異世界で世界樹の精霊と呼ばれてます

空色蜻蛉

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(第二部)第五章 君に贈る花束

11 繋がる世界

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 樹はソフィーを連れて、エターニアの王都ツェンベルンに通じるゲートをくぐった。
 地上に出た樹は、陽の光の眩しさに目を細めた。
 城の周囲や街は花であふれ、風に乗って花びらが乱舞している。

「あれ? ちょっとやりすぎたかな」

 樹は魔晶石から人々を解放するだけのつもりだった。
 しかしそこら中、花畑になってしまった光景を見渡し、思わぬ副産物に冷や汗を流す。
 生命力を活性化させすぎた影響で、また変な生き物が誕生していなければ良いのだが。

「あ、樹君、戻ってきた!」

 樹とソフィーは、城の階段を降りて中庭に出た。
 すると二人の姿に気付いて、結菜が走り寄ってくる。

「皆、石から解放されて喜んでるよ。樹君のおかげでしょ」
「いや僕は」
「イツキがぱーっとしてキラキラーって魔法を使ってました!」

 ソフィーが横から会話に割り込む。
 擬音語が多すぎて詳細が分からないのに、樹が魔法を使って元に戻した意味は伝わる。
 何か猛烈に恥ずかしくなって樹は頭を抱えた。

「うう……ソフィーの説明が阿呆すぎる」
「ま、まあ樹君、お疲れ様ってことで」

 結菜が苦笑いしてフォローする。
 彼女は服のポケットから折り畳んだ封筒を取り出した。

「はい。弟君から手紙だよ」
青葉アオバから?」

 樹は手渡された封筒から手紙を取り出す。
 白い素っ気ない便箋には、彼の知る弟の荒いようでいて几帳面な文字が綴られていた。


 
 クソ兄貴、元気かよ。

 よくもまあ、俺に全部押し付けて高飛びしやがったな。
 異世界だのなんだの、母さんも父さんも目を回して倒れそうになってるぞ。おまけになんだ、異世界に彼女できたって?
 ふざけんな! 爆発しろ!
 あー、言いたいこと書いてすっきりした。
 出来た弟の俺様が、とりあえず母さんと父さんを説得しておいてやったから。後で異世界のお土産とか、お土産とか、お土産とか頼む。
 兄貴の友達についても、父さんが手を回してるみたいだぞ。そっちは俺はよく知らんけど。

 最後に伝言。
 年末年始くらいは帰って来い、だって。
 あと彼女連れて来い。

 以上!



 予想以上に破天荒な文章に、樹は吹き出した。
 ブリブリ怒って生意気なことを言うが、結局言うことを聞いてくれる可愛い弟の姿が思い浮かぶ。
 帰る場所がある。
 それは樹をほっと安心させた。
 
「これで大手を振って異世界を行き来できるな」

 手紙を畳ながら樹は明るい気持ちで言う。
 結菜は苦笑した。

「ほんと、樹君って変わってるよね。普通は親に黙っていくか、地球のことなんてどうでもいいって割り切るでしょうに」
「いつでも好きな場所に行って、好きな事ができる方がいいじゃないか。異世界と日本で行き来できるようになったほうが面白くないか?」

 面白いことは正義だ、そう言って笑うと、樹はソフィーの方を向いた。
 話についていけない彼女は途中から黙ったままだ。

「ソフィー。また一緒に地球に来るか? 今度は僕の家にお泊まりさせてやるよ」
「う、嬉しいですが何だか嫌な予感」

 僕の家、という言葉で、樹の両親と引き合わされるのを何となく感じたソフィーはウサギ耳をピンと立てて震えた。
 
「気のせい気のせい。いじめられたりしないから」
「それってイツキの世界で言う、ふらぐですよね?!」

 震えるウサギ耳を樹がつまんで笑う。
 二人を囲む花畑に風が吹いて、無数の花びらが浮かび上がった。
 小さな精霊達が花びらと共に樹の周囲を舞い踊る。
 花は、涙目で抗議するエルフの少女の金髪にそっと寄り添った。





 ◇◇◇





 樹のやり過ぎた生命力配布により、世界中に花が咲いて、魔晶石が全て無くなってしまった。
 勿論、もう一度作ることも可能なのだが、エターニアのカノン王が捕らえられたことにより、魔晶石作りは下火となる。
 往生際の悪いカノン王は脱走し、樹や英司の手を煩わせたりもするのだが、それはまた別の話だ。
 エターニアの王位は空となり、新王の候補としてアルファードの名前が上がった。
 これが後に「精霊に愛されし者」と呼ばれる王の治世の始まりとなる。
 精霊に祝福された地となったエターニアは、その名前の由来通り永く繁栄することになった。


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