異世界デビューに失敗したので現地の少年を最強系主人公に育てたいと思います。

にしだ、やと。

文字の大きさ
11 / 14

11. 名前も知らないヒロインを探して

しおりを挟む
「あら、おかえりなさい。今日は早かったのね」
「はい、マリィさん。ただいま戻りました」

 ハンターズギルドに戻ると、受付のお姉さんことマリィはちょうど暇そうにしていた。
 大体いつも忙しそうにしているのは朝と夕方だから、この時間帯はオフピークタイムなんだろう。

「あの、街を歩いてたらこんなものを拾ったんですけど」
「何かしら……あら、綺麗なペンダントね。どこで拾ったの?」
「えっと……」

 セイロにはあらかじめ、小競り合いがあったことは伏せておくように言っておいた。
 危険なことに首を突っ込んだなどと知られたら出歩くのを禁止されそうだったからだ。
 それに、セイロが解決したなんて知られれば余計面倒なことになりそうだしな。

「路地裏、ね……一応聞くけど、セイロ君。危ないことなんてしてないでしょうね?」
「もちろんしてないですよ!」
「そう? ならいいけど。お母さんたちがきちんと治るまでセイロ君のことを任せてるのは私たちなんだから、あんまり私たちを心配させないでね」
「うん、わかってます」

 マリィは相変わらず優しい。
 取り立てて美人というわけでもないが、俺はむしろこれくらいの、クラスで八番目くらいの可愛さの子がタイプだな。気立てもいいし、絶対味噌汁が美味しいタイプの奥さんになってくれると思う。んで、休日には俺がだらだらゲームしてるのを横でニコニコしながら見てくれるの。最高。
 おっと、俺の好みの話はどうでもいいな。

「でも、そうねぇ。落し物はうちの管轄っていうわけでもないし。もちろん捜索の依頼なんかも請け負ってはいるけど、あくまで依頼が来たら誰かがやる、って感じだし……」
「えーっと、結局どうすれば……」
「あっ、ごめんごめん、セイロ君にはちょっと難しかったよね。街の中での問題ならお役所か警吏の担当になると思うんだけど……ただの落し物ってなるときっと相手にされないのよね。そうなると、やっぱり依頼が届くのを待つしかないかしら」

 へぇ、随分整った街並みだと思っていたが、役所や警察組織まであるのか。
 こりゃいわゆる中世ヨーロッパ的な異世界だと思わない方が良さそうだ。

「つまり、待っているしかないってことですか? なんだかとっても大事そうなものだと思ったので、早く届けてあげたいんですけど……」

 セイロが残念そうに言うと、マリィはふふっとわずかに微笑んだ。

「セイロ君、優しいのね。わかったわ、お姉さんに任せなさい。誰か心当たりがないか、聞いてみるから」
「本当ですかっ?」
「ええ、もちろんよ。これだけ綺麗なペンダントなんだもの。きっと一人くらい、見たことがある人がいるはずだわ」

 そして。
 日が暮れ始める時間にもなれば、閑散としていたハンターズギルドにも再び活気が戻ってくる。
 ギルド入り口から右手側、ちょうど依頼受付カウンターとは反対側にギルド員なら割安で利用できる喫茶スペースがあり、ハンターたちが今日の仕事の成果を互いにねぎらうため集まってきたのだ。

 もちろんこんなチャンスを逃すはずがなく、セイロはマリィに連れられて早速たくさんの大人たちに揉まれにいったのだが、

「ん? ああ、このペンダントの持ち主なら知ってるぞ」

 とりあえず見知った顔から聞いてみようとローシュにあたったところで、なんと任務が達成になってしまったのである。
 全く、とんだ肩透かしをくらったみたいだ。
 せっかくのイベントなんだからもう少しくらい苦労したっていいと思うんだが……ま、それは言っても仕方ないか。

「というか、マリィさんの方こそ知ってなきゃおかしいだろう?」
「へ? そうなんですか?」

 マリィがとぼけると、ローシュは呆れたように肩をすくめた。

「そのペンダントの持ち主はハンターズギルドの現会長のお孫さんだよ。見たことないのか?」
「そんな、無いですって。そりゃ会長のお顔でしたら知っていますよ? けど流石にお孫さんのことまでは……」

 へえ、会長の孫ねぇ。ハンターズギルドがこの地でどれくらいの権力を持っているのかまでは分からないが、お嬢様っていう表現でも間違いはないだろうな。
 せっかくだしこの縁をなんとかモノにしたいが、さて……。

「ま、そう言われてみればそれもそうだな。で、だ。そのお孫さんの名前なんだが……ん? なんだか騒がしいな」

 ローシュが名前を言おうとしたところで、にわかに反対側――つまり依頼受付カウンターあたりが騒がしくなり始めた。
 一体何があったのだろうか。

「行ってみましょう。喧嘩だったら仲裁する必要もありますし」
「それもそうだな。セイロはここで待ってるか?」

 聞かれて、セイロは一瞬躊躇する。
 きっとビビってるんだろう。無理もない。
 だが、こういう時に動かないのは主人公的にはマイナスポイントだ。

『ついていけよ。ローシュの近くにいれば何も怖いことはないさ』
『う、うん。わかった』

「一緒に行きます」
「そうか。ま、これも社会勉強だな。なに、危ないことは無いさ。少なくとも、お前さんがぶっ倒した魔獣なんかよりはな」

 冗談めかしてウインクするローシュの気負わない姿勢に、セイロも少しはリラックスできたらしい。
 おかげで近くなってきた喧騒の中心から、はっきりと声を聞き取ることができた。

「だからお金ならいくらでも出すって言ってるでしょう! いいから全員あたしに雇われなさいっ‼︎」

 最近聞いた覚えのある、威勢のいい少女の大声。
 なるほど。こりゃつまり、あれだ。
 俺が見込んだ主人公のセイロは、間違いなく主人公らしく、ヒロインとの再会イベントを引き当てたらしい。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
【毎週火木土更新】 自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。 その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ! 約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。 ――― 当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。 なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...