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本編・第三部
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南里くんのくりくりした瞳と視線が合わさる。パタパタとテラス席に駆けてくる姿は、飼い主を見つけた仔犬のよう。くりくりした瞳も相まってやはりチワワを彷彿とさせる。
私たちが座っているテーブルまで南里くんが走ってきて、手に持った高級百貨店の紙袋からゴソゴソと何かを取り出した。
「一瀬さん、土曜日に借りていたハンカチ、ありがとうございました!お詫びにと言ってはなんですが」
す、と。目の前に差し出されたのは、お花見歓迎会で南里くんがビールを零したときに南里くんの服を拭き上げたハンカチ。綺麗に洗濯されて、アイロンまでしっかりかけてある。その下に、ビニールで包装された……智からホワイトデーでもらったあのマカロンが添えてあった。
「えっ、ちょっと待って南里くん?」
お詫びに、と、南里くんは口にしたけれど。このマカロンはあの高級百貨店のもの。お値段が張るはずだ。目の前に差し出されたのは3個入りの小さなものとは言え、ハンカチを貸しただけのお返しには釣り合わない。
「こんな高いもの受け取れないわ……?」
キラキラと爽やかに笑う南里くんを、困惑したように見つめた。すると、南里くんが畳みかけるように言葉を紡ぐ。
「助けてもらったお礼で俺がそうしたいだけなので。本当に気にしないでください!」
「……」
こういう公共の場でさえも押しが強いのが、難だけれど。こうして何かを借りたらお礼として何かを返す、という心配りができる子だ。やっぱり根は素直な子なのだろう。
あまり固辞してしまうと南里くんのプライドに傷をつけてしまうだろう、と考えると、この場は騒がず受け取った方がよいと判断して。
「気にしなくてよかったのに。その気持ちは受け取るわ。ありがとう」
にこり、と、営業用の笑みを浮かべて、目の前に差し出されたマカロンとハンカチを受け取る。私の動作に、南里くんが満面の笑みを浮かべた。
「俺の方こそありがとうございました!じゃ、俺、フロアに戻ります!」
南里くんは私の隣に座る三木ちゃんに目もくれずニカッと笑うと、くるり、と踵を返した。その背中を呆気に取られながら見つめる。
私たち3人は丸テーブルを囲む椅子に座ったまま、しばらくその場に固まった。無言の時間が続く。
「彼……なんの心境の変化?」
ようやく絞り出せたのはそんな言葉だった。
先週の昼休みはあんなに三木ちゃんに纏わりついていたのに。ぽつり、と、私が呟くと、ぎこちない動きで加藤さんが私に視線を合わせる。
「………あれじゃないですか?その、えっと…1課のあの先輩……」
加藤さんが困ったように首を傾げる。他人の名前を覚えるのが苦手、と言っていた加藤さんに助け舟を出す。
「徳永さん?」
「そうです!徳永さんと再会したから……その…」
そこまで口にした加藤さんが言いづらそうに口をすぼめた。彼女が考えていることはきっと私と一緒だろう。
初恋の……忘れられないひとと再会した。そして、そのひとには現在恋人がいない。
そこから導き出される答え。
正直。あまりにも短絡的すぎて、言いたくはないけれど。
「………やっぱり加藤さんもそう思う?」
はぁ、と、小さくため息をこぼし、苦笑しながら二重の大きな瞳を見つめた。すると、隣に座っている三木ちゃんがくんっと大きく伸びをして。
「あー!彼女には悪いですけど、すっきりしちゃいました、私は!」
にこり、と。三木ちゃんが小首を傾げながら破顔した。ブラックのアイライナーに彩られた勝気な瞳が、ほっとしたような光を宿している。それはしつこく纏わりつかれていた人物から解放された、という安堵感からだろう。
いつも元気で溌剌とした三木ちゃんの瞳が憂いを帯びたように翳る瞬間があって、ここ1週間は気が気でなかった。
だからこそ、こうして一応の問題の解決を見て彼女が気兼ねなく笑ってくれるようになったことは、私も素直に嬉しい。
南里くんについては……なんというか、やはり全体的に思慮が足りない子なのかな、という印象を受けた。昨年担当した小林くんは元から出来すぎていたのだろうか。私の中で無意識に小林くんと南里くんとを比較してしまっているから、南里くんが出来ていないように見えるのかもしれない。
けれど、彼は水を含んでいないスポンジのように色々なことを吸収して成長していっている。根が素直なのは認める。でも、正直、彼は『危険な無邪気さ』を胸の中に抱えていると思う。私も人間が完璧に出来ているわけじゃない。でも、これから彼の教育、どうしていこうかなぁとあれこれ思いを巡らせていると、三木ちゃんが席をゆっくりと立って。
「先輩、そろそろ昼休み終わっちゃいますよ?戻りましょ~」
ふわり、と、三木ちゃんの明るい髪が揺らめいていく。
(……とりあえず、三木ちゃんに笑顔が戻ったことにすごく安心する…)
彼女の明るさに、ずっとずっと助けられてきた。彼女が小林くんに合コンの話をもちかけられて、私も一緒に参加出来ないのかと言ってくれたからこそ、私は智と出会えた。そうして、何気ない毎日が幸せだ、と思えている。
だからこそ。彼女が過ごす日々が幸せであれば、と、本心からそう願っている。
「せんぱ~い?新作クッキー、もう1個買って帰りませんか?すっごく美味しかったからもうひとつ食べたくなっちゃいました!」
三木ちゃんがにこにことした笑いながら私に視線を向けてくれる。その笑顔につられて、私も笑みが零れた。
「そうね、すごく美味しかったもの。桜の味だし、きっと無くなったら食べられなくなっちゃうと思うわ?」
美味しかったこのクッキーを智に持って帰ってあげたい、と思っていた。だから、三木ちゃんがもうひとつ買おうと提案してくれたのはありがたかった。
そうして私たちはレジに並び、クッキーを購入してカフェを後にする。ふたたび他愛のない話をしながらオフィスビルのエントランスでエレベーターを待った。
しばらくするとエレベーターが1階に到着し、3人で乗り込む。通関部のフロアがある階のボタンを三木ちゃんが押しているのを横目で確認して、不意に思い出したことがあって。思わずあっと声をあげた。
「私、帰省届けださないと」
極東商社では帰省する際に届けを出すと、いろいろと福利厚生が受けられる。旅行会社経由で航空機の予約が安く取れたり、全国チェーン店のホテルの料金やレンタカー料金の割引きが受けられたりと様々。複数の福利厚生を同時には受けられないが、どれかひとつを選択して利用することができる。
今回は智も一緒に私の実家に帰省することになっているから、福利厚生を利用して空港の近くにあるお店でレンタカーを借りることにした。いつもの帰省のように空港までお父さんに迎えに来てもらってもいいのだけれど、帰省中は智に私の地元を見て欲しいから。いろいろと動き回れるようにレンタカーを借りるという選択をしたのだ。
チン、と軽い音がして、通関部のフロアに到着したことを知らせてくれる。
「そっか、主任、今度のゴールデンウィークって帰省されるんでしたっけ」
加藤さんがエレベーターの『開』ボタンを押しながら、私に「お先にどうぞ」という視線を向けた。その好意に甘えて、先に降りるね、と加藤さんに軽く頭をさげる。
「うん、そうなの。みんなにお土産買って来るからね」
くるり、とその場で身体を反転させ、エレベーターから降りたばかりの加藤さんと三木ちゃんに視線を合わせた。
「と、いうわけで、私ちょっと総務部に行ってからフロアに戻るね」
後輩たちにひらひらと手を振って、エレベーターホールの奥の螺旋階段に繋がる扉に手をかけ扉を開いていく。総務部のブースは1階上だ。再びエレベーターを待つよりは階段を登った方が早い。
