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第二章『学園と黒竜』
四話『因縁の敵』
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「なぁアダム、フール。俺はな、勇者になりたかったんだ」
「勇者?」
「あぁ、前に読んでやった本があるだろう?あれに書いてある様な、英雄とは違う、勇気ある者だ」
僕とフールは顔を合わせる。
この人は何を言っているのだろうか。
「それなら、⚫⚫⚫はもう勇者じゃない?」
「僕もそう思うよ」
「ん?ハッハッハ!お前たちにとって俺は勇者か!」
彼は組んだ膝を叩きながら大きく笑う。
僕とフールも一緒になって笑う。
外は雨で、洞窟の中の焚き火が暖かった。
彼は綺麗に、かっこよく笑う。
僕は困ったような笑みで。
フールは満面の笑みで。
僕らは、幸せだった。
「なぁアダム。お前はフールの事好きか?」
狩りをしている時、不意に彼からそう聞かれた。
どういう事だろうか。
嫌いなわけがないのに。
「好きだよ?家族だもん」
「あー・・・まぁ、今はそれでいいか・・・」
「?」
「フールもお前のこと大好きだってさ。良かったな!」
「うん!」
狩りの帰りに、魔獣を引き摺っていた僕らはそれを見た。
僕らの住処が、荒らされていた。
留守番のハズのフールが居ない。
彼は見たことも無いような顔で言った。
「・・・黒竜の匂いだ。まさか近くに巣が・・・?」
「⚫⚫⚫?」
ハッとしてこちらを見る。
彼は少し引き攣った笑みで、僕に言った。
「大丈夫だ!フールは無事だよ!」
「う、うん」
僕は初めて、彼を疑ってしまった。
§
彼に付いて行った先は火口だった。
山頂付近の火口のど真ん中。
そこに、奴は居た。
目がなく、耳もないのっぺりとした顔。
縦長の顔の先についた鼻をヒクヒクと動かし、極端に横に伸びた口からはヨダレが出ている。
そして、その足元にはフールが居た。
「──行くぞ。お前はフールを頼む。俺は・・・黒竜を殺す」
「わ、わかった」
そして彼の足元は──爆ぜた。
今まで見た事ないほど凄まじい戦いだった。
かつてみた『雷』のように激しい戦い。
「フール!フール!!」
「ん・・・アダ・・・ム・・・?」
良かった!
僕はフールを連れて来た道へ戻る。
そして、彼の様子を見ようと、振り向いてしまった。
・・・僕はその事を一生忘れない。
僕は一生これを背負って生きる。
何故か僕らの方へ来た黒竜。
僕はそれを、何をするでもなく見ていた。
そして──
「強くなるんだアダム!フールを!大切なものを守れるように!────ぜ!」
そう、笑顔で何かを言って。
彼は、喰われた。
僕はフールを連れて無我夢中で逃げた。
僕らでは勝てない。
僕では、仇が取れない。
あの時僕は知ったのだ。
己の無力と、怠慢を。
§
「黒竜、です、か」
「あぁ、しかし安心して欲しい。どうやら最近産まれたばかりの黒竜だ。これはそうだな・・・レベル7への第一歩と言うことにしよう」
確かに、幼体とはいえ黒竜を殺せば僕はまた英雄に近づく。
・・・あの、黒竜ではない、のか。
どちらにせよ、断るつもりは無い。
「もちろん。受けましょう」
「そう言うと思っていた。では詳細は騎士団長と話し合ってくれ」
そう言って、多忙であろう国王は、部屋の外の騎士を引連れて去っていった。
§
詳細はこうだ。
2週間後の早朝、僕とつくもは騎士団長に付いて黒竜の巣へ行く。
そして、前衛を騎士団長にして僕が後衛で討伐する・・・という段取りだ。
まぁ幼体なら特に問題なく討伐出来るだろう。
僕的には中衛として戦おうと思うのだが・・・
ぶっちゃけ魔法より物理の方が楽なのだ。
前までは耐性も割とある敵が多かったから。
今はその心配は無いが・・・
つくももいるのだ。
気負う必要はなかった。
「なるほどな。分かった。貴様の指示に従おう」
「うん。頼むよ」
入学式の日、人型になれるとバラしてしまったつくもは狐ではなく人型を好むようになった。
尾は普段隠すのだが、部屋では十三尾になっている。
そして。
「ボクも行きたいなぁ・・・」
「一応言ったんだけど、他国からの留学生だし・・・少しでも危険があることはさせられないって」
「ダンジョンはいいのに・・・?」
「ほんとだよね・・・」
まぁそこら辺は上の事情というものだろう。
僕としては──
フールを危険には晒したくない。
黒竜ともなると、尚更だ。
「・・・まぁボクは今回、生徒会に呼ばれてるから行けないんだけどね」
「あ、言ってたね」
「うん。なんか推薦されちゃったらしくて」
「断るの?」
「うん。アダムと一緒に居たいし!」
素直だ。
僕としてはとても嬉しいし、なんなら僕が一緒に入っても良かった。
・・・なんだかんだ言って。
「貴様、私の菓子を食ったな?」
「た、食べてないよ!つくもちゃんブラッシングするから許して!」
「食べてないのに許すって何さ・・・」
この2人も仲良くなっていた。
きっかけはそう。
騒動の後に僕の部屋で、つくもが『バラしたしもう良いのでは無いのか?』と言うから『確かに』という話をしていた。
で、そこには何故かフールが居て、僕と同じように尾にメロメロになっていた。
