自惚れ貴族と婚活メイド

一重

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5、メイドの言うことも一理あります

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麗らかな日差しに照らされる艶やかな肌は、本人の焦りゆえかうっすらと汗が浮いている。

 美しいラインを描く筋肉を伝い、きらきらと陽光を弾く汗が珠を結び流れ落ちていく。それを固唾を呑んで見つめるメイドたちから、誰かがごくりと喉を鳴らす音が妙に大きく聞こえた。

「……フリード様。ご自分の肉体美に酔いしれるのはサリュク様をお見送りしてからにしてくださいませ。無駄なポージングでメイド達の仕事が滞っております」

 冷静な一言に、メイド達ははっと己の職務を思い出す。焦ったように手元を無闇に動かす様をフリードは生暖かく見守りながら、同い年のメイド頭には呆れた視線を流した。

「僕が美しいのは周知の事実。今更この輝きを隠すことなんて不可能だ。ならいっそのこと最高の美を見せてあげたほうが彼女達のためというものだ。なのに、お前ときたら……」

 一向に悪びれる気配のないフリードはメイド達の手でみるみるうちに着替えを完了させられた。まるで見てはいけないものをなけなしの理性で覆い尽くしてしまうような彼女達の必死の形相も、フリードにとっては日常茶飯事の光景だ。
 それよりも問題なのは目の前に立つ同い年のメイド頭。
 地は悪くはないが良くもないといった平凡な顔立ちなのに、まるで自分を消すかのようにこげ茶の髪をひとつに括り、首元まできっちり締めたお決まりのメイド服を着るロレーヌは、使用人の鑑といっては差し支えないだろうが、フリードの美貌にちらとも心を動かされない稀有な人物である。
 数年前から下積みとして館入りした頃から変わらないその態度はいっそ天晴れともいえる。

「全く僕の美しさを理解していない!正常な感覚を持ち合わせている者なら、彼女達のような反応をするのが普通なんだ。それがお前は一向に賞賛の言葉を投げる気配すらない」
「何をおっしゃいますか。毎日申し上げておりますよ。”フリード様は世界一美しい””フリード様は美の化身””フリード様は美しすぎる罪な方”」
「ああああ!もう!お前のその一本調子で、いかにも億劫だといわんばかりの顔でそれを言われて喜ぶ僕だと思うのか!むしろ傷つく!何も言わないほうがましなくらいだ!」

 ぐしゃぐしゃと頭をかきむしりながらわめくフリードにも、ロレーヌは全く動じた様子もなく小さくため息をついた。

「……フリード様。言えば傷つくといわれ、言わなければ気が利かないとののしられる私の身にもなってください。そんなに褒め称えてほしいのなら、未来の奥様に頼まれることですね。さ、参りましょう。無駄な時間を食ってしまいました」

 そういうが早いか、ぱんぱんと手をたたくロレーヌに従い、フリードの周りを固めるメイドたちはその包囲網を狭めフリードの背を押す。

「ちょ、ま、待て。もう少し心の準備というものを……」
「冗談は寝ておっしゃってくださいませ」

 フリードのささやかな抵抗も、この若く優秀なメイド頭には歯牙にもかけられない。
 淡々と前を歩くロレーヌの後ろを女性に囲まれたフリードはすごすごと館へ向かって歩くしかなかった。
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