ギイ、と蝶番が軋む音が響いた。手すりにつかまりながら、コンコンとヒールの音を鳴らして螺旋階段を登りあがる。
総務部のブースに顔を出して、申請書を受け取りその場で必要事項を記入していると、私を呼ぶ声がして。
「一瀬主任、ちょうどよかった。これ、通関部に持っていっていただけませんか」
そう口にしながら、総務部所属の佐川くんが私にクリアファイルを手渡してくる。佐川くんは去年の新入社員で、小林くんや徳永さんの同期にあたる子だ。
「今年の役員懇談会実行委員会の資料です。新入社員枠で通関部に配属されたふたりのどちらかを推薦していただきたくて」
「あれ、もうそんな時期だっけ」
差し出されたクリアファイルを受け取りながら、佐川くんに視線を合わせる。昨年は新入社員が少なかったこともあって、昨年配属された小林くんと徳永さんふたりが駆り出されることになったことを思い出した。
今年は昨年の倍の人数、新入社員が入社している。だから南里くんと加藤さんのどちらかを推薦して欲しい、という話になったのだろう。
(まぁ、順当にいけば加藤さんかなぁ……)
彼女は極東商社で初の新入社員での女性総合職だ。彼女にとってはプレッシャーだろうけれども、ある種、注目されている新入社員。田邉部長は恐らく加藤さんを推薦するだろうなと予想が着く。ぼんやりと思考を飛ばしていると、目の前の佐川くんが申し訳なさそうに苦笑した。
「はい。今年は会場の都合がつかず、結局9月29日の金曜日に開催することになりまして」
「そうなの!?」
9月は30日までしかない。29日が金曜日ということは、9月の最終営業日が29日になるはず。そこに被るとは思っていなくて、思わず悲鳴じみた声があがる。
しかも29日は半期決算の日だ。本決算ほどではないとは言え、猫の手も借りたいくらい忙しいはず。そんな日に、加藤さんが実行委員として1日中不在となって通常業務から抜けてしまうのはかなりの痛手。
あげく、その1週間後が通関士の試験日。いろいろと切羽詰まっている時期に被ってしまう。
(これは困ったわ……)
痛む頭を押さえながら、その書類を手に持って。再び螺旋階段に足を向けて、通関部のフロアに戻っていった。
私たちが座っているテーブルまで南里くんが走ってきて、手に持った高級百貨店の紙袋からゴソゴソと何かを取り出した。
「一瀬さん、土曜日に借りていたハンカチ、ありがとうございました!お詫びにと言ってはなんですが」
す、と。目の前に差し出されたのは、お花見歓迎会で南里くんがビールを零したときに南里くんの服を拭き上げたハンカチ。綺麗に洗濯されて、アイロンまでしっかりかけてある。その下に、ビニールで包装された……智からホワイトデーでもらったあのマカロンが添えてあった。
「えっ、ちょっと待って南里くん?」
お詫びに、と、南里くんは口にしたけれど。このマカロンはあの高級百貨店のもの。お値段が張るはずだ。目の前に差し出されたのは3個入りの小さなものとは言え、ハンカチを貸しただけのお返しには釣り合わない。
「こんな高いもの受け取れないわ……?」
キラキラと爽やかに笑う南里くんを、困惑したように見つめた。すると、南里くんが畳みかけるように言葉を紡ぐ。
「助けてもらったお礼で俺がそうしたいだけなので。本当に気にしないでください!」
「……」
こういう公共の場でさえも押しが強いのが、難だけれど。こうして何かを借りたらお礼として何かを返す、という心配りができる子だ。やっぱり根は素直な子なのだろう。
あまり固辞してしまうと南里くんのプライドに傷をつけてしまうだろう、と考えると、この場は騒がず受け取った方がよいと判断して。
「気にしなくてよかったのに。その気持ちは受け取るわ。ありがとう」
にこり、と、営業用の笑みを浮かべて、目の前に差し出されたマカロンとハンカチを受け取る。私の動作に、南里くんが満面の笑みを浮かべた。
