契約婚と聞いていたのに溺愛婚でした!

如月 そら

文字の大きさ
59 / 109
13.落ち着いて

落ち着いて④

 あの人が好きだったとか言われたら、なんだか立ち直れないような気がするのだ。

「時期的に結婚の発表のニュースリリースの直後になるから、心の準備はしておいてくれ」
 そうなのだ。

 槙野のためにも会社のためにも美冬はそれなりの立場としてその場には立たなくてはいけない。

「分かったわ。パーティ用のドレスも用意しておくね」
「楽しみにしてる。その頃には婚約指輪もできていると思うから」

 ソファを立った槙野は美冬の額に軽くキスをしてから部屋を出ていった。
 美冬は先程は槙野に咎めたため息を一人でこっそりとしていた。

(それは、そうよね。祐輔には立場もあるし、人前にパートナーを連れて出なくてはいけないこともある)

 そういった意味ではミルヴェイユの代表でもあり、アイコンでもある美冬はそれなりに見映えがするし、都合がいいかもしれない。

 槙野の事情は未だに聞くことができていないのだけれど、そのようなものもあるのかもと美冬は考えたのだった。適齢期にそれなりのパートナーが必要だという。


 その後、槙野は美冬の実家にも挨拶にきてくれた。ニュースリリースも同じくらいの時期にお互いの会社から発表される。
 大きなニュースにはならなかったけれど、経済界の一部や、アパレル業界内では少し話題になったようだった。





「品があっていいネクタイですこと」

 ミルヴェイユとの業務提携を希望しているエス・ケイ・アールの木崎は槙野を流し見てさらりとそう言った。

 美冬はあの指輪を買いに行った日、三本ほどのネクタイを選んで槙野にプレゼントしてくれており、今日はそのうちの一本を締めてきていた。

「ありがとうございます。婚約者が選んだので」
「そうでしたわね、ミルヴェイユの椿さん。ニュースリリース拝見しましたわ。おめでとうございます」

 木崎が目を細め、にこりと笑う。
 目の奥が笑っていないのが非常に怖いところだ。

「木崎さんからお話をいただいた時俺は彼女にアプローチ中でした。ご希望に添えなくて申し訳ないが」

 さらりと槙野が言うと木崎から密やかに声が返ってくる。
「まだ、ご結婚はされていないのよね?」

──怖い!怖すぎるんだが‼︎まさか、まだ諦めていないなんてことは……。

「すぐしますけどね」
 背中がぞくっとすると共にまだ池森に思い知らせていなかったと思い出した槙野だった。

 槙野は素知らぬ顔で資料を取り出す。
「では、今回の件はビジネスマッチングとしてコンサルティングの形を取らせてもらうつもりでいますが、いいですか?」
「ええ、構いません」

「うちでも継続的にコンサルティングしつつサポートしていきます。ただ、このお話はまだミルヴェイユには伝えていません。双方の合意があってからお話を進めていくので、そこはご了承頂きたい」
「もちろんだわ」

 この日はミルヴェイユと木崎社長との顔合わせを予定していた。
 その前に従前から取引のある木崎との面談を先に入れたのだ。

 プライベートな話があったのはこの時だけで、その後はビジネスの話に終始した。ケイエムは順調に利益を伸ばしていると聞いて安心した槙野だ。
感想 4

あなたにおすすめの小説

隠れドS上司の過剰な溺愛には逆らえません

如月 そら
恋愛
旧題:隠れドS上司はTL作家を所望する! 【書籍化】 2023/5/17 『隠れドS上司の過剰な溺愛には逆らえません』としてエタニティブックス様より書籍化❤️ たくさんの応援のお陰です❣️✨感謝です(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎) 🍀WEB小説作家の小島陽菜乃はいわゆるTL作家だ。  けれど、最近はある理由から評価が低迷していた。それは未経験ゆえのリアリティのなさ。  さまざまな資料を駆使し執筆してきたものの、評価が辛いのは否定できない。 そんな時、陽菜乃は会社の倉庫で上司が同僚といたしているのを見てしまう。 「隠れて覗き見なんてしてたら、興奮しないか?」  真面目そうな上司だと思っていたのに︎!! ……でもちょっと待って。 こんなに慣れているのなら教えてもらえばいいんじゃないの!?  けれど上司の森野英は慣れているなんてもんじゃなくて……!? ※普段より、ややえちえち多めです。苦手な方は避けてくださいね。(えちえち多めなんですけど、可愛くてきゅんなえちを目指しました✨) ※くれぐれも!くれぐれもフィクションです‼️( •̀ω•́ )✧ ※感想欄がネタバレありとなっておりますので注意⚠️です。感想は大歓迎です❣️ありがとうございます(*ᴗˬᴗ)💕

『冷徹社長の過剰な健康管理が甘すぎます!~有能秘書は24時間、胃袋から愛を注がれる~』

kirisu
恋愛
【あらすじ】 完璧な仕事ぶりで冷徹社長・神崎を支える秘書の琴音。しかし連日の激務が祟り、ついに社長室で倒れてしまう。目を覚ますと、そこは神崎の高級マンションだった。「君の体調管理も上司の責任だ」と言い放つ神崎は、なぜか自らエプロンを着け、手作りの完全栄養食で琴音を餌付けし始める。 さらにスマートウォッチを着けられ、睡眠や心拍数まで24時間監視されるハメに!「健康管理」という名目で始まる、過剰すぎるスキンシップと甘やかし。冷徹なはずの社長による、胃袋からの完全包囲網から琴音は逃げられるのか!? 【キャラクター設定】 ◆ 白石 琴音(しらいし ことね)26歳 神崎ホールディングス・社長秘書。 会社では「氷の秘書」と呼ばれるほど、隙のない完璧な仕事ぶりを見せるクールビューティー。しかし、実態は仕事に全ステータスを振っているため、プライベートはポンコツで家事能力ゼロのズボラ女子。主食は栄養ゼリーとサプリメント。 社長の神崎を「顔が良すぎる最高のボス」として密かに推しており、熱烈な片思いをしているが、悟られないよう必死に鉄仮面を被っている。 ◆ 神崎 蒼(かんざき あおい)29歳 神崎ホールディングスの若き敏腕社長。 容姿端麗だが、一切の無駄を嫌う冷徹な仕事人間として社員から恐れられている。 しかし、実は琴音に対して入社時から異常な執着心と独占欲を抱いている。彼女を公私ともに「自分の完全な管理下」に置くことに至上の悦びを感じる、重めの過保護スパダリ。料理の腕前はプロ級。

推しに激似のクールな美容外科医のお飾り妻になるはずが、溺愛されて陥落寸前です

羽村 美海
恋愛
狂言界の名門として知られる高邑家の娘として生を受けた杏璃は、『イケメン狂言師』として人気の双子の従兄に蝶よ花よと可愛がられてきた。 過干渉気味な従兄のおかげで異性と出会う機会もなく、退屈な日常を過ごしていた。 いつか恋愛小説やコミックスに登場するヒーローのような素敵な相手が現れて、退屈な日常から連れ出してくれるかも……なんて夢見てきた。 だが待っていたのは、理想の王子様像そのもののアニキャラ『氷のプリンス』との出会いだった。 以来、保育士として働く傍ら、ソロ活と称して推し活を満喫中。 そんな杏璃の元に突如縁談話が舞い込んでくるのだが、見合い当日、相手にドタキャンされてしまう。 そこに現れたのが、なんと推し――氷のプリンスにそっくりな美容外科医・鷹村央輔だった。 しかも見合い相手にドタキャンされたという。 ――これはきっと夢に違いない。 そう思っていた矢先、伯母の提案により央輔と見合いをすることになり、それがきっかけで利害一致のソロ活婚をすることに。 確かに麗しい美貌なんかソックリだけど、無表情で無愛想だし、理想なのは見かけだけ。絶対に好きになんかならない。そう思っていたのに……。推しに激似の甘い美貌で情熱的に迫られて、身も心も甘く淫らに蕩かされる。お見合いから始まるじれあまラブストーリー! ✧• ───── ✾ ───── •✧ ✿高邑杏璃・タカムラアンリ(23) 狂言界の名門として知られる高邑家のお嬢様、人間国宝の孫、推し一筋の保育士、オシャレに興味のない残念女子 ✿鷹村央輔・タカムラオウスケ(33) 業界ナンバーワン鷹村美容整形クリニックの副院長、実は財閥系企業・鷹村グループの御曹司、アニキャラ・氷のプリンスに似たクールな容貌のせいで『美容界の氷のプリンス』と呼ばれている、ある事情からソロ活を満喫中 ✧• ───── ✾ ───── •✧ ※R描写には章題に『※』表記 ※この作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません ※随時概要含め本文の改稿や修正等をしています。 ✿初公開23.10.18✿

