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第二章『学園と黒竜』
六話『フール対アダム』
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結果から言おう。
フールの圧倒的勝利だった。
僕が褒めるとそれはそれは嬉しそうにするもんだ。
ちなみにつくもは狐の姿で日陰にいる。
もふもふしたい・・・
そして、別の人達との対戦が終わり、最後に1位2位決定戦が始める。
そう。
「最後に。アダム対フール」
僕らの、戦いだ。
§
ぴくりと、耳を揺らす。
始まったか。
フールの実力は本当の意味でアダムと同レベルだった。
2対1なら私が負けていただろう。
心なしかハゲや他の生徒も距離を取っている。
「フール。2分の1だ」
「わかった」
・・・この会話だけで、お互いの信頼や実力が垣間見える。
2分の1の本気で、戦うということだろう。
それは手加減であって手加減ではない。
・・・高レベルな戦いだった。
初めにしかけたのはフールだ。
「『獅子炎弩』」
その両手から金色の炎を出し、それが獅子の形となってアダムに迫る。
その瞬間。
アダムは白い雷に包まれ、あろう事かそれを掴み取った。
さすがに驚いたのか、フールの目が見開かれる。
しかし、直ぐに思い直したかのように魔力を高めた。
「『炎』」
ただその一言で、それが現れた。
背後には甲冑を思わせる巨大な炎。
まさか、あれは・・・精霊か。
しかもあれは唯一神の・・・
「『アマテラス』」
「・・・『雷門解放』」
対してアダムは雷の門を作り出し、そこから1つの雷槍を取り出す。
それは、まさに雷。
純粋な『破壊』。
見ることさえできない眩さ。
ここまで届くその力強さ。
鼓動していた。
どちらの魔力も。
共鳴するかのように鼓動が大きくなっていた。
・・・なるほどな。
お互いがお互いを認めてるが故の、戦意の高め合い。
恐らく次の一撃で全てが決まるだろう。
「『最悪の雷』」
「『原初の炎』」
それは激しくぶつかった。
力の奔流のぶつかり合い。
そこに小細工などなく、純粋な力だけがあった。
そして、残ったのは。
「・・・引き分け。同列一位とする」
両方が満足そうに笑う姿だった。
§
「強くなったねフール」
「まだまだだよ!アダムを守れるようになるまで強くならなきゃ!」
あの後、明日のために休むように言われた僕らは僕の部屋で休んでいた。
それなりに魔力を使ったし、緊張したから疲れた。
つくもが枕替わりになってくれている。
もちろん隣に同じくつくもを枕にしているフールも寝てる。
「・・・私はベットでは無いのだがな」
「今度ボクがチョコ作ってあげるから許して?」
「む、ならば許そう」
「あ、僕も食べたい」
何気に、フールは家庭的な一面がある。
料理に関しては、僕の中でフールが1番だと声高らかに言える程度には高い技術だ。
お菓子作りもその一つで、どこからかレシピを拾っては再現し、それを僕達に振舞ってくれる。
そして、僕とつくもも、癖になってしまっていた。
「それにしても・・・僕とフール以外が弱いのか、僕とフールが強いのか・・・わかんないね」
「恐らく両方だろうな。私が見ていた感じでは、貴様らに勝てる人間はこの学園には居ない」
力では、とつけ足した。
まぁたしかに、騎士団長さんとか強そうだったし、僕はそもそも自分が最強だとは思ってないしね。
実際僕の枕より弱いし。
「まぁボク達も頑張ってるってことだよ!・・・最強になるためにね」
少し落ち着いた様子で言うフール。
その横顔を見ながら、やっぱり美人だなーとなんとなしに思う。
僕らは志は同じ。
僕らは未来も同じ。
そして、過去も同じ。
ずっとこれでいい。
お互いに強くなればいい。
・・・そして、二度と負けない強さを。
「フール」
「なぁに?」
「君は僕が守る」
「・・・私は貴方を守る」
「これは約束だ」
「これは契約」
お互いに一つ、笑を零す。
「・・・よく覚えてたね」
これは、あの日の誓い。
僕が、彼を喪った後、立てた誓い。
そしてまた、フールも同じように立てた誓い。
「当たり前でしょ?ボクは貴方の騎士。貴方はボクの騎士。違う?」
そう、屈託なく笑うフール。
僕はそれを見て、酷く安心してしまった。
「・・・そうだね」
その通りだ。
そしてまた、誘われるように、僕は眠りに落ちた。
§
「今日から序列戦の本戦だ。2人1組なのはわかっていると思うが、細かいルールは──」
今日僕とフールは全部で7組と戦う。
AクラスとBクラスで3組と4組という割合だ。
BまではSクラスに挑む権利があって、CはAクラスまでしか挑めない。
勝てば勝った相手とクラス交代、だ。
不戦勝でもそれは認められる。
だから、Sクラスと戦ったAクラスに挑戦するBやCクラスは多い。
だが、Sは特に秀でた者が入るクラスだ。
それを抜いて最高ランクなのがAなのだ。
勝てずにそのままの者も多い。
そして今回。
僕らの相手は。