「俺の方こそありがとうございました!じゃ、俺、フロアに戻ります!」
南里くんは私の隣に座る三木ちゃんに目もくれずニカッと笑うと、くるり、と踵を返した。その背中を呆気に取られながら見つめる。
私たち3人は丸テーブルを囲む椅子に座ったまま、しばらくその場に固まった。無言の時間が続く。
「彼……なんの心境の変化?」
ようやく絞り出せたのはそんな言葉だった。
先週の昼休みはあんなに三木ちゃんに纏わりついていたのに。ぽつり、と、私が呟くと、ぎこちない動きで加藤さんが私に視線を合わせる。
「………あれじゃないですか?その、えっと…1課のあの先輩……」
加藤さんが困ったように首を傾げる。他人の名前を覚えるのが苦手、と言っていた加藤さんに助け舟を出す。
「徳永さん?」
「そうです!徳永さんと再会したから……その…」
そこまで口にした加藤さんが言いづらそうに口をすぼめた。彼女が考えていることはきっと私と一緒だろう。
初恋の……忘れられないひとと再会した。そして、そのひとには現在恋人がいない。
そこから導き出される答え。
正直。あまりにも短絡的すぎて、言いたくはないけれど。
「………やっぱり加藤さんもそう思う?」
はぁ、と、小さくため息をこぼし、苦笑しながら二重の大きな瞳を見つめた。すると、隣に座っている三木ちゃんがくんっと大きく伸びをして。
「あー!彼女には悪いですけど、すっきりしちゃいました、私は!」
にこり、と。三木ちゃんが小首を傾げながら破顔した。ブラックのアイライナーに彩られた勝気な瞳が、ほっとしたような光を宿している。それはしつこく纏わりつかれていた人物から解放された、という安堵感からだろう。
いつも元気で溌剌とした三木ちゃんの瞳が憂いを帯びたように翳る瞬間があって、ここ1週間は気が気でなかった。
だからこそ、こうして一応の問題の解決を見て彼女が気兼ねなく笑ってくれるようになったことは、私も素直に嬉しい。
南里くんについては……なんというか、やはり全体的に思慮が足りない子なのかな、という印象を受けた。昨年担当した小林くんは元から出来すぎていたのだろうか。私の中で無意識に小林くんと南里くんとを比較してしまっているから、南里くんが出来ていないように見えるのかもしれない。
けれど、彼は水を含んでいないスポンジのように色々なことを吸収して成長していっている。根が素直なのは認める。でも、正直、彼は『危険な無邪気さ』を胸の中に抱えていると思う。私も人間が完璧に出来ているわけじゃない。でも、これから彼の教育、どうしていこうかなぁとあれこれ思いを巡らせていると、三木ちゃんが席をゆっくりと立って。
「先輩、そろそろ昼休み終わっちゃいますよ?戻りましょ~」
ふわり、と、三木ちゃんの明るい髪が揺らめいていく。
(……とりあえず、三木ちゃんに笑顔が戻ったことにすごく安心する…)
彼女の明るさに、ずっとずっと助けられてきた。彼女が小林くんに合コンの話をもちかけられて、私も一緒に参加出来ないのかと言ってくれたからこそ、私は智と出会えた。そうして、何気ない毎日が幸せだ、と思えている。
だからこそ。彼女が過ごす日々が幸せであれば、と、本心からそう願っている。
「せんぱ~い?新作クッキー、もう1個買って帰りませんか?すっごく美味しかったからもうひとつ食べたくなっちゃいました!」
三木ちゃんがにこにことした笑いながら私に視線を向けてくれる。その笑顔につられて、私も笑みが零れた。
「そうね、すごく美味しかったもの。桜の味だし、きっと無くなったら食べられなくなっちゃうと思うわ?」
美味しかったこのクッキーを智に持って帰ってあげたい、と思っていた。だから、三木ちゃんがもうひとつ買おうと提案してくれたのはありがたかった。
そうして私たちはレジに並び、クッキーを購入してカフェを後にする。ふたたび他愛のない話をしながらオフィスビルのエントランスでエレベーターを待った。