契約結婚した地味な旦那様が、実は世界一のCEOでした ~「愛さない」と言ったのは嘘だったんですか!?~

腐ったバナナ
恋愛
「お前みたいな借金まみれの地味な女、誰が愛するかよ」 元カレ・一ノ瀬に無残に捨てられ、父の遺した数億円の負債に絶望する事務員の真由。 そんな彼女に差し伸べられたのは、謎の弁護士による「契約結婚」という名の救済だった。 紹介された結婚相手・神城湊は、ボサボサ頭に分厚い眼鏡、いかにも冴えないシステムエンジニア。 「愛さない」「干渉しない」――。 そんな冷めた契約から始まった同居生活だったが、彼はなぜか真由を過保護なまでに甘やかし始める。 「ビジネスパートナーへの経費だから」 そう言って渡されたカードは、なんと利用限度額無制限のブラックカード!? さらに深夜、真由が目撃したのは、眼鏡を外し、冷徹な美貌で世界を動かす「魔王」の姿だった。 実は、冴えない夫の正体は、時価総額数兆円を誇る世界一のIT企業のCEO。 彼は五年前のある出来事から、真由を独占するために虎視眈々とこの機会を狙っていたのだ。

不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました

入海月子
恋愛
有本瑞希 仕事に燃える設計士 27歳 × 黒瀬諒 飄々として軽い一級建築士 35歳 女たらしと嫌厭していた黒瀬と一緒に働くことになった瑞希。 彼の言動は軽いけど、腕は確かで、真摯な仕事ぶりに惹かれていく。 ある日、同僚のミスが発覚して――。

冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない

彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。 酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。 「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」 そんなことを、言い出した。

真壁レオは今日も重い 〜独占欲強めな白銀狼に溺愛されています〜

ほしよみ
恋愛
獣人と人族が共存する世界。 大手ライフデザイン企業で働く白石唯衣は、若くしてフロアー統括をしている狼族のエリート、真壁レオと出会う。 冷酷で近寄りがたいと言われるレオだったが、唯衣にだけは何故か甘く、不器用なほど執着してきて……? 狼族には“番”という本能で結ばれる運命の存在がいる。 だが、人族である唯衣は、本来なら番になどなれないはずだった。 これは、 恋を知らなかった孤独な狼と、 魂で愛を選んだ人族の女性が、 世界で初めて“本物の番”になるまでの物語。 本編では書けないレオの独占欲や甘い日常をXで公開しています。 X『真壁レオは今日も重い』 覗き見はこちらから https://x.com/reo_yui_archive ※本作はフィクションです。 狼族をはじめとした獣人たちの価値観、生態、発情周期、恋愛観は、本作独自の世界観に基づいて描かれています。 現実とは異なる“彼らの世界”として、お楽しみいただければ幸いです。 小説家になろうでも投稿しています。

親友と結婚したら、ずっと前から溺愛されていたことに気づきました

由香
恋愛
親友と結婚した。 それだけのはずだったのに―― ある日、夫にキスされて気づく。 彼は“ただの親友”なんかじゃなかった。 「ずっと前から好きだった」 そう言われても、知らなかった私は戸惑うばかりで。 逃げようとすればするほど、距離は縮まっていく。 ――これは、親友だったはずの彼に、甘く捕まっていく話。 溺愛、独占欲、全部まとめて受け止める覚悟はありますか?