17 / 86
4.目の前のハードルが高い…
目の前のハードルが高い…①
しおりを挟む
「封筒……」
宛名は会社の中の神代になっていて、綺麗なペン字で書かれている。
神代は高村からその封筒を受け取るが、裏を確認して思わず微笑んでしまっていたことに自分では気づいていなかった。
CEOの神代は感じよく人当たりもよいものの、その感じのよさが異性に発揮されることがないと知っている秘書高村は、さっきから驚愕を隠せない。女性を名前で呼ぶことも、その女性から届いたと思しき封筒を手にして微笑むこともだ。
「申し訳ございません。どういった向きの方か存じ上げなかったので、中身を確認させていただいたのですが……」
会社の代表当宛に届いた手紙を秘書が開封するのは当たり前のことだ。
「申し訳ございませんでした」
高村が丁寧に頭を下げるので神代は中を見られたのだということが分かった。
「知らなかったのだから仕方ないです。今後彼女からの手紙は信書扱いとして開封は控えてもらえますか?」
「承知いたしました」
どちらにしても確認したのは高村だけだと分かっているので神代も簡単な注意だけに留める。それに高村は察しが悪いというわけでもない。
あらかじめ告げておけばそんなことにはならなかったし、神代もまさか香澄が会社に封書を寄越すとは思わなかったのだ。
「とても素敵なお手紙を書かれる方ですね」
神代は軽くため息をついた。
「別に内容を確認されたことは構わないんですけど、先に高村さんに見られたというのがな……」
「ごゆっくりどうぞ」
そう言ってにっこり笑った高村は部屋を出ていった。
全てにおいて察しがいい秘書というのは得がたいものではあるけれど、時折負けたような気持ちにさせられるのが神代は複雑だった。
封書の裏面には綺麗な字で『柚木香澄』と書かれてある。はさみで丁寧に封を切られた封筒から神代は手紙を取り出した。
こんなにもわくわくする思いで封筒から手紙を出したことはないだろう。
綺麗な薄いピンク色の紙に書いてある文字が少し透けて見えた。
神代はそっと手紙を開く。
『神代佳祐様 お忙しい日々をお過ごしのことと存じます。いつも、メールなどお心遣いくださりありがとうございます。お忙しい中でのお心遣いは本当に嬉しく感謝しております。突然のお手紙で驚かれたことと存じます。
実は特に用件があったというわけではなく、書道の生徒さんがお知り合いの方にお手紙を書かれるというので、お稽古でお手紙を拝見しておりましたところ私も神代さんにお手紙を出したくなってしまったのです。神代さんはお忙しいと存じますのでお返事は不要です。
なかなかお会いできない中、神代さんは寂しいとおっしゃってくださいます。私もメールではお伝えできていませんが、とても寂しく思っています。本当はもっとお会いしたいです。けれどお互いに忙しいことも理解しております。
宛名は会社の中の神代になっていて、綺麗なペン字で書かれている。
神代は高村からその封筒を受け取るが、裏を確認して思わず微笑んでしまっていたことに自分では気づいていなかった。
CEOの神代は感じよく人当たりもよいものの、その感じのよさが異性に発揮されることがないと知っている秘書高村は、さっきから驚愕を隠せない。女性を名前で呼ぶことも、その女性から届いたと思しき封筒を手にして微笑むこともだ。
「申し訳ございません。どういった向きの方か存じ上げなかったので、中身を確認させていただいたのですが……」
会社の代表当宛に届いた手紙を秘書が開封するのは当たり前のことだ。
「申し訳ございませんでした」
高村が丁寧に頭を下げるので神代は中を見られたのだということが分かった。
「知らなかったのだから仕方ないです。今後彼女からの手紙は信書扱いとして開封は控えてもらえますか?」
「承知いたしました」
どちらにしても確認したのは高村だけだと分かっているので神代も簡単な注意だけに留める。それに高村は察しが悪いというわけでもない。
あらかじめ告げておけばそんなことにはならなかったし、神代もまさか香澄が会社に封書を寄越すとは思わなかったのだ。
「とても素敵なお手紙を書かれる方ですね」
神代は軽くため息をついた。
「別に内容を確認されたことは構わないんですけど、先に高村さんに見られたというのがな……」
「ごゆっくりどうぞ」
そう言ってにっこり笑った高村は部屋を出ていった。
全てにおいて察しがいい秘書というのは得がたいものではあるけれど、時折負けたような気持ちにさせられるのが神代は複雑だった。
封書の裏面には綺麗な字で『柚木香澄』と書かれてある。はさみで丁寧に封を切られた封筒から神代は手紙を取り出した。
こんなにもわくわくする思いで封筒から手紙を出したことはないだろう。
綺麗な薄いピンク色の紙に書いてある文字が少し透けて見えた。
神代はそっと手紙を開く。
『神代佳祐様 お忙しい日々をお過ごしのことと存じます。いつも、メールなどお心遣いくださりありがとうございます。お忙しい中でのお心遣いは本当に嬉しく感謝しております。突然のお手紙で驚かれたことと存じます。
実は特に用件があったというわけではなく、書道の生徒さんがお知り合いの方にお手紙を書かれるというので、お稽古でお手紙を拝見しておりましたところ私も神代さんにお手紙を出したくなってしまったのです。神代さんはお忙しいと存じますのでお返事は不要です。
なかなかお会いできない中、神代さんは寂しいとおっしゃってくださいます。私もメールではお伝えできていませんが、とても寂しく思っています。本当はもっとお会いしたいです。けれどお互いに忙しいことも理解しております。
182
あなたにおすすめの小説
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
オオカミ課長は、部下のウサギちゃんを溺愛したくてたまらない
若松だんご
恋愛
――俺には、将来を誓った相手がいるんです。
お昼休み。通りがかった一階ロビーで繰り広げられてた修羅場。あ~課長だあ~、大変だな~、女性の方、とっても美人だな~、ぐらいで通り過ぎようと思ってたのに。
――この人です! この人と結婚を前提につき合ってるんです。
ほげええっ!?
ちょっ、ちょっと待ってください、課長!
あたしと課長って、ただの上司と部下ですよねっ!? いつから本人の了承もなく、そういう関係になったんですかっ!? あたし、おっそろしいオオカミ課長とそんな未来は予定しておりませんがっ!?
課長が、専務の令嬢とのおつき合いを断るネタにされてしまったあたし。それだけでも大変なのに、あたしの住むアパートの部屋が、上の住人の失態で水浸しになって引っ越しを余儀なくされて。
――俺のところに来い。
オオカミ課長に、強引に同居させられた。
――この方が、恋人らしいだろ。
うん。そうなんだけど。そうなんですけど。
気分は、オオカミの巣穴に連れ込まれたウサギ。
イケメンだけどおっかないオオカミ課長と、どんくさくって天然の部下ウサギ。
(仮)の恋人なのに、どうやらオオカミ課長は、ウサギをかまいたくてしかたないようで――???
すれ違いと勘違いと溺愛がすぎる二人の物語。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる