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第二章『学園と黒竜』
五話『序列戦』
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あれから3日が経ち、騒動も収まってきた。
例の黒服は尋問で情報を出したあと、反逆罪と殺害未遂で死刑となった。
そして、僕らの直近の問題は。
「さて、明日は序列戦だ。Sクラス内での順位、Aクラスとの対抗戦。前者は1人、後者は2人1組だ」
学園長が(何をとは言わないが)輝かせながら言う。
僕はフールを見た。
フールもまた、僕を見た。
本来ならば序列戦は使い魔と戦って良いのだが、僕の場合は使い魔が使い魔なので相手も使い魔を使っている時のみ許可と言う風になっている。
僕の実力が見たいから、と言っているが、本来は使い魔は自分より強い人間に付く。
周りから見た僕は神獣以上の化け物だろう。
「なぁつくも。お前はなんで僕に仕えることにしたんだ?」
部屋に戻り、僕はつくもへと言う。
初めて、ハッキリと聞いた。
あの時、僕はただ戦っていた。
勝ちたかった。
負けたくなかった。
だからこそ、命を、魂を。
『死』を燃やして戦っていた。
「貴様の戦意に負けたからだ。あれは・・・私でも、恐怖するほどの戦意。殺意だった」
「根負けしたってこと?」
「そういう事だな」
つくもに膝枕(本人希望)してもらいながら、尾をもふもふしている。
・・・僕はあの時、何を思っていたのだったか。
ただ、覚えているのは。
強さへの、渇望。
「・・・強くなるよ、僕は。もっと、もっとね」
「あぁ、分かっている」
突然の睡魔によって、僕は眠りに落ちた。
§
・・・眠った顔は、可愛いんだがな。
頭を撫でながら、思う。
過去に何があったにせよ、どれ程の絶望があったにせよ。
何故、ここまで強さに拘るのか。
私は生きているだけで強くなった。
悠久の時を経てこの力を手に入れた。
あの勇者も・・・強さを求めていたのか?
それとも、敵を求めていたのか?
かつての私のように。
「・・・頑張りすぎなのだ。貴様らは」
フールも、アダムも。
家族のように接してくる。
十日前には殺し合い、果ては憎まれるまでに至っていたのに・・・
私には、理解が出来なかった。
・・・この化け物を、何故受け入れたのだろうか。
・・・なんだっていい。
私にとって、この一時が。
とても愛おしいことには変わりはない。
「やぁ、つくもちゃん」
「フールか」
「気持ちよさそうに寝てるねぇ・・・かーわいい」
ニコニコと、アダムの顔を愛おしそうに撫でる。
この人間も、アダムを愛しているのか。
私より付き合いが長いはずだ。
アダムもフールには甘い。
そしてフールも、アダムには甘い。
・・・私もと、思うのは傲慢なのか。
「・・・ねぇ、つくもちゃん。アダムのこと、好き?」
「・・・私は・・・」
ふと、ゾクリとした。
こちらの目を除くその瞳が。
深淵のように、黒くなっている。
目が、離せない──
「・・・勝負だね、つくもちゃん。私か、貴女か。それとも、両方か・・・まぁ、アダムならどっちも選んでくれそうだけどね」
それは、宣戦布告か。
それとも、受け入れたということなのか。
どちらにせよ。
敵に回したくはない女だ。
§
黒竜とは。
その生態が謎に包まれた生き物だ。
どうやって産まれるのかも分かっていない。
産卵なのか、出産なのかもわかっていない。
普段は単体での行動しかしないし、群れたりもしない。
だが、こんな噂がある。
『人を食う黒竜』
黒竜は、人を食らう度にその魔力や属性を取り込み、強力になると。
より強くなった黒竜は知性を持ち始め、魔法すら使う、と。
そして、さらに数百年生きた黒竜は。
白竜へと成る、と。
§
「まぁ2人1組は僕らで決定だよね」
「うん!ボクしか居ないもんね!」
2人1組は別に他のクラスから選んでも良かったが、打算無しで僕と組んでくれるのはフールしか居ない。
そして、クラス内の序列は単純に総当たり戦だ。
ただ、あまりやりすぎると次の日の2人1組の時に支障が出るから、ある程度でストップがかかる。
まぁ、僕の場合。
フール以外はストップの前に気絶させちゃうけど。
「さて、最初はアダム対ムール」
「よろしく」
「よろ──」
「頑張れアダムー!!」
・・・少し沈黙が流れる。
開始の合図はない。
お互いに好きな時に始めればいい。
そう言われた。
今回は魔法で攻めてみようと思う。
「『雷の祭殿』」
「うぉ!?フィールド魔法か!?」
フィールド魔法。
それは、自身を中心とした空間に属性を付与したフィールドを作る魔法だ。
これによって、威力や速度なども上がる。
雷に至っては、状態異常まで付与できる可能性がある。
「『水雷』」
「なっ!合成魔法・・・!」
水魔法は少し学んだら出来たのだ。
まだ水球しか出来ないが、雷魔法と合わせればほぼ最強になる。
それをゆっくり、イトウ君?へ向かわせる。
彼は気付いてないかもしれないが。
体の動きは普段の4分の1にまで下がる。
・・・今気付いても遅いさ。
「はい。そこまで。勝者アダム」
「きゃー!!アダムやったね!」
当たるか当たらないかギリギリで、止められた。
・・・ま、こんなもんか。
Sクラスだからどんなものかと思ったけど。
金でも積んだのかな。
「──殺して、やる──」