「まぁ楽勝だよね!アダム!」
「そうだね、フール」
最低ランクまで、下がるかもしれない。
フールの圧倒的勝利だった。
僕が褒めるとそれはそれは嬉しそうにするもんだ。
ちなみにつくもは狐の姿で日陰にいる。
もふもふしたい・・・
そして、別の人達との対戦が終わり、最後に1位2位決定戦が始める。
そう。
「最後に。アダム対フール」
僕らの、戦いだ。
§
ぴくりと、耳を揺らす。
始まったか。
フールの実力は本当の意味でアダムと同レベルだった。
2対1なら私が負けていただろう。
心なしかハゲや他の生徒も距離を取っている。
「フール。2分の1だ」
「わかった」
・・・この会話だけで、お互いの信頼や実力が垣間見える。
2分の1の本気で、戦うということだろう。
それは手加減であって手加減ではない。
・・・高レベルな戦いだった。
初めにしかけたのはフールだ。
「『獅子炎弩』」
その両手から金色の炎を出し、それが獅子の形となってアダムに迫る。
その瞬間。
アダムは白い雷に包まれ、あろう事かそれを掴み取った。
さすがに驚いたのか、フールの目が見開かれる。
しかし、直ぐに思い直したかのように魔力を高めた。
「『炎』」
ただその一言で、それが現れた。
背後には甲冑を思わせる巨大な炎。
まさか、あれは・・・精霊か。
しかもあれは唯一神の・・・
「『アマテラス』」
「・・・『雷門解放』」
対してアダムは雷の門を作り出し、そこから1つの雷槍を取り出す。
それは、まさに雷。
純粋な『破壊』。
見ることさえできない眩さ。
ここまで届くその力強さ。
鼓動していた。
どちらの魔力も。
共鳴するかのように鼓動が大きくなっていた。
・・・なるほどな。
お互いがお互いを認めてるが故の、戦意の高め合い。
恐らく次の一撃で全てが決まるだろう。
「『最悪の雷』」
「『原初の炎』」
それは激しくぶつかった。
力の奔流のぶつかり合い。
そこに小細工などなく、純粋な力だけがあった。
そして、残ったのは。
「・・・引き分け。同列一位とする」
両方が満足そうに笑う姿だった。
§
「強くなったねフール」
「まだまだだよ!アダムを守れるようになるまで強くならなきゃ!」
あの後、明日のために休むように言われた僕らは僕の部屋で休んでいた。
それなりに魔力を使ったし、緊張したから疲れた。
つくもが枕替わりになってくれている。
もちろん隣に同じくつくもを枕にしているフールも寝てる。
「・・・私はベットでは無いのだがな」
「今度ボクがチョコ作ってあげるから許して?」
「む、ならば許そう」
「あ、僕も食べたい」
何気に、フールは家庭的な一面がある。
料理に関しては、僕の中でフールが1番だと声高らかに言える程度には高い技術だ。
お菓子作りもその一つで、どこからかレシピを拾っては再現し、それを僕達に振舞ってくれる。
そして、僕とつくもも、癖になってしまっていた。
「それにしても・・・僕とフール以外が弱いのか、僕とフールが強いのか・・・わかんないね」
「恐らく両方だろうな。私が見ていた感じでは、貴様らに勝てる人間はこの学園には居ない」
力では、とつけ足した。
まぁたしかに、騎士団長さんとか強そうだったし、僕はそもそも自分が最強だとは思ってないしね。
実際僕の枕より弱いし。
「まぁボク達も頑張ってるってことだよ!・・・最強になるためにね」
少し落ち着いた様子で言うフール。
その横顔を見ながら、やっぱり美人だなーとなんとなしに思う。
僕らは志は同じ。
僕らは未来も同じ。
そして、過去も同じ。
ずっとこれでいい。
お互いに強くなればいい。
・・・そして、二度と負けない強さを。
「フール」
「なぁに?」
「君は僕が守る」
「・・・私は貴方を守る」
「これは約束だ」
「これは契約」
お互いに一つ、笑を零す。
「・・・よく覚えてたね」
これは、あの日の誓い。
僕が、彼を喪った後、立てた誓い。
そしてまた、フールも同じように立てた誓い。
「当たり前でしょ?ボクは貴方の騎士。貴方はボクの騎士。違う?」
そう、屈託なく笑うフール。
僕はそれを見て、酷く安心してしまった。
「・・・そうだね」
その通りだ。
そしてまた、誘われるように、僕は眠りに落ちた。
§
「今日から序列戦の本戦だ。2人1組なのはわかっていると思うが、細かいルールは──」
今日僕とフールは全部で7組と戦う。
AクラスとBクラスで3組と4組という割合だ。
BまではSクラスに挑む権利があって、CはAクラスまでしか挑めない。
勝てば勝った相手とクラス交代、だ。
不戦勝でもそれは認められる。
だから、Sクラスと戦ったAクラスに挑戦するBやCクラスは多い。
だが、Sは特に秀でた者が入るクラスだ。
それを抜いて最高ランクなのがAなのだ。
勝てずにそのままの者も多い。
そして今回。
僕らの相手は。
「まぁ楽勝だよね!アダム!」
「そうだね、フール」
最低ランクまで、下がるかもしれない。
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