敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない

如月 そら

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3.ガラスの靴を置いて

ガラスの靴を置いて②

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 抱きしめたまま囁かれて、香澄は笑ってしまった。
「行きましょう」
 ぎゅうっと香澄を抱く腕が強くなる。
「本当にあなただ……」
 まるでやっと呼吸ができた人のようなその吐息混じりの声に必死さを感じて、思わず香澄は神代の広い背中に手を回してしまった。

 自分を探し出してくれた。
 香澄は諦めたのに、この人は諦めなかったのだ。
 そのことをとても尊く感じた。
「神代さん……」
「ん?」
「探し出してくれて、ありがとうございます」
「こちらこそ。見つかってくれてありがとう」

 ん? と思わず顔を上げると神代がとても優しい顔で微笑んでいた。つられるように香澄は笑ってしまった。

「もう! なに言ってるんです?」
「ああ、やっぱり可愛い。その笑顔が見たかった」
 こうして交際することとなった二人は連絡先を交換したのだった。

 しかし、神代はやり手と呼ばれる会社のCEOであり、香澄は半年後に展覧会を控えた書道家だ。

 連絡先を交換したものの、普段はメールアプリのテキストメッセージでのやり取りが中心となってしまっていた。たまに、夜時間ができると神代が『通話してもいいですか?』とメッセージをくれてそれに香澄が了承すると、通話するという感じだ。

 スマートフォンの向こうからは神代のため息が漏れ聞こえていた。
『はぁ……せっかくシンデレラを見つけたのに、一向にお会いできない……』

 物語ではお姫様を探し当てた王子様は幸せに暮らしました。というのがエンディングであり、その後の生活については描かれないのが一般的だ。まさか、香澄も交際している相手と会うことがこんなにも難しいことなのだとは思わなかったのだ。神代が言わんとすることは分かる。

「神代さんもお忙しいですものね」
『しかも俺のお姫様は聞き分けが良すぎて、会いたいとかわがままを言ってくれないし』

 どうしよう。会いたいのは間違いないのだが、なにせ交際歴のない香澄のことだ。どれくらい相手に甘えていいのか分からないというのが正直なところだった。

「え? えっ? わがままを言った方がいいんですか? 私も会いたいです……本当は」
 小さい声で正直な気持ちを打ち明けてみたら、さらに大きなため息と甘くて低い声が耳をくすぐった。

『本当に可愛い。今すぐぎゅうっとしたい。そういえば映画を観に行こうという約束も果たしていない』
「あの、神代さんのお時間ができてからで大丈夫ですよ」
『来週のディナーの予定は忘れていませんよね?』
「ええ。もちろんです。楽しみにしていますね」

『俺もです。楽しみにしすぎて仕事の効率が良くなっているので、秘書に定期的に香澄さんとのデートの約束を入れるようにと勧奨があったくらいですよ』
 その言い方にくすくすと香澄は笑ってしまった。
「秘書の方に?」
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