おっと。口に出ていたようだ。
さて、次は・・・
「次はフール対マリア」
あの金髪のお嬢様か。
例の黒服は尋問で情報を出したあと、反逆罪と殺害未遂で死刑となった。
そして、僕らの直近の問題は。
「さて、明日は序列戦だ。Sクラス内での順位、Aクラスとの対抗戦。前者は1人、後者は2人1組だ」
学園長が(何をとは言わないが)輝かせながら言う。
僕はフールを見た。
フールもまた、僕を見た。
本来ならば序列戦は使い魔と戦って良いのだが、僕の場合は使い魔が使い魔なので相手も使い魔を使っている時のみ許可と言う風になっている。
僕の実力が見たいから、と言っているが、本来は使い魔は自分より強い人間に付く。
周りから見た僕は神獣以上の化け物だろう。
「なぁつくも。お前はなんで僕に仕えることにしたんだ?」
部屋に戻り、僕はつくもへと言う。
初めて、ハッキリと聞いた。
あの時、僕はただ戦っていた。
勝ちたかった。
負けたくなかった。
だからこそ、命を、魂を。
『死』を燃やして戦っていた。
「貴様の戦意に負けたからだ。あれは・・・私でも、恐怖するほどの戦意。殺意だった」
「根負けしたってこと?」
「そういう事だな」
つくもに膝枕(本人希望)してもらいながら、尾をもふもふしている。
・・・僕はあの時、何を思っていたのだったか。
ただ、覚えているのは。
強さへの、渇望。
「・・・強くなるよ、僕は。もっと、もっとね」
「あぁ、分かっている」
突然の睡魔によって、僕は眠りに落ちた。
§
・・・眠った顔は、可愛いんだがな。
頭を撫でながら、思う。
過去に何があったにせよ、どれ程の絶望があったにせよ。
何故、ここまで強さに拘るのか。
私は生きているだけで強くなった。
悠久の時を経てこの力を手に入れた。
あの勇者も・・・強さを求めていたのか?
それとも、敵を求めていたのか?
かつての私のように。
「・・・頑張りすぎなのだ。貴様らは」
フールも、アダムも。
家族のように接してくる。
十日前には殺し合い、果ては憎まれるまでに至っていたのに・・・
私には、理解が出来なかった。
・・・この化け物を、何故受け入れたのだろうか。
・・・なんだっていい。
私にとって、この一時が。
とても愛おしいことには変わりはない。
「やぁ、つくもちゃん」
「フールか」
「気持ちよさそうに寝てるねぇ・・・かーわいい」
ニコニコと、アダムの顔を愛おしそうに撫でる。
この人間も、アダムを愛しているのか。
私より付き合いが長いはずだ。
アダムもフールには甘い。
そしてフールも、アダムには甘い。
・・・私もと、思うのは傲慢なのか。
「・・・ねぇ、つくもちゃん。アダムのこと、好き?」
「・・・私は・・・」
ふと、ゾクリとした。
こちらの目を除くその瞳が。
深淵のように、黒くなっている。
目が、離せない──
「・・・勝負だね、つくもちゃん。私か、貴女か。それとも、両方か・・・まぁ、アダムならどっちも選んでくれそうだけどね」
それは、宣戦布告か。
それとも、受け入れたということなのか。
どちらにせよ。
敵に回したくはない女だ。
§
黒竜とは。
その生態が謎に包まれた生き物だ。
どうやって産まれるのかも分かっていない。
産卵なのか、出産なのかもわかっていない。
普段は単体での行動しかしないし、群れたりもしない。
だが、こんな噂がある。
『人を食う黒竜』
黒竜は、人を食らう度にその魔力や属性を取り込み、強力になると。
より強くなった黒竜は知性を持ち始め、魔法すら使う、と。
そして、さらに数百年生きた黒竜は。
白竜へと成る、と。
§
「まぁ2人1組は僕らで決定だよね」
「うん!ボクしか居ないもんね!」
2人1組は別に他のクラスから選んでも良かったが、打算無しで僕と組んでくれるのはフールしか居ない。
そして、クラス内の序列は単純に総当たり戦だ。
ただ、あまりやりすぎると次の日の2人1組の時に支障が出るから、ある程度でストップがかかる。
まぁ、僕の場合。
フール以外はストップの前に気絶させちゃうけど。
「さて、最初はアダム対ムール」
「よろしく」
「よろ──」
「頑張れアダムー!!」
・・・少し沈黙が流れる。
開始の合図はない。
お互いに好きな時に始めればいい。
そう言われた。
今回は魔法で攻めてみようと思う。
「『雷の祭殿』」
「うぉ!?フィールド魔法か!?」
フィールド魔法。
それは、自身を中心とした空間に属性を付与したフィールドを作る魔法だ。
これによって、威力や速度なども上がる。
雷に至っては、状態異常まで付与できる可能性がある。
「『水雷』」
「なっ!合成魔法・・・!」
水魔法は少し学んだら出来たのだ。
まだ水球しか出来ないが、雷魔法と合わせればほぼ最強になる。
それをゆっくり、イトウ君?へ向かわせる。
彼は気付いてないかもしれないが。
体の動きは普段の4分の1にまで下がる。
・・・今気付いても遅いさ。
「はい。そこまで。勝者アダム」
「きゃー!!アダムやったね!」
当たるか当たらないかギリギリで、止められた。
・・・ま、こんなもんか。
Sクラスだからどんなものかと思ったけど。
金でも積んだのかな。
「──殺して、やる──」
おっと。口に出ていたようだ。
さて、次は・・・
「次はフール対マリア」
あの金髪のお嬢様か。
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