数ある魔法の中から雷魔法を選んだのは間違いだったかもしれない。

最強願望者

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第二章『学園と黒竜』

一話『Sクラス』

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この学園には、クラスをランクで別ける制度がある。
まぁ僕の場合、冒険者としてランク分けされているから、それなりに馴染み深いものではある。
のだが・・・

「・・・わぁ」

『当然だな。貴様と私の合成魔法だ。本来なら国から雇われてもおかしくない』

僕らの目線の先。
そこには。

『合格者 アダム Sクラス』

僕はこの学園で、特待生レベルの評価を貰えた。
ぶっちゃけ、ここまでやってこれ以上とかどうやんの・・・とは思っていたが、なるほど。
周りの目が痛い。
何故だ・・・何故顔が割れている。

『いや、貴様結構目立っていたからな』

あれだけ派手にやっていたのだから当たり前、と言われ、それもそうかと納得する。
納得しながら合格者名簿を見ていて、僕は思わず吹き出した。

『皇国 交換留学生 フール Sクラス』

フール!!??
え、そんな・・・そんなことあるのか・・・?
いや、目の前に実際書いてある・・・
・・・まさか、フールが同じことを考えているとは・・・
まぁ、素直に喜ぼう。
またしばらく一緒に行動できるのだから。
いや、案外、僕とは違う道に行くのかもな。
あの約束は・・・少し無視しても、いいのかもしれない。

§

クラスの中には数人が居た。
金髪が眩しい物静かそうな、それでいて気の強そうな少女。
青髪で、実力者然とした表情の少年。
赤髪の活発そうな少年。
そして。
銀髪の、美人さん。

「フール」

「あ、アダム!」

青髪の少年と話していたフールがこちらへ駆け寄る。
・・・少年は微妙そうな顔だ。
フールは銀髪で、身長も僕とそんなに変わらない。
ちなみに僕は黒髪だ。
綺麗な顔がこちらを覗き込む。

「大丈夫?もう怪我は平気?」

「大丈夫だよ。つくもに治してもらったから」

「つくも?あの狐の名前?」

「うん。ほら」

足元にいるつくもに意識を向ける。
フールは一瞬すごい顔をしてそちらを見たが、直ぐに笑顔で僕の手を引いた。
・・・変わらないなあ。

「ここ!この窓際の席凄く景色がいいんだ!一緒に座ろ?」

「もちろんいいよ」

ニコニコと、年相応に、引いては幼く見えるフール。
普段は美人さんだから、少し怖く見えるらしいけど、慣れるとこんなものだ。
色々と話していた。
あの後レベルは7に上がり、さらに名前を売ったと。
白狼の城はそれの為の試練だったのだ。
するとそこで、青髪の少年がこちらへ来た。

「初めまして。私はムール・ニトファイルだ。君はフール様の何だい?」

敵意を感じる。
一見さわやかに挨拶してきたが、その言葉の節々から攻め気を感じる。
そういえば、この前の皇魔騎士団のキャスターも様付けしてたなぁ。

「フールとは──」
「ボクの許嫁さ!二人の時間を邪魔しないでよ!」

あれ、一人称戻ってる・・・
フールの言葉に狼狽える少年。
・・・少年と言っても、身長は僕より高い。
許嫁って・・・まぁ確かに、将来一緒に暮らそうって約束はさせられたけど・・・(強引)
まぁ嫌ではないし、いいけどさ。
そういう願望を持つのはいい事だと思う。
・・・つくもが何か言いたげにこちらを見ている。

「なんだよつくも」

『・・・貴様も苦労してるなぁ、と』

この程度の暴走?は慣れっこだ。
なんてったって、10年は一緒に暮らしてるしね。
1つ空の下で。

「そもそもさー、あんたこそなんなの?私に突っかかってきて、あんたは私の何?」

「わ、私はただ、君と──」

「うるさい!もう近寄らないでよ!アダムも何か言ってよ~こいつウザイよ~」

涙目で腕に縋ってくるフール。
・・・変わんないなぁ。
そして珍しく他人の前で甘えている。
一人称も素に戻っている。
・・・・・・相当ムカついてるな?

「そろそろやめといた方がいいよ。えーっと・・・ヤマダ君?」

「ムールだ!!!誰だそいつは!?と、とにかく!」
「うっさいブス!消えろ!死ね!」

フールは僕以外に厳しい。
それは性格上の意味もあるし慣れもある、と思う。
普段は大人しい筈だが、キレるとこんなふうに暴言を吐いたりする。
それを納めるのが僕の仕事だったんだけど・・・
暫くは皇魔騎士団の団長さんの仕事だったのかな。
・・・お疲れ様です。

「ふぅ・・・なんなのアイツ?折角ボクとアダムが二人で話してたのに・・・」

タナカ君?がブツブツ言いながら去ると、フールがそう言って悪態をついた。
昔からこうなのだ。
僕らが暮らしていたところに他の人間が近付くと全力で追い返す。
12になる前に街に行った時なんか『番犬かな?』と思う程度には周りを威嚇してたものだ。

「まぁまぁ、フール落ち着いて」
「フール落ち着いた!」

つくもがまた何か言いたげな顔をする。
・・・何となく察した。
と、突然教室の前の扉が開いた。
そこから現れたのは、白衣を羽織った背の高い男・・・
あれは、男だ。
絶対に男だ。
何故かって?

『眩しいな・・・』

反射する頭だからだ(何がとは言わない)。
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