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鳥は窓辺で歌う
鳥は窓辺で歌う⑤
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この縁側でごろごろしながら宿題をしたり洗濯物を干す祖母と話したり、そんな思い出が一気に蘇ったのだ。
もう二度とこの光景には出会えないと思っていた。
珠月の頬を涙が次々に伝う。
「珠月? ごめん。勝手にさわって気分悪かった? ごめんね?」
涙をこぼし続ける珠月に、圭一郎がそっと謝る。
「違いますよ。圭さん、私嬉しいんです。もう見れないって思っていたの。本当に本当に嬉しいんです」
「良かった……」
圭一郎は、珠月を抱きしめた。
「実は俺もここを気に入ってしまったんだ。もちろん珠月を驚かせたいという気持ちもあったんだけど、それよりも少しでもここを良くしたいって思ってしまって。ここは……とてもいいよね」
そう言って縁側からの景色を並んで圭一郎は珠月と一緒に空を見上げ、きゅっと珠月を抱きしめ直した。
「圭さん……圭さんっ! ありがとうございます!」
「気に入ってくれた?」
圭一郎の腕の中で、珠月はこくこく頷く。
「良かったよ」
するっと圭一郎の手が珠月の頬を撫でる。
つられたように、珠月が顔を上げた。こぼれてしまった涙を圭一郎はそっと指で拭ってくれたのだ。
「珠月、気に入ってくれて本当に良かった」
そして、圭一郎は自分の首からチェーンを引っ張り出す。
そのチェーンの先に付いていたのは、一時、珠月の指を飾っていた指輪だ。
「それも……?」
「うん。ずっと身につけていた。これがあったから諦めたくないって、ずっと思っていたよ。時期が来たら珠月を探そうとずっと思っていた。それよりも早く出会えたのは運命だな」
圭一郎はチェーンから指輪を外す。
「また、付けてくれる? 今度は本当に婚約者として俺とずっと一緒にいてほしい」
せっかくさっき拭ってくれたのに、また珠月の頬をたくさんの涙が伝う。
「泣かないで…。」
ぽろぽろと涙を零す珠月に、圭一郎は困った顔をしていた。
「し、しあわせなんです。圭さん、私、夢の中にいるみたいに幸せです」
「珠月、今度は現実だよ。もう夢ではないんだ」
「じゃあ現実の方が幸せなんですね」
「これからも幸せになろう。俺は珠月が側にいてくれて、そんな風に幸せだって思ってくれたら、それだけでいいんだ。それが俺の幸せだから」
そう言って圭一郎は珠月の額にこつんと自分の額を合わせる。
「私も、圭一郎さんとはもうお会いできないって思ってました。なのに、また逢ってしまうし、こんな風に抱きしめてくださるなんて思いも寄りませんでした。その上こんな……圭さんは、現実だって言いますけど、私にはまるで夢みたいです」
「もう夢じゃないよ。ここで俺は珠月を幸せにしたいんだ」
「ずっと一緒にいたいです」
珠月は圭一郎にぎゅうっと抱きついた。
その華奢な身体を圭一郎は抱きしめる。すっぽりと自分に包まれてしまう珠月。
この感覚だと感じる。
鳥は自分の元に戻った。
そして鳥は圭一郎が用意した鳥籠も気に入ったようだ。
もうここから逃げることはないだろう。
圭一郎にとってはその鳥は青い鳥だったのだと今なら分かる。
──俺はこの鳥籠の中で君をずっと愛すると誓うよ……。
✽+†+✽―END―✽+†+✽
ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました、
少しだけ、この後のお話を追加しています。
もしも、お気に召していただいたら、引き続きお読みいただけたら嬉しいです。
もう二度とこの光景には出会えないと思っていた。
珠月の頬を涙が次々に伝う。
「珠月? ごめん。勝手にさわって気分悪かった? ごめんね?」
涙をこぼし続ける珠月に、圭一郎がそっと謝る。
「違いますよ。圭さん、私嬉しいんです。もう見れないって思っていたの。本当に本当に嬉しいんです」
「良かった……」
圭一郎は、珠月を抱きしめた。
「実は俺もここを気に入ってしまったんだ。もちろん珠月を驚かせたいという気持ちもあったんだけど、それよりも少しでもここを良くしたいって思ってしまって。ここは……とてもいいよね」
そう言って縁側からの景色を並んで圭一郎は珠月と一緒に空を見上げ、きゅっと珠月を抱きしめ直した。
「圭さん……圭さんっ! ありがとうございます!」
「気に入ってくれた?」
圭一郎の腕の中で、珠月はこくこく頷く。
「良かったよ」
するっと圭一郎の手が珠月の頬を撫でる。
つられたように、珠月が顔を上げた。こぼれてしまった涙を圭一郎はそっと指で拭ってくれたのだ。
「珠月、気に入ってくれて本当に良かった」
そして、圭一郎は自分の首からチェーンを引っ張り出す。
そのチェーンの先に付いていたのは、一時、珠月の指を飾っていた指輪だ。
「それも……?」
「うん。ずっと身につけていた。これがあったから諦めたくないって、ずっと思っていたよ。時期が来たら珠月を探そうとずっと思っていた。それよりも早く出会えたのは運命だな」
圭一郎はチェーンから指輪を外す。
「また、付けてくれる? 今度は本当に婚約者として俺とずっと一緒にいてほしい」
せっかくさっき拭ってくれたのに、また珠月の頬をたくさんの涙が伝う。
「泣かないで…。」
ぽろぽろと涙を零す珠月に、圭一郎は困った顔をしていた。
「し、しあわせなんです。圭さん、私、夢の中にいるみたいに幸せです」
「珠月、今度は現実だよ。もう夢ではないんだ」
「じゃあ現実の方が幸せなんですね」
「これからも幸せになろう。俺は珠月が側にいてくれて、そんな風に幸せだって思ってくれたら、それだけでいいんだ。それが俺の幸せだから」
そう言って圭一郎は珠月の額にこつんと自分の額を合わせる。
「私も、圭一郎さんとはもうお会いできないって思ってました。なのに、また逢ってしまうし、こんな風に抱きしめてくださるなんて思いも寄りませんでした。その上こんな……圭さんは、現実だって言いますけど、私にはまるで夢みたいです」
「もう夢じゃないよ。ここで俺は珠月を幸せにしたいんだ」
「ずっと一緒にいたいです」
珠月は圭一郎にぎゅうっと抱きついた。
その華奢な身体を圭一郎は抱きしめる。すっぽりと自分に包まれてしまう珠月。
この感覚だと感じる。
鳥は自分の元に戻った。
そして鳥は圭一郎が用意した鳥籠も気に入ったようだ。
もうここから逃げることはないだろう。
圭一郎にとってはその鳥は青い鳥だったのだと今なら分かる。
──俺はこの鳥籠の中で君をずっと愛すると誓うよ……。
✽+†+✽―END―✽+†+✽
ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました、
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