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プロローグ
0話『温かい夜』
しおりを挟む死にたい
そう、初めて思ったのは、いつだったろうか。
僕はイジメを受けていた。
男女20人位の、良くあるいじめっ子だ。
リーダーなんていなくて、皆が皆、1人のいじめっ子として君臨してた。
たまに5人くらいで来ては、服を脱がされ、エアガンを撃たれ、石を投げられ、髪を切られ、磔にされ、轢かれ、乗られ、蹴られ、押し付けられ、無視される。
そんな生活を、かれこれ小学4年生からやられ、現在の高校2年まで続いている。
そう言えば、知ってるかな。
口の中に画鋲を入れる。
それを殴る。
そうするとね、口の中がすっごく熱くなるんだ。
氷を当てても、裸で雪の中に捨てられても、爪を剥がしても、目にタバスコを入れても、何をしても無くならない熱さなんだ。
でもさ、そんな事些細な事だよね?
平和に生きている『人間』には、その痛み、熱さ、悔しさなんて分からないよね?
分かるなんて言わせない。
半端な慰めも、いらない。
そう言っているのに、誰も聞いてくれない。
ほっといてくれない。
わざわざ僕のところまで来ては殴り、蹴り、嗤う。
心理ケア?大人に相談しろ?大丈夫?安心しろ?守ってやる?どうにかする?
辞めてくれよ。まるで・・・余計なお節介をかいてる偽善者野郎じゃないか。
関係ないんだけどさ。バスとか電車とか、老人に席を譲れって言う中年やら正義の味方君とかいるじゃん。
言われた方はいい迷惑だよね。
『なんで俺?』って顔してる人をよく見るよ。
悪いんだけどさ。こう考えてみてくれよ。
図書館とかでさ、席が後1席だとするじゃん、新しく2人の高校生と老人が2人入ってきたとする。
高校生が先に座るけど周りは忙しくて見てない。
老人がオロオロしてると、横の席から『君、老人がいるんだぞ、席をどきたまえ』と、自分が言われたとする。
その時の自分は風邪気味でマスクしている。小さい咳もしていて、言ってきた正義の味方君はピンピンしている。
これで譲るの?
いやね、別に言うだけなら悪くないかもしれない。
偽善大いに結構。
たださ、自分の正義?善意?を押し付けるのは良くないと思うんだよね。
言ってきたのがその老人ならまぁ譲るかもしれない。目立ちたくないしね。
話がズレすぎたね。
話を戻すけど、いじめっ子にイジメる理由を聞いたことがあるんだよ。
「は?虐める理由?何言ってんだよ、お前が1人で寂しそうにしてるから構ってやってんだろうが」
その時はもう放心状態に陥ったよ。
だってさ、悪い事だと思ってないんだよ?
というか助けてるとか思ってんだよ?
どんな脳みそしてんのかって思ったよ。言ったらどうなるか分からないから言わないけど。
えっ?こんな話題じゃなかったって?ごめんごめん、懐かしくってさ。
えっーと・・・あぁ偽善者の話か。
うーん・・・結果から言うと、僕は今までで10回は自殺しようとしてる。
1番最初に殺ったのが、焼身自殺。ガソリンを体にかけた所で見つかって失敗。匂いで分かったらしい。
2番目が溺れようとしたのかな?川に飛び込んだけど、救助されて失敗。
3番目が手首を切って自殺、同棲している叔父に見つかって失敗。
4番目が遭難して首吊り。登山者に見つかって救出。また死ねなかった。
5番目が飛び降り自殺。途中の電灯に引っ掛かって左足が骨折しただけで失敗。
6番目が薬物での自殺。睡眠薬を30錠飲んだけど、失敗。
7番目は覚醒剤に手を出そうとしたんだけど、警察に囮として使われて失敗。
8番目がまた焼身自殺しようとして、ガソリンをかけようとした所で取り押さえられ、失敗。
9番目がまた首吊り。直前で縄を切られ失敗。
最後がダムに重りを付けて沈む事だった。大規模な捜索の結果、引き上げられて失敗。
なんでことごとく邪魔をしてくるんだろう。
自分で解決しようとしているのに。
なんで救ってくれないんだろう。
こんなに苦しんでいるのに。
そう、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も思った。
最後に死のうとして見つかったのが約一年前、7年で10回死のうとしたのに・・・1回も死ねなかった。
ねぇ、『正義』を騙る偽善者達・・・
僕を助けてよ。
ほら、ここにいるよ。
すぐ目の前に。
僕はこれで死ぬ。
何故か分かるんだ。
それが運命であったかのように。
それが必然であったかのように。
だって僕は、沢山の人と、家族と、野次馬と、偽善者と、本物と、多分・・・神様に・・・
見守られているんだから。
ここは学校の教卓。
机の周りには、約20個の血だらけの肉塊。
そして、教卓に座る、ストレスのせいで色が抜けた髪色の僕。
その手には、真っ赤に染まりに染まり、黒くなった刺身包丁。
唖然としている大人を囲むのは、僕の下僕。
さて、見届けて貰おう。
僕の死に様を!
覚悟が足りなかったんだ。勢いが足りなかったんだ。
外は既に暗くなっている。深夜と言っても過言じゃない。
さぁ、まずは手首を切って、その後に首に突き刺そう。
勢いよく包丁を振り落とし、左手首を切り落とす。
そのままの勢いで、黒板に僕を縫い付ける。
ゴフッ・・・ドパァァァァ・・・
教室に雨が降る。
血が・・・命が・・・流れ出るのが分かる。
やっと・・・終わるんだ・・・
やっと・・・終われるんだ・・・
僕は、体と左腕を上にあげ、目を限界まで見開き、喉と口から血を吐き出しながら、喜びの声を上げる。
「・・・や・・・っど・・・ぼわ・・・でぃ・・・ぼう・・・ゴプッ・・・ぼわっだんだ!!!!」
文字通り魂の叫び。
周りには色がない。
ただ・・・ただ、血液の赤い輝きが、光り輝いていた。
(あぁ・・・僕の命は・・・こんなにも・・・あったかい・・・んだな・・・)
そこには、幸せそうな人形が、温かい毛布にくるまるように、真っ赤な体で息絶えていた。
────────────────────────
初めましての方は初めまして。
複数回目の方はどうもです。
此度のリメイク版、前回のよりは派手さに欠けますが、楽しんで頂けたでしようか?
これからもどんどんリメイクしてしていくので、温かい目で見守ってください。
これからもよろしくお願いします。
※作者は電車がいくら空いていても座らないタイプです。
※2主人公の自論は全く意味のわからない最低野郎を醸し出してみました。
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