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第二章『学園と黒竜』
七話『圧倒的な力』
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「初戦!Sクラス アダム、フール対!Aクラスミーナ、フロウ、エイン!」
Aクラスは2人1組ではなく、3人1組だ。
Bクラスは4人1組になる。
少しでも力の差を・・・ということらしいが、Sクラスにとって人数は意味をなさない。
「見ててアダム、ボクがやる!」
そう意気込むフール。
ここで本気を出す理由は皆無なのだが、いいところを見せたいのだろう。
僕としても、僕の騎士の強さは見てみたい。
・・・なんてね。
「わかった。頑張って、フール」
「うん!」
戦意を引き出すフール。
怒りでも恨みでもなく。
戦意。
腰の刀を抜き、両手に持つ。
それをクルクルと器用に回しながら、相手を睨めつけた。
「1人7秒かなあ」
「くっ・・・」
その声に、悔しそうな声を出す対戦相手。
残念ながら名前はわからない。
分かっても覚えられないだろう。
僕はそう言う奴なんだ。
ちなみにつくもは狐の姿で頭の上だ。
めっちゃ可愛い。
§
クソっ!
よりによって序列同列一位の奴らかよ・・・!
Sクラスへの挑戦は相手が選べない。
というのも、いくらSクラスでもその属性に対する完璧な対策を取られれば実力を発揮できないからだ。
それは、学園としても望ましいことではない。
だからこそ、あらゆる魔法への知識や対策をしたかったのだが・・・
「雷魔法なんてどうやって・・・!」
文献も研究書も圧倒的に少ない。
もはや御伽噺レベルだ。
もう1人の炎はまだ対策ができる。
だが、満遍なく対策したせいで確実にダメージは受ける。
それも、神を身に宿しているのだから、そのダメージは普通の炎系統とは比にならない。
さらに言えば、雷魔法の対策なんて出来もしなかった。
・・・運が悪かった。
そう思うしかなかった。
「7秒かなあ」
そう、間の抜けた声が聞こえた。
前後の言葉がなくてもわかる。
それは、余裕の声。
「くっ・・・」
俺たち3人はAクラスではあるが、その実力はSクラスとは比較にもならない。
何人集まった所で、序列一位には勝てっこない。
俺らが狙っていたのは最下位の奴らだ。
俺たちでも多少可能性がある・・・
そう、思ったのに・・・!
『それでは!!対戦開始!!』
観衆が沸く。
ここはコロシアムと呼ばれる闘技場。
魔法や物理では死なないという魔法がかけられた場所。
本人の死が迫れば医務室へ転移される。
だからこそ、全力で戦える。
・・・のだが。
それは、相手も同じだった。
「うるさいね、周り」
「フール、もう始まってるから集中して」
フール。
皇国の皇魔騎士団No.2。
その勇姿を見たものは皆口々にこう言う。
『悪魔の演舞のようだ』と。
まだ正式な二つ名はないが、その界隈ではこのように呼ばれていた。
『炎の魔王』と。
炎の魔王とは、小さい頃から親に聞かされる最悪の魔王だ。
原初の魔王であり、始まりの魔物を作り出したとされている。
「さてと、行っくよー?」
両手の剣に炎を纏わせ、こちらへ走ってくる。
それなりに早い。
だが、さすがに全力では無いのか・・・?
そこに、一つの勝ち筋が見えたような気がした。
なめられている・・・!
その隙につけ込むしかない・・・!
