異世界召喚に巻き込まれたおばあちゃん

夏本ゆのす(香柚)

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2章 森に引きこもってもいいかしら?

1.プロローグ

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 二章書き換えました。
 
 どこまでも、マイペースなおばあちゃんをお楽しみ下さい。
 すみません。更新もマイペースです。

────────────────

 空は青く、雲は白く…… 生まれ育ったところとなんら変わりない生活を始めています。
 目の前の畑には青々と茂った薬草やお野菜やハーブがいきいきと輝いています。
 生垣の杉や果樹は幾重にも層をなしています。ええ、私の思い通りに。
 外に近いほど高い針葉樹の連なりが、内に近いほど、林檎や蜜柑、檸檬に桃と色々な果樹が植わっています。
 その生垣も徐々に外へ広がり、今ではこの家は森の一部と思われているようです。
 本当はその中にこの家と畑が有るのですけれどもね。
 イリスと共に暮らす今の生活には笑い声が満ちています。一緒にお料理をしたり、魔法を使ったり。たまにお互いの認識の違いに驚いたり、くすっ。
 彼女との暮らしはお互いの環境の違いがはっきり分かってとても勉強になります。
 この世界の常識がいまいちわからない私に、一つ一つ丁寧に教えてくれているの。それは本当に助かるのよね。あと魔法の細やかな使い方もね。
 私は思いっきり魔力を使うのは出来るのだけれども、身体のクリーンや魔石に力を籠めたりする事などとっても微妙な力加減の者は苦手なのよ。
 普通の人と違って使い方を神様に習ってしまったからかもしれないわ。
 イリスは王都の魔法関係の学校に行っていたから、小さな魔力を扱う事から習ったみたいなの。それって、今の私に必要な事でしょ?そういってイリスにはこの家に一緒に住んでもらっているってわけよ。
 もちろん私が教えてあげられることもあるのよ。例えばお料理、例えば裁縫。
 イリスにしてみれば、今までしなくっても困らなかった事だけれど、やってみれば出来る事が増えるのはいいことだと思ってくれてきているみたいよ。
 先日のパンケーキはとても美味しかったもの。それを告げたときの彼女の顔はとても嬉しそうで、私もとても嬉しかったわ。
 家の中ではワンピースとカーディガンのイリス。私と一緒に作ったのよ。
 私はゆったりしたズボンとセーターにエプロンの事が多いわね。
 外に出るって言ってもほとんど庭と畑なので、オシャレは必要ないのよね。
 私もたまにはギルドに行って、薬草や魔草、霊草や命茸を納めてくるのだけれど、これをやってないとギルド員としての資格が無くなることが有るからなの。
 これは採取依頼の一つなのよ。この深遠の森にはたくさんの種類の薬草などが元々生えているそうなのだけれども、森には魔獣が多く住んでいるから依頼を受ける人も少ないそうなの。たまにどうしても必要な時にランクの高い人がやってくれるような依頼なの。でもうちには畑や裏庭に生えているのだけれどもね。

 イーヴァは月に数回この家に帰ってくるの。彼の成長の妨げにならに程度にこちらに帰ってくるのを認めているのだけれど、イーヴァったら何かというと帰ってくるものだからシェヌやサパンが度々連れ戻しに来るのよ。
分かってはいてもつい甘やかしてしまって、シェヌにはいつもお小言を頂いているわ……
 仕方ないじゃない、可愛いんだもの。
 神様の言うとおりにいつでも二人を隠せるようにはしているのだけど、気を張ってばかりじゃきっと持たないと思うし。



 


 あら、空がまた曇ってきたわね。
 雲が流れ去っていくのが早いわね。雪でも降り始めるのかしら。ならば、薬草とお野菜とお茶を少し摘んでおきましょう。
 風も徐々に冷たくなり、たまに雪も散る季節になってきました。あれから一年がたとうとしています。


 さあ、少し収穫しておかないと。
 目の前の畑を見つめて、薬草と葉物の野菜と根菜と紫蘇を手繰り寄せます。
 ええ、魔法も使えるようになってきたのですよ。とは言っても、育てる事と収穫する事だけなの。大量放出の魔力が使えるのは楽でいいわ。
 魔力っていうのが何となく分かりはじめて気づいたのだけれど、身体に魔力を溜め過ぎると、モゾモゾするように、気分はイライラするようになってしまったのよ。
 少しぐらい使ってもどうやら寝たり休んだりすると、すぐに回復してしまうから困ってしまったわ。それに細かい魔法はあまり得意じゃないもの。
 それでちまちま植えたり、摘んだりしないで魔法でするようになったの。

 
 一抱えほどの、薬草と野菜と紫蘇を浮かせたまま台所に行って、全体に『くりーん』をかけましょ。
 摘んできたものが、ぶわっと光り、土や埃、汚れがとれました。
『くりーん』と『いやし』はイリスにみっちり教わって使えるようになりました。努力しましたのよ? やはりちまちまは苦手なんですけれどね。
 
 
 お茶でも淹れて休憩しましょうか。お湯を沸かして…… ぱちっ…… ぱちっ…… 
 火花は散るけど火が着かないわ。
 あら、魔道具のコンロの魔力が切れたのかしら?
 後ろの魔石を入れるところを見ると、どの石も色を無くしています。
 石を外し、魔力を込めます。少し色づく程度まで込めたらやめなくてはね。まあ、お茶ぐらいならこれで持つでしょう。
 前に魔力を入れようとして、魔石が割れてはじけちゃったりしたから、イリスもイーヴァも心配するのよ。それからは魔力を込めるのは少しだけにしています。

 ばちぱちぱちっ!

