異世界召喚に巻き込まれたおばあちゃん

夏本ゆのす(香柚)

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2章 森に引きこもってもいいかしら?

9.お勉強

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 夕食の後、私は部屋のベッドでのんびり今日有ったことを思い返していた。
 ちょっと動くだけで色んなことが有るのよね。


 そういえば、あの人ローゼンも採集の練習をすればどれだけ大変か分かるんじゃないかしら。
 私もこちらにきて、ギルドに登録してから勉強したんだもの。
 イリスも採集の依頼は今まで受けたことが無いのが分かって、二人で勉強したのよ。
 彼女ってギルドに登録した初めの頃はシェヌがそばについて教えていたらしいの。一応、学校で護身術みたいなものは教わっているから多少は自分の身も守れたそうなのよ。それと癒しのスキルがあるから、そちらの依頼を受けていたんですって。冒険者の初めにする採集とかはせずにランクアップしていったって聞いたわ。
 シェヌったらきっと過保護に面倒をみたんでしょうね。もしかするとイリスは文字も読めたし、計算も出来たから本を渡してれば大丈夫とでも思ったのかしら。



 エルムについてもらって、あの画集みたいな採集用の植物の本を見ながら練習したのよね。
 あの家の出来るまでの一ヶ月の間に。まだ秋だったこともあって森そばの原っぱは恵みのものがたくさんあったわ。ここって雑草の中に薬草エルブや自生の野菜も有るの。

 エルムは鑑定のスキルを持っているから、私やイリスが間違えてないか傍で見ていてくれてたの。
 イリスと二人で、これは葉っぱがギザギザじゃないから違うとか、葉の裏が白いからとか言って……
 大変だったけれども楽しかったわね。

 

 私は多分しないと思うけれども、本当に旅に出るような事になった時の為にいろいろ教えて貰ったわ。
 ティユルに来るまで何度も作った簡易的な竃を組む方法とか、休む場所の選定方法とか。
 ちょっとキャンプみたいって思ったことは内緒ね。


 広い野原で魔法の練習もしたのよ。攻撃ってなかなか難しいのよ。
 味方に当てないように火の球を投げたり、風を使って相手を吹き飛ばしたり。
 そりゃ以前、盗賊を吹き飛ばしたけれども自分の意志では無かったもの。
 風を人に向けるのは何とか出来るようになったのよ。まだ火の玉は投げられないけど。
 あ、水は自由に自分で出せるようになったの。火の玉が変な所に飛んで行って、消火するためだけでは無いのよ。


 一番簡単なのは、防御で身の周りに結界を敷く事だけれども、少し不具合が有るのよね。
 確実に身は守れるのだけれども、その時味方の人も私に触れられないっていう……
 イリスでさえ、私に触れることが駄目だったのよ。
 だから少しは自分で身を守れるようにならないと、って思ったから防御だけでなく相手のちょっとした隙を作れるように頑張ることにしたわ。
 それが風で吹き飛ばすことだったのだけれども。最初は周りをぐるぐる風が吹いているだけだったの。でも指向性を持たせることをずっと念じて頑張っていたら、一つの方向に向ける事も出来るようになったのよ。

 何かしら得意な事があるっていいわ。自信ができるからもう少し頑張ろうって気になるものね。

 まあ、そんな事をしながら練習や勉強をしていたら、お腹が鳴ってしまったわ。
 くーきゅるる……

 エルムもイリスも苦笑いしてこっちをみたのよ。だって、だってお腹が空いてきたのだもの。仕方が無いじゃない?ねえ?

 ちょうど目の前には、作ったばかりの竃はあるし。ポケットの中には多少の調味料も入っているからエルムとイリスに食べられるものを採ってきてもらう事にしたの。



 お茶を飲むために小さな鍋と木のカップは持ってきているから、私は干し肉と水を鍋に入れ、竃にかけた。



 しばらくするとエルムは小さな赤い実と長細い葉物を採ってきた。あと黄色い石のようなもの。
 イリスは小さな蜜柑のような実と、先ほど採った大葉を持って来た。

 それぞれが私の前にとってきたものを置いたわ。

「エルム? これは何かしら?」

 採集用の画集で見比べてみましょう。
 葉物は、これに似ているわね。でも大きさが違い過ぎる。画集には長さが20メルテと書いてある。先日、知ったばかりの長さの単位。1メルテは私の指の太さくらい。そうだいたい1センチメートル。
 エルムがとってきたのは50メルテもある大きなもの。見た目はあちらの世界のほうれん草。すっごく大きいけれども。
 赤い実は、1メルテも無いくらいの小さな球形。上にヘタのようなものがあって、これが植物だという事がよくわかる。
 画集で見ても見つからないわ。

 あとこの黄色い石みたいなものは? 今日持ってきている本は植物の項のものだけ。
 私には分からないの。

「この葉はエピというものです。いつも見ているものより多少大きいですが、鑑定してもエピと出ますので間違いないでしょう。赤い実はカイエンです。本当はこれくらいの野菜の筈なんですが、野生化しているからでしょうか……豆粒ですね、これでは。ああ、この黄色いものは蜜ですよ。鬼角蜂の空の巣が見つかりましたので、少しだけ欠き取ってきました」