「行くぞお前ら!俺が抑える!3方向から同時に叩くぞ!」
「「応っ!」」
それを聞いてニヤリと笑う『魔王』。
そして俺の目の前まで迫られ、包囲も完成した。
あとは俺が耐えるだけだ。
刀が振り下ろされ──
その瞬間。
俺は医務室で飛び起きた。
§
まぁ、そうなるよな。
フールの膂力は僕が雷を纏っている時のソレを超える。
防御なんか意味無いし、そもそも防御されないような技術さえある。
だけど、今やったのは。
ただ全力で振り下ろしただけ。
残ったのは、防御に失敗した真っ二つの剣だけ。
「さて、次ぃ!」
「ひっ!」
もう1人の男が逃げようとする。
フールはそれなりに足が早い。
僕は魔法を使って早く動けるが、フールはどっちかって言うと力が増える。
そして、フールは何より、剣速が異常だ。
僕でも避けられるかわからない程の速さ。
そして、防御不可の膂力。
だから、彼女は──
「きひひっ!」
真っ当に強いのだ。
§
最後の一人を医務室へ転移させたところで、トタトタとこちらへ走り寄ってくるフール。
ニコニコと、さっきまでの凶笑が嘘のようだ。
とても愛らしい顔でこちらを見る。
「どうだった?」
「凄い速さの剣だ。僕でも避けられるか・・・」
「ふふふ!縦には毎日振ってるからね!」
素振りの話だろうか。
確かに、あの日から毎日振っていたが・・・
今も振っているのか。
初心を忘れないとはこの事か?
・・・なんか違うな。
「さて、しばらく何も無いから、喫茶店でも行く?」
「!うん!行こう!」
つくもが口を大きく開けて欠伸をした。
なんとも平和だ。
・・・これが青春か。
「・・・中々、悪くない」
§
「なに?ファーストが殺られたのか」
「はっ。どうやら学園の生徒に捕まったようです。我々の情報も漏れていると考えて良いでしょう」
「奴にはそんなに情報を渡してはいない」
・・・学園の生徒、だと。
確かに、皇魔騎士団の2番手やらも居たが・・・
奴が負ける道理はない。
そもそも、奴は自ら手を下すような輩ではなかった。
・・・何かあるな。
「探れ。それらしき人間を見つけたならば、私自ら殺しに行こう。ボスには伝えておく」
「かしこまりました」
面倒だ。
国王の暗殺はまたも失敗。
・・・ボスには殺されたくはない。
即刻、首を持ってこなければ。
「・・・ひとまず黒竜だ。今はどれほど食らったのか・・・楽しみだ」
その笑みは、歪みなく。
真っ直ぐな闇を抱えていた。
Aクラスは2人1組ではなく、3人1組だ。
Bクラスは4人1組になる。
少しでも力の差を・・・ということらしいが、Sクラスにとって人数は意味をなさない。
「見ててアダム、ボクがやる!」
そう意気込むフール。
ここで本気を出す理由は皆無なのだが、いいところを見せたいのだろう。
僕としても、僕の騎士の強さは見てみたい。
・・・なんてね。
「わかった。頑張って、フール」
「うん!」
戦意を引き出すフール。
怒りでも恨みでもなく。
戦意。
腰の刀を抜き、両手に持つ。
それをクルクルと器用に回しながら、相手を睨めつけた。
「1人7秒かなあ」
「くっ・・・」
その声に、悔しそうな声を出す対戦相手。
残念ながら名前はわからない。
分かっても覚えられないだろう。
僕はそう言う奴なんだ。
ちなみにつくもは狐の姿で頭の上だ。
めっちゃ可愛い。
§
クソっ!
よりによって序列同列一位の奴らかよ・・・!
Sクラスへの挑戦は相手が選べない。
というのも、いくらSクラスでもその属性に対する完璧な対策を取られれば実力を発揮できないからだ。
それは、学園としても望ましいことではない。
だからこそ、あらゆる魔法への知識や対策をしたかったのだが・・・
「雷魔法なんてどうやって・・・!」
文献も研究書も圧倒的に少ない。
もはや御伽噺レベルだ。
もう1人の炎はまだ対策ができる。
だが、満遍なく対策したせいで確実にダメージは受ける。
それも、神を身に宿しているのだから、そのダメージは普通の炎系統とは比にならない。
さらに言えば、雷魔法の対策なんて出来もしなかった。
・・・運が悪かった。
そう思うしかなかった。
「7秒かなあ」
そう、間の抜けた声が聞こえた。
前後の言葉がなくてもわかる。
それは、余裕の声。
「くっ・・・」
俺たち3人はAクラスではあるが、その実力はSクラスとは比較にもならない。
何人集まった所で、序列一位には勝てっこない。
俺らが狙っていたのは最下位の奴らだ。
俺たちでも多少可能性がある・・・
そう、思ったのに・・・!