 ほらね、火がついたもの。

 ヤカンに水を入れコンロに乗せて、沸くのを待ちましょう。そうそう、摘みたての紫蘇を少し刻んでヤカンにぽいっ。しゅんしゅんと丁度沸いた音もしています。
 ああ、良い香りがしてきましたね。
 テーブルにカップを用意して、椅子を引き寄せて。
 出来たお茶をカップにたっぷり注ぎ、ふうふうと息をかけながら冷まします。香りが周りに溢れていきます。
 幸せですわ。

「コーユさま、私の分も有りますか?」
 
 洗濯物を抱えて、イリスが居間に入ってきました。
 外では雪が散り始めたから部屋に持って来たようです。
 イリスの分もお茶を用意しながら聞いてみます。

「それ、乾いているかしら?」
「まだ少しだけ湿っているようですよ。どうします?」
「アイロンをかけるわ。そんなに多い量じゃないし」
「では、あちらの空き部屋に入れておきますね」

「すぐ掛けるから、ソファに置いておいてくれる」
「はーい」

二人でふうふうとお茶を冷ましながら飲むひと時は、穏やかで幸せな時間です。


 コツンコツンと台所横の勝手口から音が聞こえてきます。

 今日の森のお客さまは誰かしら。
 ドアを開けると兎のシロちゃんがいました。名前なんて勝手につけて呼んでいるだけですが、シロちゃんと呼べば『きゅい』と返事をしてくれるので分かってくれていると思う事にしています。

 「シロちゃん、人参食べる?」

『きゅい』

 お皿にくりーんをかけた人参を乗せ、テーブルに置きます。シロちゃんは手をテーブルに置きもぐもぐと食べています。
 ふと勝手口を見ると、紫色の薬草が見えました。

「シロちゃん、紫の薬草を持ってきてくれたのね」

『きゅきゅい』

「ありがとう。これで熱さましのお薬が出来るわ」

 そう、イリスに使った薬の原料です。作り方もあの時きていただいたお医者様に聞いたから大丈夫。たぶん。

 こうやって、森のお客さまは色々な物を持ってきてくれるのです。
 木の実やお魚のときも有るのよ。

 人参を食べ終わったシロちゃんは、私の足元にすり寄ってきます。可愛いわぁ……
 壁際の棚からブラシを取り出し、シロちゃんをブラッシングします。縺れていた毛がふわふわになっていきます。気持ちが良くてついなでてしまいます。

『きゅきゅきゅー』

 あら…… よく見て触ってみるとシロちゃんの眉間の上、額の方が硬くなってきているようで。

『痛いの痛いの飛んでいけー』

 額からごろんと角が取れました…… シロちゃんの魔核は薄い水色の魔石です。綺麗ですよ。

 ええ、何となく違うのは分かるのです。でもね、最初にこの子に出会った時、苦しんでいたからどこか怪我をしているのだと思って、撫でながらそう言ったら大きな角が取れたの。
 魔獣の核を取ってしまうと大人しい獣になるのね。知らなかったわ。

 あと、うん…… 何か魔法が出来てしまったようです……
 別に作ろうと思ったわけでは無いのよ。偶然出来てしまっただけなの……
 分かってもらえるといいのだけれども。


 それからは時々この子たちが色々な物を携えて来るようになったってわけ。

 絶対これ、シェヌやエルムに叱られてしまうわよね……
 イリスも最初はびくびくしていたのだけれど、いつの間にか一緒にブラッシングしているわ。ふわふわの毛ってとても気持ちいいのですもの。
 しばらくするとシロちゃんは勝手口から森に帰って行きました。


 そろそろお茶だけでなく、ご飯の用意もしなくてはね。


 人参とジャガイモと玉葱の皮をむいて一口大に切り、コッコの肉を加えて鍋で炒めます。
 甘い樹液をいれ、セウの実を潰したものを入れてコトコト煮つけます。
 エピは茹でておひたしに、玉葱とジャガイモのミショスープ。
 白米は見つからないけど、稗や麦でご飯代りのものもありますよ。

 すっかり私のご飯になれているイリスはとても嬉しそう。食いしん坊ですものね。




 
もっと、のんびり過ごすことにしたおばあちゃんです。

これからも宜しくお願い致します。
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