実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~

空色蜻蛉

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願いが叶う島

Side: シエロ 非常食の差し入れ

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 ミスタリア島の天山は、生命樹のある異空間が重なった不思議な場所だ。霧の中を進み生命樹の枝を登っていくと、上層世界に辿り着く。上層世界は失われた神秘が残る天空の島で、太陽神の遺産もそこに眠っている。
 テオと雄鶏を連れて生命樹の枝に飛び移ったシエロだが、ネーヴェのいる場所に行くことはできなかった。

「ルシエルの奴、俺が近付けないよう、ネーヴェのいる空間を封じてやがる!」
 
 腹立たしくて幹を蹴った。

「シエロ様、言葉遣いが乱れてますよ。ネーヴェ様に見られたら、なんと言われるか」
 
 どうどうと、テオになだめられた。

「俺は元から行儀の良い天使ではない」
「宝座の天使を呼び捨てるのは、あなたくらいでしょうね」

 本人が気にしていないのだから、別に良いのではないかとシエロは思う。
 帝国を出奔して、自分の国で好き気ままにやってきた。宝座の天使だろうが頭を下げるつもりはない。
 しかし、相手は最高位の天使だけあり、技術では勝てない。
 封印の解錠は、できそうになかった。
 丸一日、苦手な天使の魔法に向き合って、さしものシエロも疲労の色が隠せない。

「いっそのこと、上層から神剣でも持ってきて、封印ごと切り払ってやろうか」
「物騒なことは止めて下さい。他の天使様に声を掛けて、協力いただけないか聞いてみます」
「頼む」

 途中まで封印の解析を手伝ってくれていたテオは、これはらちが明かないと気付き、生命樹を下って助けを呼んでくると言う。
 身軽な物腰で下っていくテオを見送った後、シエロは我関せぬ様子で地面を突いている雄鶏に目を移した。

「待てよ。動物は出入り制限の対象外だったな⋯⋯」
『俺っちを掴むときは、優しくしてくれ、天使のオス!』

 片手で鷲掴みにすると、雄鶏が慌ててバタついた。

「こいつはネーヴェの非常食にいいだろう」
『せめて話し相手って言って! って、乱暴に投げるな!』
 
 抵抗する雄鶏を、ネーヴェのいる空間に放り込んだ。
 先程から足元をうろちょろして踏みそうだったから、文字通り一石二鳥だ。

「無事でいてくれ」

 シエロは梢を見上げ、ネーヴェの無事を祈る。
 天使は人間を傷付けられない。
 しかし、神海の天使は浮世離れしており、人間の生活にうとい。故意ではなく、うっかり人間を怪我させてしまう可能性はある。
 話の通じない長老連中を思い浮かべ、シエロは焦燥に胸が焦げ付くようだった。
 早く彼女の無事を確かめたい。
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