 エピ? やはりこの葉っぱはエピなのね。野生化すると大きくなるのかしら?
 実はカイエン? え? 画集ではパプリカみたいなのに? 大きさも人のこぶしくらいあるって書いてあるわよ?
 蜜? え? この石みたいなものって蜂蜜なの? 鬼角蜂? 聞いた事も無い蜂ね……今度虫の画集も借りてきましょう……

「イリス? これは?」

「小さいけれどオーランです。村のそばでも生えていましたから」

 画集ではオーランは蜜柑のようだ。酸っぱいものと、甘くてねっとりしたものが有るらしい。これはどっちかしら?

  とりあえず、どんな味なのかしら?  この葉を少し囓ってみましょう。もぐもぐ……薄くほうれん草のような風味がする。えぐ味もなく食べられる……ただの葉野菜だわ。風味が薄いせい?
  こちらの赤い実はどんな味かしら……かしゅっ……ひぃーっ、ぺっぺっ!!  辛い……火を吹いたような辛さ!  唐辛子?  こちらではこんなに辛いのを普通に食べているの?

「エ、エルムっ!  これ、普通に食べているの?」

「ええ。食べますよ。いつもよりかなり小さいですが。」

  一つ摘まんで、ぽいっと口に放り込む。ぱくっ!!  ぺっぺっ!!

  ほら、そうなるでしょ?

「か、辛っ!」

  うんうん。私も口の中がじんじんしているもの。

「普段はこんな辛さは有りませんっ」

  ん?  

「辛くないの?」

「辛味は無いはずなんですが……」

  大きさが関係有るのかしら?
  まあ、良いアクセントにはなるわっ。うん。

  エピはざく切り、カイエンは一つだけみじん切りにしましょう。

  柔らかくなった干し肉を取り出し、細かく引き裂きます。肉を鍋に戻し塩を足し入れて、まず味見。少し、濃いかな?  ま、エピを入れてみましょう。ざく切りたっぷり。そして、味見。うん、少し、薄いかな?  カイエンのみじん切りを半分だけ入れて、味見。えっ?  辛味が入ってちょうど良いかもっ!  久々にとても美味しいスープです。コレに韮とネギがはいってたら……美味しいでしょうねぇ。今度少し持ち帰って家でも作ってみましょう。

  味見を何度も繰り返す私を見ているイリスとエルム……たっぷりあるからっ!  そんな目で見ないのっ!

 ポケットからもう一つ小鍋を出し、水を入れ沸かします。ここにイリスが持って来た大葉をいれお茶にしましょう。あら。カップまでは予備が無いわね……。スープを飲んだ後、洗ってからお茶かしら。


「できたわよー。さあ、食べましょう」

 「いただきます」

 それぞれがカップに注いで座り、食べ始めました。
 私も手をあわせてから食べ始めました。

 ふぅふぅ、ぱくっ。肉は柔らかく。しゃくしゃく。エピは小気味良い歯触り。
 あぁ、美味しい。温かいわぁ。
 
 味わいながら食べていた私は気づきませんでした。小さな鍋の中身がどれだけ早く無くなっていったかを。


 さあ、私も、おかわ……り……





 オーランを剥いて、食べればいいわね。
 ぱくっ。す、すっぱっ! イリスを見ると美味しそうに食べています……




  お茶でも飲んで、まったりしましょう。
蜂蜜入りのお茶は甘くて美味しかったわ。



☆☆☆  エルムの採集  ☆☆☆

「エルム、食べられる野草を少し採ってきてくださいな」

  そうコーユ様に言われて、藪に入った。が、何を食べたいのだろう。
  コーユ様は食べることに妥協をしないようだ。
  藪の深いところで見つけられなかった俺は、離れた草原の方まできてみた。

  所々で赤い実が見えたからだ。かなり小さいが鑑定してみると『カイエン』だった。うん、これは食べたことがある。小指ほどの大きさだったが、数はかなりある。あまり、好きではないが、無いよりマシだろう。
  しばらくして、良く見ると足元の細長い葉が『エピ』だと分かる。葉物野菜はあまり得意ではないが、鑑定したから大丈夫だ。
  コーユ様は毒さえなければ気にしないだろう。
前も毒の有る無ししか気にも留めてらっしゃらなかったからな。
お?これは空の巣か?珍しいものが有ったな。そういえば甘いものもお好きだよな。硬いが剣の柄で端を落とせば……。
  量も両手で持つぐらい採ったから大丈夫だろう。
  そう、思っていた。
まさか、あの赤い小さな実があんなに辛い物とは知らなかったから。
  まあ、いい。昼食はスープかと思っていたが、具が沢山有るもので、腹一杯たべたな……
  上手くて、腹一杯で……  気がついたら鍋は空だった。
  鍋の前に立つコーユ様は……   項垂れていた……


  瞬間的に身構えたが……  威圧がこちらに向く事が無かったのは……


  すみませんでした。

  




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