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1章『自分の姿決め編』
『勧誘』
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団長との戦闘が終わり、食堂へとやって来たスライム(仮名)。
「あっ、おばちゃん、パンとスープ頂戴」
1日しか経っていないにも関わらず馴れ馴れしく話しかけると、5分くらいでどっちも出てきた。
現在は鷹の刻と呼ばれている、太陽が完全に沈んだ時刻である。騎士や泊まっている重鎮達は既に部屋に戻っており、食堂は俺とおばちゃんの2人しかいない。
と、異世界名物の固いパンではなく、日本の白パンとそう変わりの無いパンをコンソメスープのような具の無いスープに付けて食していると、後ろから何人か近寄って来るのが分かった。
(まぁでも、警備の交代時間なのかもしれないしな・・・)
警備の交代の時間帯には、数人の警備兵が、食堂に来て遅めの夕食を食べる。
しかし、そんな願いのような都合のいいことは起きず、声を掛けられた。
「君?スライム君で間違いないかい?」
「はい?そうですが・・・」
運極ではないにしろ常人より運が100倍程高いのに、面倒ごとに巻き込まれるとは考えにくいんだけどな・・・
そんなことを考えながら、手早くスープを飲み込み、身体を声の掛けられた男の方に向ける。
「良かった、悪いんだけど、ちょっと着いてきてくれるかい?」
「どうしてですか?」
唐突に投げ掛けられた言葉に少なからず驚きを覚えるスライム。
「えっとね・・・あ~もう!めんどくさいから言っちゃうけどね、実は王様に呼ばれていて、詳しくはわからないんだよ」
男の右斜め後ろに立っていた女の人が応える。
それを聞いてから数秒考え、一つ頷くと、ニッコリと笑った女の人に手を引っ張られ、時々転びそうになりながら、これからあるであろう緊張が近づいて来るのを感じるのであった。
──王族の部屋の前にて──
あ~緊張する~!王族だよ?王様だよ?敬語なんて最低限しか知らないし、不敬罪だっけ?で処刑とかされるのかなぁ・・・と言うか何で呼ばれたんだろう?
1人で中に入るのが怖くて色々なことが頭に浮かぶ。
が、俺の手を握っていた女の人(マリーと言うらしい)が扉を叩き、声を掛けてしまった。
「失礼致します、スライム君を連れてきました」
驚いてマリーの顔を見ると、ニッコリと返されてしまった。
「む、そうか、入室を許可する」
なかなか低い男の声が聞こえ、マリーが扉を開ける。
ちなみに声を掛けてきた男は途中で他の騎士に連れて行かれた。
「ほう、貴殿がスライムと呼ばれる者か」
どこか観察するような鋭い目を向ける王様。その目にちょっとドギマギしながら跪き、頭を下げる。
「はい、スライムと名乗らせていただいております」
「面を上げよ」
その言葉に頭を上げ、初めて部屋を意識する。
比較的簡素な部屋だ。中央には執務用の机があり、その前に縦に長机を挟んで焦げ茶色のソファがあり、床にはソファに比べて明るい茶色の絨毯が敷いてある。本棚や食器棚のような物もあるが、全くスペースをとっているようには感じない。
俺が入ってきた扉の両脇に、槍を持ち、腰に直剣を刺した赤い騎士鎧の男か女がいる。顔が見えない為分からないが・・・
机に座っている男が王様だろうと当たりを付け、観察する。
髭はそれなりに生えていて、頭部は電球の如く光り輝いている。冗談ではない。顔は柔和だが、目が鋭く、少し怖い。
王様の両脇に執事と思われる男と、メイドと思われる少女が立っている。
「そこに座り給え、少し話をしよう」
観察するような目を辞め、ソファへ促す。
どうしよう・・・頭が気になる・・・
「あっ、おばちゃん、パンとスープ頂戴」
1日しか経っていないにも関わらず馴れ馴れしく話しかけると、5分くらいでどっちも出てきた。
現在は鷹の刻と呼ばれている、太陽が完全に沈んだ時刻である。騎士や泊まっている重鎮達は既に部屋に戻っており、食堂は俺とおばちゃんの2人しかいない。
と、異世界名物の固いパンではなく、日本の白パンとそう変わりの無いパンをコンソメスープのような具の無いスープに付けて食していると、後ろから何人か近寄って来るのが分かった。
(まぁでも、警備の交代時間なのかもしれないしな・・・)
警備の交代の時間帯には、数人の警備兵が、食堂に来て遅めの夕食を食べる。
しかし、そんな願いのような都合のいいことは起きず、声を掛けられた。
「君?スライム君で間違いないかい?」
「はい?そうですが・・・」
運極ではないにしろ常人より運が100倍程高いのに、面倒ごとに巻き込まれるとは考えにくいんだけどな・・・
そんなことを考えながら、手早くスープを飲み込み、身体を声の掛けられた男の方に向ける。
「良かった、悪いんだけど、ちょっと着いてきてくれるかい?」
「どうしてですか?」
唐突に投げ掛けられた言葉に少なからず驚きを覚えるスライム。
「えっとね・・・あ~もう!めんどくさいから言っちゃうけどね、実は王様に呼ばれていて、詳しくはわからないんだよ」
男の右斜め後ろに立っていた女の人が応える。
それを聞いてから数秒考え、一つ頷くと、ニッコリと笑った女の人に手を引っ張られ、時々転びそうになりながら、これからあるであろう緊張が近づいて来るのを感じるのであった。
──王族の部屋の前にて──
あ~緊張する~!王族だよ?王様だよ?敬語なんて最低限しか知らないし、不敬罪だっけ?で処刑とかされるのかなぁ・・・と言うか何で呼ばれたんだろう?
1人で中に入るのが怖くて色々なことが頭に浮かぶ。
が、俺の手を握っていた女の人(マリーと言うらしい)が扉を叩き、声を掛けてしまった。
「失礼致します、スライム君を連れてきました」
驚いてマリーの顔を見ると、ニッコリと返されてしまった。
「む、そうか、入室を許可する」
なかなか低い男の声が聞こえ、マリーが扉を開ける。
ちなみに声を掛けてきた男は途中で他の騎士に連れて行かれた。
「ほう、貴殿がスライムと呼ばれる者か」
どこか観察するような鋭い目を向ける王様。その目にちょっとドギマギしながら跪き、頭を下げる。
「はい、スライムと名乗らせていただいております」
「面を上げよ」
その言葉に頭を上げ、初めて部屋を意識する。
比較的簡素な部屋だ。中央には執務用の机があり、その前に縦に長机を挟んで焦げ茶色のソファがあり、床にはソファに比べて明るい茶色の絨毯が敷いてある。本棚や食器棚のような物もあるが、全くスペースをとっているようには感じない。
俺が入ってきた扉の両脇に、槍を持ち、腰に直剣を刺した赤い騎士鎧の男か女がいる。顔が見えない為分からないが・・・
机に座っている男が王様だろうと当たりを付け、観察する。
髭はそれなりに生えていて、頭部は電球の如く光り輝いている。冗談ではない。顔は柔和だが、目が鋭く、少し怖い。
王様の両脇に執事と思われる男と、メイドと思われる少女が立っている。
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どうしよう・・・頭が気になる・・・
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