敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない

如月 そら

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4.目の前のハードルが高い…

目の前のハードルが高い…②

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 会えない時も神代さんはお元気にされているか、神代さんのことを考えています。
 先日はディナーにお誘いいただきありがとうございました。またお食事の際にお会いできるのを楽しみにしております。 柚木香澄』

 それは読んでいてとても心が温まるものだった。
(くれぐれも高村さんがこの手紙へ先に目を通したということが悔しいな)

 心なしか手紙から良い薫りがするのは軽く香を焚きしめてあるからだろうと思われた。香澄のそういう心づかいまで神代は好ましく感じる。
 改めて手紙を見ると手紙の内容も嬉しいことはもちろん、その筆跡までも美しく香澄に惚れ直してしまう。

 数回目を通した神代はまた手紙を丁寧にたたんで封筒に入れ、スーツの内ポケットに封筒ごとしまった。懐がほわりと温かいような気がするのはお守りのように香澄の気持ちを嬉しく感じるからだ。

 これほどまでに愛おしい気持ちになれる相手に出逢えることなどなかっただろう。
 お見合いの、しかも身代わりという偶然の出会いに神代は心から感謝していた。

 * * *

「おかしくないかしら」
 オフホワイトのワンピースは今年デパートで一目惚れして購入したものだ。裾がふわりとフレアになっていてレースをあしらってあり、ウエストを細めのイエローのリボンで結ぶようになっているのが香澄の気に入っているところだった。

「いいんじゃないの?」
 玄関先の全身が映る鏡でチェックしていたら、母がひょいっと居間から顔を出したのだ。
「お母様! 急に出てきたら驚くでしょう?」
「だって香澄ちゃんてばずっと迷っているのだもの。素敵よってお伝えしなかったら外出しないのではないかと思って。とても素敵よ、香澄ちゃん。きっと神代さんも喜ばれると思うわよ?」

 神代が香澄のことを探して家を訪ねてくれたあの時から、母は神代の大ファンなのだ。あの端正な顔立ちと優しい振る舞いは母をも虜にしてしまったらしい。
 しかも、今まで交際などできなかった香澄が初めて抵抗なく一緒に出かけたりすることのできる男性なのだ。その紳士的なところも好感度が高い原因らしい。

「では……いってまいります」
「はい。気をつけてね。何かあったら連絡してね」
「はい」
 それは出かける際にいつも言われる定型の言葉だった。母は少し考えて、ふふっと軽く笑う。

「お泊まりになった時は早めに言ってね?」
「お母様っ!」
 本当に一度本気で叱っておかなくてはいけない。愛娘をからかってはいけないのだ。

 香澄が外出する際は父が運転手付きの車を手配してくれている。今日も出かける際はその車を使う予定だが、帰りは神代が送ってくれるということだった。行き先は住宅地の中にある隠れ家的なフレンチのお店を選んでくれていた。
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