あれは、罠だ・・・
堕落への、罠なのだ・・・
「貴様ら・・・」
ゴミを見るような目を頂きました。
「勇者?」
「あぁ、前に読んでやった本があるだろう?あれに書いてある様な、英雄とは違う、勇気ある者だ」
僕とフールは顔を合わせる。
この人は何を言っているのだろうか。
「それなら、⚫⚫⚫はもう勇者じゃない?」
「僕もそう思うよ」
「ん?ハッハッハ!お前たちにとって俺は勇者か!」
彼は組んだ膝を叩きながら大きく笑う。
僕とフールも一緒になって笑う。
外は雨で、洞窟の中の焚き火が暖かった。
彼は綺麗に、かっこよく笑う。
僕は困ったような笑みで。
フールは満面の笑みで。
僕らは、幸せだった。
「なぁアダム。お前はフールの事好きか?」
狩りをしている時、不意に彼からそう聞かれた。
どういう事だろうか。
嫌いなわけがないのに。
「好きだよ?家族だもん」
「あー・・・まぁ、今はそれでいいか・・・」
「?」
「フールもお前のこと大好きだってさ。良かったな!」
「うん!」
狩りの帰りに、魔獣を引き摺っていた僕らはそれを見た。
僕らの住処が、荒らされていた。
留守番のハズのフールが居ない。
彼は見たことも無いような顔で言った。
「・・・黒竜の匂いだ。まさか近くに巣が・・・?」
「⚫⚫⚫?」
ハッとしてこちらを見る。
彼は少し引き攣った笑みで、僕に言った。
「大丈夫だ!フールは無事だよ!」
「う、うん」
僕は初めて、彼を疑ってしまった。
§
彼に付いて行った先は火口だった。
山頂付近の火口のど真ん中。
そこに、奴は居た。
目がなく、耳もないのっぺりとした顔。
縦長の顔の先についた鼻をヒクヒクと動かし、極端に横に伸びた口からはヨダレが出ている。
そして、その足元にはフールが居た。
「──行くぞ。お前はフールを頼む。俺は・・・黒竜を殺す」
「わ、わかった」
そして彼の足元は──爆ぜた。
今まで見た事ないほど凄まじい戦いだった。
かつてみた『雷』のように激しい戦い。
「フール!フール!!」
「ん・・・アダ・・・ム・・・?」
良かった!
僕はフールを連れて来た道へ戻る。
そして、彼の様子を見ようと、振り向いてしまった。
・・・僕はその事を一生忘れない。
僕は一生これを背負って生きる。
何故か僕らの方へ来た黒竜。
僕はそれを、何をするでもなく見ていた。
そして──
「強くなるんだアダム!フールを!大切なものを守れるように!────ぜ!」
そう、笑顔で何かを言って。
彼は、喰われた。
僕はフールを連れて無我夢中で逃げた。
僕らでは勝てない。
僕では、仇が取れない。
あの時僕は知ったのだ。
己の無力と、怠慢を。
§
「黒竜、です、か」
「あぁ、しかし安心して欲しい。どうやら最近産まれたばかりの黒竜だ。これはそうだな・・・レベル7への第一歩と言うことにしよう」
確かに、幼体とはいえ黒竜を殺せば僕はまた英雄に近づく。
・・・あの、黒竜ではない、のか。
どちらにせよ、断るつもりは無い。
「もちろん。受けましょう」
「そう言うと思っていた。では詳細は騎士団長と話し合ってくれ」
そう言って、多忙であろう国王は、部屋の外の騎士を引連れて去っていった。
§
詳細はこうだ。
2週間後の早朝、僕とつくもは騎士団長に付いて黒竜の巣へ行く。
そして、前衛を騎士団長にして僕が後衛で討伐する・・・という段取りだ。
まぁ幼体なら特に問題なく討伐出来るだろう。
僕的には中衛として戦おうと思うのだが・・・
ぶっちゃけ魔法より物理の方が楽なのだ。
前までは耐性も割とある敵が多かったから。
今はその心配は無いが・・・
つくももいるのだ。
気負う必要はなかった。
「なるほどな。分かった。貴様の指示に従おう」
「うん。頼むよ」
入学式の日、人型になれるとバラしてしまったつくもは狐ではなく人型を好むようになった。
尾は普段隠すのだが、部屋では十三尾になっている。
そして。
「ボクも行きたいなぁ・・・」
「一応言ったんだけど、他国からの留学生だし・・・少しでも危険があることはさせられないって」
「ダンジョンはいいのに・・・?」
「ほんとだよね・・・」
まぁそこら辺は上の事情というものだろう。
僕としては──
フールを危険には晒したくない。
黒竜ともなると、尚更だ。
「・・・まぁボクは今回、生徒会に呼ばれてるから行けないんだけどね」
「あ、言ってたね」
「うん。なんか推薦されちゃったらしくて」
「断るの?」
「うん。アダムと一緒に居たいし!」
素直だ。
僕としてはとても嬉しいし、なんなら僕が一緒に入っても良かった。
・・・なんだかんだ言って。
「貴様、私の菓子を食ったな?」
「た、食べてないよ!つくもちゃんブラッシングするから許して!」
「食べてないのに許すって何さ・・・」
この2人も仲良くなっていた。
きっかけはそう。
騒動の後に僕の部屋で、つくもが『バラしたしもう良いのでは無いのか?』と言うから『確かに』という話をしていた。
で、そこには何故かフールが居て、僕と同じように尾にメロメロになっていた。
あれは、罠だ・・・
堕落への、罠なのだ・・・
「貴様ら・・・」
ゴミを見るような目を頂きました。
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