『それでは!!対戦開始!!』
観衆が沸く。
ここはコロシアムと呼ばれる闘技場。
魔法や物理では死なないという魔法がかけられた場所。
本人の死が迫れば医務室へ転移される。
だからこそ、全力で戦える。
・・・のだが。
それは、相手も同じだった。
「うるさいね、周り」
「フール、もう始まってるから集中して」
フール。
皇国の皇魔騎士団No.2。
その勇姿を見たものは皆口々にこう言う。
『悪魔の演舞のようだ』と。
まだ正式な二つ名はないが、その界隈ではこのように呼ばれていた。
『炎の魔王』と。
炎の魔王とは、小さい頃から親に聞かされる最悪の魔王だ。
原初の魔王であり、始まりの魔物を作り出したとされている。
「さてと、行っくよー?」
両手の剣に炎を纏わせ、こちらへ走ってくる。
それなりに早い。
だが、さすがに全力では無いのか・・・?
そこに、一つの勝ち筋が見えたような気がした。
なめられている・・・!
その隙につけ込むしかない・・・!
「行くぞお前ら!俺が抑える!3方向から同時に叩くぞ!」
「「応っ!」」
それを聞いてニヤリと笑う『魔王』。
そして俺の目の前まで迫られ、包囲も完成した。
あとは俺が耐えるだけだ。
刀が振り下ろされ──
その瞬間。
俺は医務室で飛び起きた。
§
まぁ、そうなるよな。
フールの膂力は僕が雷を纏っている時のソレを超える。
防御なんか意味無いし、そもそも防御されないような技術さえある。
だけど、今やったのは。
ただ全力で振り下ろしただけ。
残ったのは、防御に失敗した真っ二つの剣だけ。
「さて、次ぃ!」
「ひっ!」
もう1人の男が逃げようとする。
フールはそれなりに足が早い。
僕は魔法を使って早く動けるが、フールはどっちかって言うと力が増える。
そして、フールは何より、剣速が異常だ。
僕でも避けられるかわからない程の速さ。
そして、防御不可の膂力。
だから、彼女は──
「きひひっ!」
真っ当に強いのだ。
§
最後の一人を医務室へ転移させたところで、トタトタとこちらへ走り寄ってくるフール。
ニコニコと、さっきまでの凶笑が嘘のようだ。
とても愛らしい顔でこちらを見る。
「どうだった?」
「凄い速さの剣だ。僕でも避けられるか・・・」
「ふふふ!縦には毎日振ってるからね!」
素振りの話だろうか。
確かに、あの日から毎日振っていたが・・・
今も振っているのか。
初心を忘れないとはこの事か?
・・・なんか違うな。
「さて、しばらく何も無いから、喫茶店でも行く?」
「!うん!行こう!」
つくもが口を大きく開けて欠伸をした。
なんとも平和だ。
・・・これが青春か。
「・・・中々、悪くない」
§
「なに?ファーストが殺られたのか」
「はっ。どうやら学園の生徒に捕まったようです。我々の情報も漏れていると考えて良いでしょう」
「奴にはそんなに情報を渡してはいない」
・・・学園の生徒、だと。
確かに、皇魔騎士団の2番手やらも居たが・・・
奴が負ける道理はない。
そもそも、奴は自ら手を下すような輩ではなかった。
・・・何かあるな。
「探れ。それらしき人間を見つけたならば、私自ら殺しに行こう。ボスには伝えておく」
「かしこまりました」
面倒だ。
国王の暗殺はまたも失敗。
・・・ボスには殺されたくはない。
即刻、首を持ってこなければ。
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その笑みは、歪みなく。
真っ直ぐな闇を抱えていた。
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