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天使様と里帰り
第67話 女子二人の暴走
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自分で敵を探索したいと考えたネーヴェだが、シエロの大反対を受けて諦めざるをえなかった。なんで女王になってしまったのだろうと、恨めしく思う。只の女性であっても止められただろうことは、棚上げにして。
「必ずや、敵の拠点を見つけて参ります!」
傭兵団と数人の騎士からなる部隊を編成し、鳥の案内に従うよう言い含め、雪積砦から送り出した。
鳥は天使の遣いともされている。
聖なる力に鼓舞されているのだと、司教のシエロがもったいぶって言うと、まるで本当のように聞こえる。そして満更、嘘でもない。
今度こそ成功すると信じ、彼らは危険な場所に旅立った。
「……」
その晩、ネーヴェは月を見上げて、送り出した者たちの無事を祈っていた。
クラヴィーア伯爵の居城、山羊城は斜面に立っている。ネーヴェのいる部屋の窓からは、山あいに築かれた城壁、雪積砦がよく見えた。クラヴィーア伯爵は代々、見晴らしの良い山羊城から砦を見張ってきたのだ。
窓を開けていると、風に乗って、白い羽が飛んでくる。
「シエロ様……?」
「残念。私だよ」
逆さまで顔を見せたのは、アウラの天使セラフィだ。
彼女は、何か企んでいるような笑顔で言ってきた。
「敵が気になるんでしょう。私が連れていってあげようか」
魅力的な誘いだった。
ネーヴェは少し心動いたが、慌てて首を横に振る。
「その手には乗りませんわよ。セラフィ様は、私が邪魔かもしれませんが、私はフォレスタ国民から必要とされているのです」
同じシエロを慕う女性として、恋敵に意地悪しようとしているセラフィの意図を見抜き、提案を辞退する。
しかし、セラフィは「本当に良いのかしら」と笑った。
「ラルクシエルは、きっと単独行動しようとする。あなたが安全な場所にいれば、自分は国外に出ても大丈夫って。だけど、あなたが国外に出たら、彼は国内に留まらざるをえない。王と天使の両方が命を失ったら国は終わりだもの」
「……」
「不死の兵士というのが本当なら、天使の領分だわ。普通の人間では、どうしようもない」
ネーヴェは、セラフィの指摘に思い当たる節があって沈黙する。
最初に出会った時も、シエロは尊い天使様の癖に自ら畑を耕していた。その彼が、不死の兵士の拠点と聞いて、自分で調べに行かない訳がない。
「セラフィ様は、私を敵の前に放り出すつもりですか」
「まさか。私は仮にも天使よ。人間を傷付けるつもりはない。あなたのことは守る。ただ、ちょっと、あなたとラルクシエルを引き離したいだけ」
清々しいまでに素直なセラフィに、ネーヴェは少し感心する。
そして、提案について前向きに考えた。
「……敵が魔物だった場合、対応できるのは天使様だけですわよね?」
「ええ、そうよ」
シエロ様を危険な目に合わせたくないわ。
ネーヴェの知らないところで、シエロに命を賭けさせるくらいなら。
「セラフィ様、共に参りましょうか」
「そうこなくっちゃ!」
女子二人で意気投合した。
ネーヴェは、セラフィに抱えてもらい山羊城から脱出すると、先日ルイに教えてもらった召喚の魔方陣を地面に描き、神鳥グリンカムビを喚び出す。
『ネーヴェ、我を呼んだか?』
「はい。お力を貸して下さい、グリン様」
今回はネーヴェ一人なので、鞍《くら》無しでも大丈夫だろう。
ネーヴェは、グリンカムビのふさふさの羽毛に埋もれるように、巨大鶏の背中によじ登った。
セラフィに運んでもらうと彼女に負担を強いるので、召喚獣に乗せてもらった方が、お互い楽だ。
「先遣隊は、どこでしょうか」
「私に任せて。……この近くの森で、クラヴィーアの兵士たちが、襲われている気配がする」
「すぐに救援に参りましょう、グリン様、セラフィ様!」
白い翼を広げ、セラフィが流星のように飛ぶのを、グリンカムビが追って飛んで行く。
ちょうどその時、夜営していたクラヴィーアの先遣部隊は、敵に襲われていた。
「しまった。取り囲まれたぞ」
「このままでは、全滅だ!」
窮地に陥っていたところを、空から金の巨大鶏が降ってきて敵を押し潰す。
「あなたたち、大丈夫ですか」
「女王陛下?!」
