ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉

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学院編

07 売られた喧嘩は買います

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 カズオミは武術の授業に向かう道中、アサヒにクラス合同授業について教えてくれた。

「僕らは二等級ラーナの人達の技の練習台なんだ。教えるとか練習とかないよ。転ばされるだけ」

 身分の差から三等級は上級クラスの貴族を本気で殴って怪我をさせる訳にはいかず、基本的に魔術や武術も二等級の方が強いので、一方的な展開になるのだそうだ。
 午後、武器を持ってくるように言われて、アサヒはセイランにもらった細身の剣を手に問題の授業に参加した。

「二等級の私達が相手をしてやってるのだ。光栄に思え!」

 カズオミの言う通り、二等級の生徒達は偉そうで三等級の生徒はおどおどしており、勝負にならない。
 実際、技術にも差がある。
 セイランに剣を習ったアサヒにしても、一年程度の剣術で数年以上剣術をやってきた貴族に勝つのは無理だ。
 早々にあきらめて受け身を取ることにした。

「ん?」

 適当に相手の生徒の攻撃を避けて、痛くなさそうな攻撃はわざと食らってその場をしのいでいたアサヒは、同室の友人はどうしているのかと見回して顔をしかめた。

「止めてくれ! 降参だって言ってるのにっ」
「まだ大丈夫だろう、ほら!」

 カズオミは槍を持った二等級の生徒に小突き回されている。
 相手の二等級は明らかに遊び半分で、降参だというカズオミをなぶっていた。周囲の生徒や教師は見てみぬふりをしている。

「分不相応な剣を持ってるな……金だけはあるのか、この売国奴め!」
「あ!」

 戦えない、と言った本人の弁通り、カズオミは剣を持っていたがアサヒから見ても全然かたちになっていなかった。
 二等級の生徒の槍にはねあげられて剣が空に舞う。
 武器を取り落としたカズオミを二等級の生徒はせせら笑った。

「僕は売国奴なんかじゃ」
「商人は国を売る連中だ。他の国と取引して金さえもらえれば何でもする汚い奴らだ! ピクシスが負けたのもお前らのせいだ!」

 アサヒからすれば言いがかりも良いところの理屈だが、周囲の生徒達はおおむね同意見らしい。
 二等級の生徒の槍が尻餅を付いているカズオミをしつように狙う。地面を這って逃げようとする彼を、二等級の生徒達は嘲笑した。
 ……やりすぎだろ。

「仕方ないな」
「えっ?」

 アサヒは力強く踏み込むと、今相手をしている二等級の生徒の剣を叩き落とす。技術は向こうが上なのだが、隙を突けば何とでもなる。
 邪魔な目の前の相手を片付けると、無詠唱の金色の炎を3つ呼び出し、その内の1つをカズオミをなぶっている生徒の槍を持つ手に叩きつけた。

「なんだと?!」
「おい、あいつ今、詠唱なしで……」

 周囲の生徒達がざわめく。
 槍を持った二等級の生徒は、炎が当たった手を抑えながら振り返った。何かの魔術で防御したらしく、その手に火傷など傷を負った様子はない。

「貴様……!」
「すいません、そいつとは友人なので。見ていられなくて」

 アサヒに友人と言われたカズオミは、目を丸くしている。
 二等級の生徒はアサヒを見て狂暴な笑みを浮かべた。

「友人か……なら、こいつの代わりをしろ」
「ぶっ」

 アサヒはその二等級の生徒の顔を見て吹き出した。
 その生徒はピクシス人に多い赤毛に茶色い目の青年だったが、明るい赤毛の眉は重力に反して上に向かってくるりと逆巻いていた。

「くるりん眉毛……」
「黙れ貴様! 叩き潰してやる!」
「あわわわ」

 くるりん眉毛は激昂し、カズオミは慌てる。
 その手の中の槍に炎が宿った。どうやら彼も無詠唱で炎が使えるらしい。
 怒りのまま飛び込んでくるくるりん眉毛を、アサヒは冷静に迎え撃った。

 アサヒが今、同時に放てる炎の弾は3つまで。炎の球は分裂させるほど威力が下がる。しかも3つの内の1つは先ほど使ってしまった。

 可能であれば以前トウマとの戦いでしたように、炎の1つを相手の背後に回り込ませたい。しかし今回は、相手の踏み込みが予想外に速くて間に合いそうになかった。
 で、あれば。

 残る2つの炎を槍の横に叩きつけ、槍の軌道をわずかにずらす。
 狙いの中心から逸れた槍の刃に、剣を合わせた。
 激しい火花が散る。
 二人の武器は拮抗した。
 金色の炎で勢いを削がれた敵の槍と、渾身の力を込めたアサヒの剣はちょうど互角の力を持っていた。

「……三等級テラ風情が調子に乗るなっ!」

 くるりん眉毛の一喝いっかつと共に槍の炎が勢いを増す。
 受けきれないと判断したアサヒは、剣が押される勢いを利用して斜め後ろへ飛ぶ。
 身体に触れるか触れないかのところを、槍の切っ先が通り過ぎた。

「ちっ、ちょこまかと……!」
「何をやっている」

 勢いで、授業の枠を越えた戦いに突入していた二人を制止する声。
 その場にいる者達は冷たい水を浴びせられたように感じる。
 威厳に満ちた声の主は、修練場を通りかかったヒズミ・コノエだった。


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