数ある魔法の中から雷魔法を選んだのは間違いだったかもしれない。

最強願望者

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第二章『学園と黒竜』

プロローグ『雷を操るモノ』

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「なんか緊張するな・・・」

『馬鹿者。ここに貴様の敵なぞ居らんわ』

『その通りだ。汝は一時とはいえ神に近づいたのだからな』

あの戦闘から1週間。
傷も魔力も戻り、体力もほぼ完治した。
僕は入学の手続きを済ませ、今日がその入学予定者のクラス分けの試験だ。
戦闘技能、魔法技能、筆記技能。
これらで高得点を取れば上位のクラスへ配属される。
筆記は既に終えた。
割と難しかったけどゼウスとつくもも居た。
正直楽勝だった。
そして実技試験。
目の前にはAランク冒険者がいる。
知らない顔だな・・・
他のギルドからの応援だろうか。
 
「身体強化以外の魔法の使用は禁止。使い魔は使ってもいいよ。武器の使用も認める」

「はい。よろしくお願いいたします」

まぁ正直、楽勝だと思っている。
だって、隙だらけだし・・・舐めてるし・・・
首輪も無くなってしまったから、どうしようかと思っていたのだが、つくもが妖術で隠せると言っていたので甘えている。
つまり、僕は傍から見ればただの少年だ。
そしてそれは──

「──ぐはあああ!!!」

誤りである。

§

「・・・何者だ、あの少年は」

学園長がそう言う。
珍しく重い腰を上げたと思えば、こんなことがあるとは・・・

「彼はアダム君ですね。孤児上がりで冒険者としてそれなりに功績を上げています。修行のために入学したいとの事でした」

「アダム・・・聞かない名だね・・・」

冒険者ランクA。レベルも6だ。
ソロとしては中々早い。
噂ではギルドのお抱えとも言われている。

「・・・見えたか?」

「・・・クラウチングスタートは、見えました」

地面に手をつけ、前をしっかり見据えて走ろうとする様子は見えた。
しかし、その後が見えなかった。 
『白い』静電気らしきものが一瞬見えたが、次の瞬間・・・いや、消えた時にはAランク冒険者は壁に埋まり、気絶していた。
残ったのは急停止したであろうアダムと、その焦げた地面。
そして、遅れてやってきた音と衝撃波だった。

「・・・魔法か・・・?未だ私の知らない魔法があるのか・・・?」

興味深い。
非常に興味深い。

「あの子はSクラスに配属だ。貴族の反対は許さない。今年の1年Sクラスの担任は私がやる」

「え!?・・・は、はい。分かりました・・・」

この学園長がそこまでやる気を出すなんて・・・
別の意味でも、副学園長は感心していた。

§

ふう、次は魔法試験か。
ここが1番の難所と言える。
僕は雷魔法だから・・・そう、僕以外に極めようとしている人間が居ないのだ。
過去には何人かいるが、そのどれもが消息を絶っているか死んでいる。
つまり、実質僕は激レアなのだ。
まぁもちろん、素質的には他の属性のが上なのだが・・・
極めやすいのは、雷かもしれない。

「アダム君。こちらへ」

1人ずつ的の前へ立たされる。
僕は割と早めに呼ばれた。
さて、頑張ろう。
誰が見ても凄い一撃を見せればいい。

『少し力を貸してやろうじゃないか、我が主よ』

「そうだな。頼むよ、つくも」

つくもの声は、ゼウスと同じで僕にしか聞こえない。
けど、使い魔との会話は割と当たり前だから目立たないのだ。
ゼウスとの会話は少し変な目で見られたけど・・・
精霊の方が馴染み深いはずなんだけどなぁ。

「自分が持てる最高の技であの的を壊してください」

「はい」

アダマンタイトの柱・・・か。
壊すのにはそれなりの魔力が必要だ。
・・・さて、何にしようかな。
やっぱり、これかな。

「『神雷狐千』」

僕とつくもの合わせ技。
僕の『神雷』とつくもの『狐火』が合わさったものだ。
指輪は既に手甲に変わり、それを作り出す。
左手には雷。右手には狐火。
それは、脈動する雷。 
それは、喰らう炎。
生命作成神の奇跡』を行い、僕はそれを混ぜ合わせ、的に手を向ける。
僕が息を吐くと同時に、それは的へ飛んで行った。
次の瞬間、的は轟轟と燃え上がり、その炎は雷と共に成長する。
これはいわば、永続魔法。
全ての『存在』を喰らう、生きた魔法だ。
僕の中での『最高の技』だ。
そして結果は──

「バカな・・・こんなこと・・・」

上々だ。

§

そんなことが・・・有り得るのか・・・!?
あれは、あの魔法は!!
1度見た事がある・・・!
賢者の火・・・!
生きた、死なない永続魔法!!
いや、そこも重要だが・・・
彼は炎と雷の両方を、あのレベルで操るのか!?
それとも、使い魔をそこまで手懐けているとでも・・・
どちらにせよ、あの年齢ではありえないほどの強さだ。

「これは、まずいな」

具体的に言うと。
私の好奇心が抑えられない。
研究したい・・・
よし、引きこもろう。

「またね副学園長。後はよろしく」

「え?あ、ちょ──」

そうしてそそくさと、研究室へ逃げた。
かつて、自然現象から魔法を学んだ大賢者は、あらゆるものを『雷』から学んだとされる。
炎の破壊力と生命力。
水の自由度と美しさ。
風の強さと影響力。
闇の恐怖と質。
光の安らぎと救い。
そう、大賢者が選んだのは──



これは、大発見だ。
もしかすれば、彼は、大賢者の──



生まれ変わりかもしれない。
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