彼らは、謎の神々しい巨大鶏と、その背中から降りてきて百発百中の矢で敵を撃退する女王陛下に、たいそう驚いた。
ネーヴェの、奇跡を起こす女王伝説が始まった瞬間である。
「必ずや、敵の拠点を見つけて参ります!」
傭兵団と数人の騎士からなる部隊を編成し、鳥の案内に従うよう言い含め、雪積砦から送り出した。
鳥は天使の遣いともされている。
聖なる力に鼓舞されているのだと、司教のシエロがもったいぶって言うと、まるで本当のように聞こえる。そして満更、嘘でもない。
今度こそ成功すると信じ、彼らは危険な場所に旅立った。
「……」
その晩、ネーヴェは月を見上げて、送り出した者たちの無事を祈っていた。
クラヴィーア伯爵の居城、山羊城は斜面に立っている。ネーヴェのいる部屋の窓からは、山あいに築かれた城壁、雪積砦がよく見えた。クラヴィーア伯爵は代々、見晴らしの良い山羊城から砦を見張ってきたのだ。
窓を開けていると、風に乗って、白い羽が飛んでくる。
「シエロ様……?」
「残念。私だよ」
逆さまで顔を見せたのは、アウラの天使セラフィだ。
彼女は、何か企んでいるような笑顔で言ってきた。
「敵が気になるんでしょう。私が連れていってあげようか」
魅力的な誘いだった。
ネーヴェは少し心動いたが、慌てて首を横に振る。
「その手には乗りませんわよ。セラフィ様は、私が邪魔かもしれませんが、私はフォレスタ国民から必要とされているのです」
同じシエロを慕う女性として、恋敵に意地悪しようとしているセラフィの意図を見抜き、提案を辞退する。
しかし、セラフィは「本当に良いのかしら」と笑った。
「ラルクシエルは、きっと単独行動しようとする。あなたが安全な場所にいれば、自分は国外に出ても大丈夫って。だけど、あなたが国外に出たら、彼は国内に留まらざるをえない。王と天使の両方が命を失ったら国は終わりだもの」
「……」
「不死の兵士というのが本当なら、天使の領分だわ。普通の人間では、どうしようもない」
ネーヴェは、セラフィの指摘に思い当たる節があって沈黙する。
最初に出会った時も、シエロは尊い天使様の癖に自ら畑を耕していた。その彼が、不死の兵士の拠点と聞いて、自分で調べに行かない訳がない。
「セラフィ様は、私を敵の前に放り出すつもりですか」
「まさか。私は仮にも天使よ。人間を傷付けるつもりはない。あなたのことは守る。ただ、ちょっと、あなたとラルクシエルを引き離したいだけ」
清々しいまでに素直なセラフィに、ネーヴェは少し感心する。
そして、提案について前向きに考えた。
「……敵が魔物だった場合、対応できるのは天使様だけですわよね?」
「ええ、そうよ」
シエロ様を危険な目に合わせたくないわ。
ネーヴェの知らないところで、シエロに命を賭けさせるくらいなら。
「セラフィ様、共に参りましょうか」
「そうこなくっちゃ!」
女子二人で意気投合した。
ネーヴェは、セラフィに抱えてもらい山羊城から脱出すると、先日ルイに教えてもらった召喚の魔方陣を地面に描き、神鳥グリンカムビを喚び出す。
『ネーヴェ、我を呼んだか?』
「はい。お力を貸して下さい、グリン様」
今回はネーヴェ一人なので、鞍《くら》無しでも大丈夫だろう。
ネーヴェは、グリンカムビのふさふさの羽毛に埋もれるように、巨大鶏の背中によじ登った。
セラフィに運んでもらうと彼女に負担を強いるので、召喚獣に乗せてもらった方が、お互い楽だ。
「先遣隊は、どこでしょうか」
「私に任せて。……この近くの森で、クラヴィーアの兵士たちが、襲われている気配がする」
「すぐに救援に参りましょう、グリン様、セラフィ様!」
白い翼を広げ、セラフィが流星のように飛ぶのを、グリンカムビが追って飛んで行く。
ちょうどその時、夜営していたクラヴィーアの先遣部隊は、敵に襲われていた。
「しまった。取り囲まれたぞ」
「このままでは、全滅だ!」
窮地に陥っていたところを、空から金の巨大鶏が降ってきて敵を押し潰す。
「あなたたち、大丈夫ですか」
「女王陛下?!」
彼らは、謎の神々しい巨大鶏と、その背中から降りてきて百発百中の矢で敵を撃退する女王陛下に、たいそう驚いた。
ネーヴェの、奇跡を起こす女王伝説が始まった瞬間である。
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