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離さない
離さない①
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まだ目が覚めたばかりだし、とりあえず休んでおいで。
そう言われて、珠月はベッドに横になる。
窓にはカーテンが引かれているので、今は外を見ることは出来ない。
横になっている範囲で、そっと周りを見回してみた。
ここはログハウスの山荘のようだった。
フローリングというより、木製の床が目に入る。それに大きな木の連なっている壁。窓枠までもが木製の部屋だ。
部屋の入口付近には、可愛らしい色のキャスター付きのスーツケースが置いてある。
入口の横にはクローゼットらしきドアも見えた。
スーツケースはおそらく、自分が持ってきたものなのだろう。
ふと見た自分は膝丈のすとんとした、ワンピースタイプの寝間着を着ていた。彼が着せてくれたのかもしれないと思うと、何だか恥ずかしくなる。
北原圭一郎さん……お医者様だと言っていた。そしてすごく素敵な人だ。
顔立ちが綺麗で着ているものも、とてもセンスがいい。
ふわっと柔らかそうな髪をしていて、目元のホクロが妙にセクシー。
そして、珠月にとても、とても甘い。
恋人だものね……。
記憶のない珠月には、なんだかピンとこないけれど。
自分が名前が長いからと圭一郎を圭さんと呼ぶ、と言ったのだと言っていた。
確かに何となく自分ならそんな事を言いそうだ。
けれど、それを言われた時の圭一郎がどうだったのか、嬉しそうだったのか困っていたのか、その時の圭一郎を覚えていないことが、今の自分にはひどく残念な事に思えた。
その時コンコン、とノックの音がした。
「はい」
返事をすると、圭一郎が入ってくる。
手には四角い大きなトレイを持っていた。
「珠月、うどんがあったと思ったんだけど、ご飯しかなくて。今日はおじやにしたから」
「あ……はい」
圭一郎はトレイに小さな土鍋とレンゲや器を乗せて部屋に持ってきてくれたのだ。
「え、ダイニングまで行ったのに」
「足もケガしているんだよ」
珠月が慌てて布団を捲ると、確かに足首にも包帯が巻かれている。
「昨日は歩けない様子だったよ。俺が診たけど骨折はしていないようだったし、靭帯も問題なさそうだから捻挫だと思う。昨日は少し熱を持っていたから冷湿布してあるよ。後で替えてあげる」
圭一郎はベットサイドの小さなテーブルに、トレイをそっと置いてくれた。
慣れた様子で窓の横のデスクのところから、小さな椅子を持ってきてベッドの横に置く。
「本当に、ありがとう」
「大事な彼女なんだよ。当然……」
そこで圭一郎は軽くため息をついた。
「ごめん。俺もショックじゃないと言えば嘘になる。でも珠月、気は使わなくていい。ケガの原因は俺にもある。さっきも言ったけどね」
「あ、ケンカ……?」
「言い争い。ただお互いの意見が噛み合わなかっただけだよ。ここには2人でゆっくりするために来たんだ。普段、俺の仕事が忙しくて、あまり珠月に構ってあげられていなかったしな」
そう言われて、珠月はベッドに横になる。
窓にはカーテンが引かれているので、今は外を見ることは出来ない。
横になっている範囲で、そっと周りを見回してみた。
ここはログハウスの山荘のようだった。
フローリングというより、木製の床が目に入る。それに大きな木の連なっている壁。窓枠までもが木製の部屋だ。
部屋の入口付近には、可愛らしい色のキャスター付きのスーツケースが置いてある。
入口の横にはクローゼットらしきドアも見えた。
スーツケースはおそらく、自分が持ってきたものなのだろう。
ふと見た自分は膝丈のすとんとした、ワンピースタイプの寝間着を着ていた。彼が着せてくれたのかもしれないと思うと、何だか恥ずかしくなる。
北原圭一郎さん……お医者様だと言っていた。そしてすごく素敵な人だ。
顔立ちが綺麗で着ているものも、とてもセンスがいい。
ふわっと柔らかそうな髪をしていて、目元のホクロが妙にセクシー。
そして、珠月にとても、とても甘い。
恋人だものね……。
記憶のない珠月には、なんだかピンとこないけれど。
自分が名前が長いからと圭一郎を圭さんと呼ぶ、と言ったのだと言っていた。
確かに何となく自分ならそんな事を言いそうだ。
けれど、それを言われた時の圭一郎がどうだったのか、嬉しそうだったのか困っていたのか、その時の圭一郎を覚えていないことが、今の自分にはひどく残念な事に思えた。
その時コンコン、とノックの音がした。
「はい」
返事をすると、圭一郎が入ってくる。
手には四角い大きなトレイを持っていた。
「珠月、うどんがあったと思ったんだけど、ご飯しかなくて。今日はおじやにしたから」
「あ……はい」
圭一郎はトレイに小さな土鍋とレンゲや器を乗せて部屋に持ってきてくれたのだ。
「え、ダイニングまで行ったのに」
「足もケガしているんだよ」
珠月が慌てて布団を捲ると、確かに足首にも包帯が巻かれている。
「昨日は歩けない様子だったよ。俺が診たけど骨折はしていないようだったし、靭帯も問題なさそうだから捻挫だと思う。昨日は少し熱を持っていたから冷湿布してあるよ。後で替えてあげる」
圭一郎はベットサイドの小さなテーブルに、トレイをそっと置いてくれた。
慣れた様子で窓の横のデスクのところから、小さな椅子を持ってきてベッドの横に置く。
「本当に、ありがとう」
「大事な彼女なんだよ。当然……」
そこで圭一郎は軽くため息をついた。
「ごめん。俺もショックじゃないと言えば嘘になる。でも珠月、気は使わなくていい。ケガの原因は俺にもある。さっきも言ったけどね」
「あ、ケンカ……?」
「言い争い。ただお互いの意見が噛み合わなかっただけだよ。ここには2人でゆっくりするために来たんだ。普段、俺の仕事が忙しくて、あまり珠月に構ってあげられていなかったしな」
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