しばらくするとエレベーターが1階に到着し、3人で乗り込む。通関部のフロアがある階のボタンを三木ちゃんが押しているのを横目で確認して、不意に思い出したことがあって。思わずあっと声をあげた。
「私、帰省届けださないと」
極東商社では帰省する際に届けを出すと、いろいろと福利厚生が受けられる。旅行会社経由で航空機の予約が安く取れたり、全国チェーン店のホテルの料金やレンタカー料金の割引きが受けられたりと様々。複数の福利厚生を同時には受けられないが、どれかひとつを選択して利用することができる。
今回は智も一緒に私の実家に帰省することになっているから、福利厚生を利用して空港の近くにあるお店でレンタカーを借りることにした。いつもの帰省のように空港までお父さんに迎えに来てもらってもいいのだけれど、帰省中は智に私の地元を見て欲しいから。いろいろと動き回れるようにレンタカーを借りるという選択をしたのだ。
チン、と軽い音がして、通関部のフロアに到着したことを知らせてくれる。
「そっか、主任、今度のゴールデンウィークって帰省されるんでしたっけ」
加藤さんがエレベーターの『開』ボタンを押しながら、私に「お先にどうぞ」という視線を向けた。その好意に甘えて、先に降りるね、と加藤さんに軽く頭をさげる。
「うん、そうなの。みんなにお土産買って来るからね」
くるり、とその場で身体を反転させ、エレベーターから降りたばかりの加藤さんと三木ちゃんに視線を合わせた。
「と、いうわけで、私ちょっと総務部に行ってからフロアに戻るね」
後輩たちにひらひらと手を振って、エレベーターホールの奥の螺旋階段に繋がる扉に手をかけ扉を開いていく。総務部のブースは1階上だ。再びエレベーターを待つよりは階段を登った方が早い。
ギイ、と蝶番が軋む音が響いた。手すりにつかまりながら、コンコンとヒールの音を鳴らして螺旋階段を登りあがる。
総務部のブースに顔を出して、申請書を受け取りその場で必要事項を記入していると、私を呼ぶ声がして。
「一瀬主任、ちょうどよかった。これ、通関部に持っていっていただけませんか」
そう口にしながら、総務部所属の佐川くんが私にクリアファイルを手渡してくる。佐川くんは去年の新入社員で、小林くんや徳永さんの同期にあたる子だ。
「今年の役員懇談会実行委員会の資料です。新入社員枠で通関部に配属されたふたりのどちらかを推薦していただきたくて」
「あれ、もうそんな時期だっけ」
差し出されたクリアファイルを受け取りながら、佐川くんに視線を合わせる。昨年は新入社員が少なかったこともあって、昨年配属された小林くんと徳永さんふたりが駆り出されることになったことを思い出した。
今年は昨年の倍の人数、新入社員が入社している。だから南里くんと加藤さんのどちらかを推薦して欲しい、という話になったのだろう。
(まぁ、順当にいけば加藤さんかなぁ……)
彼女は極東商社で初の新入社員での女性総合職だ。彼女にとってはプレッシャーだろうけれども、ある種、注目されている新入社員。田邉部長は恐らく加藤さんを推薦するだろうなと予想が着く。ぼんやりと思考を飛ばしていると、目の前の佐川くんが申し訳なさそうに苦笑した。
「はい。今年は会場の都合がつかず、結局9月29日の金曜日に開催することになりまして」
「そうなの!?」
9月は30日までしかない。29日が金曜日ということは、9月の最終営業日が29日になるはず。そこに被るとは思っていなくて、思わず悲鳴じみた声があがる。
しかも29日は半期決算の日だ。本決算ほどではないとは言え、猫の手も借りたいくらい忙しいはず。そんな日に、加藤さんが実行委員として1日中不在となって通常業務から抜けてしまうのはかなりの痛手。
あげく、その1週間後が通関士の試験日。いろいろと切羽詰まっている時期に被ってしまう。
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