5 / 15
5、メイドの言うことも一理あります
しおりを挟む
麗らかな日差しに照らされる艶やかな肌は、本人の焦りゆえかうっすらと汗が浮いている。
美しいラインを描く筋肉を伝い、きらきらと陽光を弾く汗が珠を結び流れ落ちていく。それを固唾を呑んで見つめるメイドたちから、誰かがごくりと喉を鳴らす音が妙に大きく聞こえた。
「……フリード様。ご自分の肉体美に酔いしれるのはサリュク様をお見送りしてからにしてくださいませ。無駄なポージングでメイド達の仕事が滞っております」
冷静な一言に、メイド達ははっと己の職務を思い出す。焦ったように手元を無闇に動かす様をフリードは生暖かく見守りながら、同い年のメイド頭には呆れた視線を流した。
「僕が美しいのは周知の事実。今更この輝きを隠すことなんて不可能だ。ならいっそのこと最高の美を見せてあげたほうが彼女達のためというものだ。なのに、お前ときたら……」
一向に悪びれる気配のないフリードはメイド達の手でみるみるうちに着替えを完了させられた。まるで見てはいけないものをなけなしの理性で覆い尽くしてしまうような彼女達の必死の形相も、フリードにとっては日常茶飯事の光景だ。
それよりも問題なのは目の前に立つ同い年のメイド頭。
地は悪くはないが良くもないといった平凡な顔立ちなのに、まるで自分を消すかのようにこげ茶の髪をひとつに括り、首元まできっちり締めたお決まりのメイド服を着るロレーヌは、使用人の鑑といっては差し支えないだろうが、フリードの美貌にちらとも心を動かされない稀有な人物である。
数年前から下積みとして館入りした頃から変わらないその態度はいっそ天晴れともいえる。
「全く僕の美しさを理解していない!正常な感覚を持ち合わせている者なら、彼女達のような反応をするのが普通なんだ。それがお前は一向に賞賛の言葉を投げる気配すらない」
「何をおっしゃいますか。毎日申し上げておりますよ。”フリード様は世界一美しい””フリード様は美の化身””フリード様は美しすぎる罪な方”」
「ああああ!もう!お前のその一本調子で、いかにも億劫だといわんばかりの顔でそれを言われて喜ぶ僕だと思うのか!むしろ傷つく!何も言わないほうがましなくらいだ!」
ぐしゃぐしゃと頭をかきむしりながらわめくフリードにも、ロレーヌは全く動じた様子もなく小さくため息をついた。
「……フリード様。言えば傷つくといわれ、言わなければ気が利かないとののしられる私の身にもなってください。そんなに褒め称えてほしいのなら、未来の奥様に頼まれることですね。さ、参りましょう。無駄な時間を食ってしまいました」
そういうが早いか、ぱんぱんと手をたたくロレーヌに従い、フリードの周りを固めるメイドたちはその包囲網を狭めフリードの背を押す。
「ちょ、ま、待て。もう少し心の準備というものを……」
「冗談は寝ておっしゃってくださいませ」
フリードのささやかな抵抗も、この若く優秀なメイド頭には歯牙にもかけられない。
淡々と前を歩くロレーヌの後ろを女性に囲まれたフリードはすごすごと館へ向かって歩くしかなかった。
美しいラインを描く筋肉を伝い、きらきらと陽光を弾く汗が珠を結び流れ落ちていく。それを固唾を呑んで見つめるメイドたちから、誰かがごくりと喉を鳴らす音が妙に大きく聞こえた。
「……フリード様。ご自分の肉体美に酔いしれるのはサリュク様をお見送りしてからにしてくださいませ。無駄なポージングでメイド達の仕事が滞っております」
冷静な一言に、メイド達ははっと己の職務を思い出す。焦ったように手元を無闇に動かす様をフリードは生暖かく見守りながら、同い年のメイド頭には呆れた視線を流した。
「僕が美しいのは周知の事実。今更この輝きを隠すことなんて不可能だ。ならいっそのこと最高の美を見せてあげたほうが彼女達のためというものだ。なのに、お前ときたら……」
一向に悪びれる気配のないフリードはメイド達の手でみるみるうちに着替えを完了させられた。まるで見てはいけないものをなけなしの理性で覆い尽くしてしまうような彼女達の必死の形相も、フリードにとっては日常茶飯事の光景だ。
それよりも問題なのは目の前に立つ同い年のメイド頭。
地は悪くはないが良くもないといった平凡な顔立ちなのに、まるで自分を消すかのようにこげ茶の髪をひとつに括り、首元まできっちり締めたお決まりのメイド服を着るロレーヌは、使用人の鑑といっては差し支えないだろうが、フリードの美貌にちらとも心を動かされない稀有な人物である。
数年前から下積みとして館入りした頃から変わらないその態度はいっそ天晴れともいえる。
「全く僕の美しさを理解していない!正常な感覚を持ち合わせている者なら、彼女達のような反応をするのが普通なんだ。それがお前は一向に賞賛の言葉を投げる気配すらない」
「何をおっしゃいますか。毎日申し上げておりますよ。”フリード様は世界一美しい””フリード様は美の化身””フリード様は美しすぎる罪な方”」
「ああああ!もう!お前のその一本調子で、いかにも億劫だといわんばかりの顔でそれを言われて喜ぶ僕だと思うのか!むしろ傷つく!何も言わないほうがましなくらいだ!」
ぐしゃぐしゃと頭をかきむしりながらわめくフリードにも、ロレーヌは全く動じた様子もなく小さくため息をついた。
「……フリード様。言えば傷つくといわれ、言わなければ気が利かないとののしられる私の身にもなってください。そんなに褒め称えてほしいのなら、未来の奥様に頼まれることですね。さ、参りましょう。無駄な時間を食ってしまいました」
そういうが早いか、ぱんぱんと手をたたくロレーヌに従い、フリードの周りを固めるメイドたちはその包囲網を狭めフリードの背を押す。
「ちょ、ま、待て。もう少し心の準備というものを……」
「冗談は寝ておっしゃってくださいませ」
フリードのささやかな抵抗も、この若く優秀なメイド頭には歯牙にもかけられない。
淡々と前を歩くロレーヌの後ろを女性に囲まれたフリードはすごすごと館へ向かって歩くしかなかった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
幼馴染の許嫁
山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。
彼は、私の許嫁だ。
___あの日までは
その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった
連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった
連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった
女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース
誰が見ても、愛らしいと思う子だった。
それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡
どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服
どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう
「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」
可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる
「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」
例のってことは、前から私のことを話していたのか。
それだけでも、ショックだった。
その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした
「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」
頭を殴られた感覚だった。
いや、それ以上だったかもしれない。
「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」
受け入れたくない。
けど、これが連の本心なんだ。
受け入れるしかない
一つだけ、わかったことがある
私は、連に
「許嫁、やめますっ」
選ばれなかったんだ…
八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる