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オルレードという国
しおりを挟む面積450平方キロメートル、人口推測約30万。
丁度、日本の種子島と同じくらいの国土を持つオルレード帝国がこの現代世界に"突然"現れて十五年が経った。
現在、帝国と名乗る国は存在しない。
つまり、オルレード帝国は現代世界ではない、別の――異世界の国という認識が普通になっている。
そんな馬鹿げた話が何故罷り通ったのか。それはオルレード帝国が文字通り"突然"この世界に出現したからだった。
ことの起こりは十五年前。インド洋に突然島が現れた。それも、日本列島に沢山存在する無人島のような小さな島ではない。鬱蒼とした大樹に囲まれた大きな島だった。
当然のことながら今までそこに島と呼ばれるような陸地は無く、世界は驚愕した。世の中の当たり前が最も簡単に崩れ去った瞬間でもあった。
日本時間では丁度夜間だった為か、出現してすぐには公には騒ぎにならなかったが、早朝からのニュースはその話で持ちきりとなった。
各国の船が危険を伴わないであろうギリギリのラインまで近づき、そこから撮影された不明瞭な映像が何回も繰り返し流れた。大した最新情報もないのに、現地周辺の島にレポーターが派遣され、何度も何度も同じ文面を読み上げる中継が続いた。
番組の中では専門家による考察があり、火山による海底の隆起や未発見の土地の可能性を指摘していたが、どれもイマイチ信ぴょう性に欠けるものばかりだった。
そして、その低い信ぴょう性を更に低くする出来事があった。
先んじて調査に向かった調査隊から、そこでとんでもないものを目撃したという情報が入ったからだった。
突如出現したそのしまには文明があった。つまり人間が生活していたのだ。
それもかなり高度な――現代のような最先端の社会ではないが、決して石器時代にタイムスリップしたような生活ではない、独自の進化を遂げた文化だった。
そんな文明を持った、まるで国として機能しているような島が、今まで発見されずにいた可能性は極めて低い。では火山の隆起かと言われれば、既に文明が成り立っている所を見ると、こちらの方が可能性が低いことになる。
あらゆる可能性を考えても、突然出現した、と表現する他ない状況に世界は混乱した。
更に厄介だったのが、この島が出現した場所にあった。
インド、スリランカの南方、インドネシアの西にあたるインド洋、つまり、どこの国の領土でもない公海だったのだ。
公海となると、どこの国も手出しは出来ない。更に既に人間が生活している土地への接触は非常にデリケートで、有り体に言ってしまえば、世界は扱いに困った。
しかし、地球上に存在するものとして宙に浮かせたままにして置くわけにもいかない。
そこで世界はオルレード帝国を準国家という新しい枠組みに入れ、時間をかけて探りを入れていくことにした。
幸い、言語に関してはオルレード帝国の『ある力』のお陰でどうにかなったようだが、一般人に詳細は一切公表されていない。その内、謎の力に関するオカルトじみた都市伝説が囁かれ始め、オルレード帝国は謎多き国として認知された。
そんな未知との遭遇のようなやり取りも十年以上経てば事態は進展する。
今現在もほぼ鎖国をしているような状態のオルレード帝国だったが、一応準国家として世界に馴染み始めた。少ないながらも交易のやり取りがあり、厳しい審査を通れば少数の外国人の入国も許可された。
世間の認識が、未知で危険な島国から、神秘的で平穏な島と徐々に認識が変わり始めた頃、この不思議な国家と友好な関係を結びたいと考えた始めた各国をきっかけに、この話は持ち上がった。
そして、ただの大学生だった俺――崎須賀 明世(さきすか あきせ)はまんまとその話に巻き込まれてしまったのだった。
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