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6.ボジティブとネガティブの間に
ボジティブとネガティブの間に③
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指先が触れただけなのに驚いたように身体を揺らす風情までもが神代の好みだった。思うさま抱きしめたい。そんな風に思うことはついぞなく、そんな自分に驚いたくらいだ。
この頃には香澄とお見合いを進めることを決めていた。けれど一緒に過ごしていて、香澄からは好意らしきものを感じるのに、時折悲しそうな切ない表情を見せる。それもとても気になっていた。
「ごめんなさい」
そう言われた時は一瞬絶望しかけたが、香澄の顔があまりにも悲しそうなので事情があるのだと察した。
──このまま逃がすか!
めったに出逢わない好みドンピシャの女性なのだ。
「俺のこと、イヤですか? 嫌い?」
そう聞いたのは賭けのようなものだ。
(絶対に嫌いではないはずだ……!)
それは祈りにも似たような気持ちだった。嫌いですかと聞いた神代に対してふるふるっと香澄は首を横に振ったのだ。
嫌いじゃない。今はそれだけが分かればよかった。絶対に捕まえる。それを自分が決めてさえいれば必ず実現する。
香澄の手を握ったのはそれを自分に誓うためだ。
「事情があるなら今は逃げてもいいです。けど、俺は必ず追いかけてあなたのことを捕まえますよ」
そう言って、香澄の指先に口付けをしたのは香澄への誓いだった。
もともと神代はリサーチも得意分野だ。その特技を活かして柚木家を調べてみた。柚木菜々美のことを探してみる。リサーチに引っかかってきたのは、あの日会った彼女とは別人だった。
「違うな……」
SNSが判明したので確認してみたが、柚木菜々美は非常に活動的な人物のようで、その中には書道のしの字もなかったのだ。
友人とキャンプに行ったり、外でスポーツなどする姿はあの時会った菜々美の姿とは全く一致しない。
次に書道で柚木という名前を検索したが引っかかってこなかった。いろいろ調査して分かったことは、書道には雅号と言われる別の名前があり、おそらくあの時会った柚木も雅号を使用しているということだ。
書道教室も探してみたもののネットでは引っかかってこなかった。個人的に開いている教室なら確かに検索では引っかからない可能性もある。
正直、個人が個人を探すということがこれほど難航するものだとは思わなかった。それでも粘り強く探したのはどうしてもあの時の彼女に会いたかったからだ。結局神代が頼ったのは、リサーチを専門としている部署の友人だった。
普段は出勤はしないでリモートであることが多いので、こんな時にCEOとしての権限を使うのもどうかとは思ったが、会社に呼び出したのだ。
急に呼び出された友人は執務室で神代が話した内容に驚愕していた。
「個人の調査!?」
そんなことは依頼したことがないので、友人も非常に驚いていたが、神代が「どうしても知りたいんだ!」と頼み込むと目を三日月のように細めた。
「普段はそんなことを言わない神代が頼み込んでまで知りたいってことは相当だな」
この頃には香澄とお見合いを進めることを決めていた。けれど一緒に過ごしていて、香澄からは好意らしきものを感じるのに、時折悲しそうな切ない表情を見せる。それもとても気になっていた。
「ごめんなさい」
そう言われた時は一瞬絶望しかけたが、香澄の顔があまりにも悲しそうなので事情があるのだと察した。
──このまま逃がすか!
めったに出逢わない好みドンピシャの女性なのだ。
「俺のこと、イヤですか? 嫌い?」
そう聞いたのは賭けのようなものだ。
(絶対に嫌いではないはずだ……!)
それは祈りにも似たような気持ちだった。嫌いですかと聞いた神代に対してふるふるっと香澄は首を横に振ったのだ。
嫌いじゃない。今はそれだけが分かればよかった。絶対に捕まえる。それを自分が決めてさえいれば必ず実現する。
香澄の手を握ったのはそれを自分に誓うためだ。
「事情があるなら今は逃げてもいいです。けど、俺は必ず追いかけてあなたのことを捕まえますよ」
そう言って、香澄の指先に口付けをしたのは香澄への誓いだった。
もともと神代はリサーチも得意分野だ。その特技を活かして柚木家を調べてみた。柚木菜々美のことを探してみる。リサーチに引っかかってきたのは、あの日会った彼女とは別人だった。
「違うな……」
SNSが判明したので確認してみたが、柚木菜々美は非常に活動的な人物のようで、その中には書道のしの字もなかったのだ。
友人とキャンプに行ったり、外でスポーツなどする姿はあの時会った菜々美の姿とは全く一致しない。
次に書道で柚木という名前を検索したが引っかかってこなかった。いろいろ調査して分かったことは、書道には雅号と言われる別の名前があり、おそらくあの時会った柚木も雅号を使用しているということだ。
書道教室も探してみたもののネットでは引っかかってこなかった。個人的に開いている教室なら確かに検索では引っかからない可能性もある。
正直、個人が個人を探すということがこれほど難航するものだとは思わなかった。それでも粘り強く探したのはどうしてもあの時の彼女に会いたかったからだ。結局神代が頼ったのは、リサーチを専門としている部署の友人だった。
普段は出勤はしないでリモートであることが多いので、こんな時にCEOとしての権限を使うのもどうかとは思ったが、会社に呼び出したのだ。
急に呼び出された友人は執務室で神代が話した内容に驚愕していた。
「個人の調査!?」
そんなことは依頼したことがないので、友人も非常に驚いていたが、神代が「どうしても知りたいんだ!」と頼み込むと目を三日月のように細めた。
「普段はそんなことを言わない神代が頼み込んでまで知りたいってことは相当だな」
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