってなかなかの代物らしい。
中には何が入っているのだろうか?
『かもな。開けてみれば分かることもあるかもだが』
『それは止めようよ。大事なものみたいだったし、勝手に開けるのは良くない』
『それもそうだな。そして大事なものなら、こんなところに放置しておくわけにもいかない』
『だね。なんとか届けられればいいけど……』
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