数ある魔法の中から雷魔法を選んだのは間違いだったかもしれない。

最強願望者

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第二章『学園と黒竜』

三話『狐の怒り』

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短い付き合いだ。
私とアダムのこの1週間は特に何も無く。
ただ、平凡だった。
たまにゼウスとも会話を楽しみ、絆を深めるということを体験した。
我ながら軽い女だと思う。
我ながら良くも絆されたと思う。
だが、これは。
これだけは──


「僕、フール以外に友達居ないから・・・少しだけ期待してるんだよね」


──そう、屈託なく笑っていた主を。
私は、見たのだ。
あんなに、あんなに楽しみにしていたのに。
修行に身が入らないほどに、楽しみにしていたのに。
分かってはいた。
事前に防ごうかとも思った。
だが、止められた。
どうせなら確実に潰そう、と。
そう言っていた我が主は。
少し寂しそうに、笑っていた。

「平伏せ、人間共」

言葉に魔力を持たせたモノ。
それだけで、あらゆる生物は地に伏せる。
主が主犯格を探す間の、時間稼ぎ。
私は、あの戦いよりも──怒っていた。
いや、あの戦いに怒りはなかった。
なれば、これは。
愛、なのだろうか。
数十万年。生きてきた。
孤独に生きてきた。
悠久と呼べる果てしない命だ。
たった7日だ。
今までの生に比べれば、瞬きする間もない程の時間。
何を考えているのか。
自分でも馬鹿らしいと思う。
だがしかし、私にとって。
この男との時間は、今までで1番の──

「ありがとう、つくも。見つけたよ」

幸せだったのだ。

§

結構本気で怒ってるみたいだな。
僕に絡みつく腕と、守るような、撫でるような尾が少し震えている。
まぁ、たしかに。
楽しみにはしてたけど・・・
この瞬間だけを楽しみにしてたわけじゃないんだけどなぁ。
素直に嬉しいけどね。

「ゼウス」

『あぁ、あの扉の奥だな』

「つくも。狙いは国王様だと思うから、フール確保してから守っててくれる?」

「ふん。仕方ない」

あの戦いで僕はいくつか進化した。
まず、白い雷。
これは、ゼウスの特徴でもある。
『神雷』と呼ばれる耐性不可のスキルであるもの。 
それを、常に生み出す事ができるようになった。
というのも、元々僕はあまりある魔力を雷に変換して消費していたのだが、つくもが貯めてくれることでその必要が無くなり、より質の高い雷を作ることに集中する事ができるようになったのだ。
僕の魔力は神雷に適応し、全ての雷が神雷からの派生になった。
つまり。
防げない全ての属性の雷ができるのだ。
全ての属性と言っても『属性の模倣』だからなんとも言えないが。
しかし全属性に違いはない。
他のものはまぁ、また今度。

「『神雷速』」

白い雷を纏う。
つくもは既にフールを確保して国王のそばに居る。
・・・早いな。
僕の模倣をしている。
全く、これだから化け物は。

「逃げるなよ──犯人」

バチッと音がなり、僕は壇上から消える。
そして、その男の目の前に現れた。
男は後ろによろめき、次の瞬間刀を振るってくる。
・・・僕のこの神雷は、防御機能がある。
微かな電磁波に対する自動迎撃機能だ。
バッチンと痛そうな音が響き、男の手首が灰となって落ちる。

「──ぐああああああああ!!!!」

痛いよね、それ。
僕全身それだったけど。
ビリビリとした衝撃に、ビリビリとした痛み。
そして燃えるような痛み。
3重で痛い。

「つくも、全部捕まえて」

「はぁ・・・狐使いが荒いぞ貴様」

「君しか頼れないのさ」

「・・・そんなんで騙されると思ってるのか」

そう言いつつ、尾を伸ばして黒ずくめの男女を無力化する。
逃げようとする人間を優先的に。
結界もあるから逃げられるわけないのに。

「一件落着、かな」

決めゼリフを吐いた時、上がった黄色い歓声は一つだった。

§

「あの者達は最近王都で活動している裏ギルドの人間だった。尋問により『上』からの支持だとはわかったが、それ以上は・・・」

「そうですか。なんで僕に言うんですか?」

僕は今、学長室にいる。
そこには国王様と学園長と騎士団の団長がいる。
礼が言いたいって言うから来たのに。
難しい話ばかりだ。

「今回の騒動で君は奴らに目をつけられるだろう。その謝罪をしたくてね」

国王が言う。
なるほど。
犯罪ギルドから狙われてるとなるとそれなりの重荷がある。
と、思われてるのか。

「問題ありませんよ。僕や僕の仲間は強いですから」

「たしかに、あの神獣は強かった」

頷く国王。
あ、これ分かってないやつだ。
本来のつくもはこの比じゃない。
・・・なんたって、今でも勝てるイメージが湧かないのだから。

「話は以上ですか?」

「いや、本題はこれからだ」

そう言って、国王は深刻そうな顔をする。
・・・なんだろうか。
僕は次の言葉に耳を疑った。
鼓動が早まる。
冷や汗が流れる。

「近くに黒竜が住み着いた。君にその討伐を頼みたい」
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