18 / 86
4.目の前のハードルが高い…
目の前のハードルが高い…②
しおりを挟む
会えない時も神代さんはお元気にされているか、神代さんのことを考えています。
先日はディナーにお誘いいただきありがとうございました。またお食事の際にお会いできるのを楽しみにしております。 柚木香澄』
それは読んでいてとても心が温まるものだった。
(くれぐれも高村さんがこの手紙へ先に目を通したということが悔しいな)
心なしか手紙から良い薫りがするのは軽く香を焚きしめてあるからだろうと思われた。香澄のそういう心づかいまで神代は好ましく感じる。
改めて手紙を見ると手紙の内容も嬉しいことはもちろん、その筆跡までも美しく香澄に惚れ直してしまう。
数回目を通した神代はまた手紙を丁寧にたたんで封筒に入れ、スーツの内ポケットに封筒ごとしまった。懐がほわりと温かいような気がするのはお守りのように香澄の気持ちを嬉しく感じるからだ。
これほどまでに愛おしい気持ちになれる相手に出逢えることなどなかっただろう。
お見合いの、しかも身代わりという偶然の出会いに神代は心から感謝していた。
* * *
「おかしくないかしら」
オフホワイトのワンピースは今年デパートで一目惚れして購入したものだ。裾がふわりとフレアになっていてレースをあしらってあり、ウエストを細めのイエローのリボンで結ぶようになっているのが香澄の気に入っているところだった。
「いいんじゃないの?」
玄関先の全身が映る鏡でチェックしていたら、母がひょいっと居間から顔を出したのだ。
「お母様! 急に出てきたら驚くでしょう?」
「だって香澄ちゃんてばずっと迷っているのだもの。素敵よってお伝えしなかったら外出しないのではないかと思って。とても素敵よ、香澄ちゃん。きっと神代さんも喜ばれると思うわよ?」
神代が香澄のことを探して家を訪ねてくれたあの時から、母は神代の大ファンなのだ。あの端正な顔立ちと優しい振る舞いは母をも虜にしてしまったらしい。
しかも、今まで交際などできなかった香澄が初めて抵抗なく一緒に出かけたりすることのできる男性なのだ。その紳士的なところも好感度が高い原因らしい。
「では……いってまいります」
「はい。気をつけてね。何かあったら連絡してね」
「はい」
それは出かける際にいつも言われる定型の言葉だった。母は少し考えて、ふふっと軽く笑う。
「お泊まりになった時は早めに言ってね?」
「お母様っ!」
本当に一度本気で叱っておかなくてはいけない。愛娘をからかってはいけないのだ。
香澄が外出する際は父が運転手付きの車を手配してくれている。今日も出かける際はその車を使う予定だが、帰りは神代が送ってくれるということだった。行き先は住宅地の中にある隠れ家的なフレンチのお店を選んでくれていた。
先日はディナーにお誘いいただきありがとうございました。またお食事の際にお会いできるのを楽しみにしております。 柚木香澄』
それは読んでいてとても心が温まるものだった。
(くれぐれも高村さんがこの手紙へ先に目を通したということが悔しいな)
心なしか手紙から良い薫りがするのは軽く香を焚きしめてあるからだろうと思われた。香澄のそういう心づかいまで神代は好ましく感じる。
改めて手紙を見ると手紙の内容も嬉しいことはもちろん、その筆跡までも美しく香澄に惚れ直してしまう。
数回目を通した神代はまた手紙を丁寧にたたんで封筒に入れ、スーツの内ポケットに封筒ごとしまった。懐がほわりと温かいような気がするのはお守りのように香澄の気持ちを嬉しく感じるからだ。
これほどまでに愛おしい気持ちになれる相手に出逢えることなどなかっただろう。
お見合いの、しかも身代わりという偶然の出会いに神代は心から感謝していた。
* * *
「おかしくないかしら」
オフホワイトのワンピースは今年デパートで一目惚れして購入したものだ。裾がふわりとフレアになっていてレースをあしらってあり、ウエストを細めのイエローのリボンで結ぶようになっているのが香澄の気に入っているところだった。
「いいんじゃないの?」
玄関先の全身が映る鏡でチェックしていたら、母がひょいっと居間から顔を出したのだ。
「お母様! 急に出てきたら驚くでしょう?」
「だって香澄ちゃんてばずっと迷っているのだもの。素敵よってお伝えしなかったら外出しないのではないかと思って。とても素敵よ、香澄ちゃん。きっと神代さんも喜ばれると思うわよ?」
神代が香澄のことを探して家を訪ねてくれたあの時から、母は神代の大ファンなのだ。あの端正な顔立ちと優しい振る舞いは母をも虜にしてしまったらしい。
しかも、今まで交際などできなかった香澄が初めて抵抗なく一緒に出かけたりすることのできる男性なのだ。その紳士的なところも好感度が高い原因らしい。
「では……いってまいります」
「はい。気をつけてね。何かあったら連絡してね」
「はい」
それは出かける際にいつも言われる定型の言葉だった。母は少し考えて、ふふっと軽く笑う。
「お泊まりになった時は早めに言ってね?」
「お母様っ!」
本当に一度本気で叱っておかなくてはいけない。愛娘をからかってはいけないのだ。
香澄が外出する際は父が運転手付きの車を手配してくれている。今日も出かける際はその車を使う予定だが、帰りは神代が送ってくれるということだった。行き先は住宅地の中にある隠れ家的なフレンチのお店を選んでくれていた。
179
あなたにおすすめの小説
白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』
鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
夫が運命の番と出会いました
重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。
だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。
しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる