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第二章『学園と黒竜』
十一話『一刀に臥す』
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目の前でアダムが吹き飛ぶ光景は、ボクにとって酷く心が痛む物だった。
あの魔力を受けてから、ボクはこの刀へ魔力を込めていた。
皇魔騎士団に入って初めてのダンジョンを攻略した時の戦利品。
魔刀『無名』
『無心』と同じような長さだが、その魔力伝導率は比べ物にならない。
無心に100魔力を流せば、50以上は段々と拡散してしまう。
しかし、無名へ100流せば99は拡散せず、さらにその魔力は溜まって行くのだ。
それは、どれだけ込める魔力が多くても変わらない。
だからこそ、ボクは。
延々と、その瞬間まで魔力を込め続ける。
いくら彼が傷付こうと、これを止めることはしない。
その一刀の為に。
「(ボクがもっと強ければ・・・!)」
たった1人でこの黒竜を屠れる程度に強ければ、彼はこんなにボロボロになる必要はなかった。
歩き方、立ち方が変だ。
恐らく骨も数本がイってるだろう。
筋肉も限界を迎え、パンパンに膨れているのが見受けられる。
「フール」
ふと、名前を呼ばれる。
ボクは魔力を全力で込めながら、その声に耳を傾けた。
彼が言うことは何もかもが正しい。
彼の言う事には絶対に逆らわない。
それは、彼と出会ってから、ボクの中での絶対のルールだった。
「次アレが来たら、決めるよ」
返事をせず、ボクはさらに込める魔力を増大させる。
それを振り向かずに頷き、彼は──
黒竜に向かって、駆けた。
§
速く。もっと速く。
もっともっともっともっと速く。
死ぬ気で走るんだ。
骨が折れ、肉が削れ、筋が捻れ、血が吹き出そうとも。
走れ。
ただ、走れ。
「──!!」
来た。止まった。
だが、僕は、止まらない。
普通に走る程度の速度だが。
奴は──黒竜は。
驚いたように固まっていた。
そして、尾が僕を打とうと迫る。
「────ぐ、あ、あ、あ、あ──」
声が出るのもゆっくりだ。
それを感じながら、僕はそれを受け止める。
瞬間、自由が戻った。
受け止めたまま、僕はそれを掴む。
ガッチリと、離さないように。
「うぉぉおおおおあぁあああああああああ!!!!!!」
『グルアアアアアアアアア!!!!!』
黒竜が踏ん張ろうとするが、無意味だ。
体術では僕の右に出る者は・・・いない。
僕はその巨体を、フールのいる方向へ投げ飛ばした。
「いっけえええ!!!フールぅうう!!!!」
「──!!!!」
物凄い速さでフールの所へ投げ飛ばされる黒竜。
空へ逃げられる事を懸念して先に翼を削っておいてよかった。
その勢いに抵抗出来ていない。
しかし、その瞬間。
──僕らの体は、動かなくなる。
フールは刀を上段に構えたまま、固まっている。
しかし、その瞳は。
──決して諦めていなかった。
「──!──!!──ぁ!」
体が、動く。
少しづつ、ちょっとづつ。
手を伸ばし、叫んだ。
「『解放』!!」
空間魔法とデバフの合成魔法。
それは、魔力を空間に馴染ませ、強制的に弱体化させる魔法。
そしてそれは、未だ未完成。
だから、歪ませられる。
僕の・・・ほぼ全ての魔力を使って、この空間は破綻させられる。
そして、その時が来る。
§
体の動きがゆっくりになる。
ボクはそれを感じながら、だけどアダムがどうにかしてくれることを信じていた。
彼はいつだってそうだ。
ボクが間違えそうになったり、危なかった時に、助けてくれる。
彼はボクの──
「『解放』!!」
──英雄なのだ。
視界が白く染まる。
しかし、することは分かっていた。
体に自由が戻る。
己が持つ最大の魔力を、この刀に込める。
「『ボクの剣』」
『ぎ、あああああああああああ!!!!!』
その一撃は、黒竜の頭蓋を叩き潰し、その熱によって体を溶かし、魔力すらも吹き飛ばした。
爆風と熱風が吹き荒れる。
しばらくして、風が収まり、雨が降り始めた。
クレーターへ倒れそうになり、しかし傍にいたアダムが支えてくれた。
「・・・お疲れ様。フール」
「・・・お疲れ様。アダム」
2人して、仰向けに倒れた。
顔を合わせ、ボク達は笑う。
声高らかに、爽快に。
よかった。これで──
「よもや、黒竜が殺られるとはな」
ゾクリとした。
嫌な汗が頬を伝う。
体を起こし、その声の主を見た。
得体の知れない魔力。
黒いフードを被った男だ。
アダムも険しい顔をしている。
「やっぱり、作られた魔物だったみたいだ」
「──気付いていたのか」
「予想だった。けど、確信に変わった」
アダムと男の会話。
黒竜の情報が齎された時、アダムは言っていた。
どうもおかしい、と。
襲撃のあった日に黒竜の情報が入り、アダムはそれをどこか意図されたように感じると言っていた。
・・・その時は恐らく、漠然とした疑問だったのだろう。
ボクはただ、運が悪いだけだと思っていたが。
「・・・やはり、ここで消すのが得か」
アダムが無心を持って立ち上がる。
ボクは魔力が空っぽになり、力が入らない。
アダムだって同じハズだった。
・・・クソっ!
絶体絶命。
それが、脳裏によぎった。
「死ね。クソガキ」
「──ッ」
瞬間、アダムの目の前に男が迫る。
アダムが防御の構えを取ろうとして、ダラりと腕を下げた。
その顔には、安堵の笑みが。
「やはり、来て正解だったか」
「・・・何者だ」
男が攻撃を受け止めた女を見る。
それは、白い長髪。
そして、白い着物。
その手にはいつの間にか、無名が握られている。
「つくもちゃん・・・」
「なんだ貴様ら、死に体ではないか」
狐の尾が十三本、目の前でフリフリと揺れる。
アダムの笑みの理由を知り、ボクも自然と笑を零した。
それを見た男が冷めた口調でこう言う。
「・・・神獣か。そこまでの人間なのか?そいつは」
ボクとアダムを見ながら言う。
つくもはそれに頷き。
「全力で守る程度には、な」
そう言って、男をはじき飛ばす。
「勝てると思うなよ。人間風情が」
その神獣は、不敵に笑った。
あの魔力を受けてから、ボクはこの刀へ魔力を込めていた。
皇魔騎士団に入って初めてのダンジョンを攻略した時の戦利品。
魔刀『無名』
『無心』と同じような長さだが、その魔力伝導率は比べ物にならない。
無心に100魔力を流せば、50以上は段々と拡散してしまう。
しかし、無名へ100流せば99は拡散せず、さらにその魔力は溜まって行くのだ。
それは、どれだけ込める魔力が多くても変わらない。
だからこそ、ボクは。
延々と、その瞬間まで魔力を込め続ける。
いくら彼が傷付こうと、これを止めることはしない。
その一刀の為に。
「(ボクがもっと強ければ・・・!)」
たった1人でこの黒竜を屠れる程度に強ければ、彼はこんなにボロボロになる必要はなかった。
歩き方、立ち方が変だ。
恐らく骨も数本がイってるだろう。
筋肉も限界を迎え、パンパンに膨れているのが見受けられる。
「フール」
ふと、名前を呼ばれる。
ボクは魔力を全力で込めながら、その声に耳を傾けた。
彼が言うことは何もかもが正しい。
彼の言う事には絶対に逆らわない。
それは、彼と出会ってから、ボクの中での絶対のルールだった。
「次アレが来たら、決めるよ」
返事をせず、ボクはさらに込める魔力を増大させる。
それを振り向かずに頷き、彼は──
黒竜に向かって、駆けた。
§
速く。もっと速く。
もっともっともっともっと速く。
死ぬ気で走るんだ。
骨が折れ、肉が削れ、筋が捻れ、血が吹き出そうとも。
走れ。
ただ、走れ。
「──!!」
来た。止まった。
だが、僕は、止まらない。
普通に走る程度の速度だが。
奴は──黒竜は。
驚いたように固まっていた。
そして、尾が僕を打とうと迫る。
「────ぐ、あ、あ、あ、あ──」
声が出るのもゆっくりだ。
それを感じながら、僕はそれを受け止める。
瞬間、自由が戻った。
受け止めたまま、僕はそれを掴む。
ガッチリと、離さないように。
「うぉぉおおおおあぁあああああああああ!!!!!!」
『グルアアアアアアアアア!!!!!』
黒竜が踏ん張ろうとするが、無意味だ。
体術では僕の右に出る者は・・・いない。
僕はその巨体を、フールのいる方向へ投げ飛ばした。
「いっけえええ!!!フールぅうう!!!!」
「──!!!!」
物凄い速さでフールの所へ投げ飛ばされる黒竜。
空へ逃げられる事を懸念して先に翼を削っておいてよかった。
その勢いに抵抗出来ていない。
しかし、その瞬間。
──僕らの体は、動かなくなる。
フールは刀を上段に構えたまま、固まっている。
しかし、その瞳は。
──決して諦めていなかった。
「──!──!!──ぁ!」
体が、動く。
少しづつ、ちょっとづつ。
手を伸ばし、叫んだ。
「『解放』!!」
空間魔法とデバフの合成魔法。
それは、魔力を空間に馴染ませ、強制的に弱体化させる魔法。
そしてそれは、未だ未完成。
だから、歪ませられる。
僕の・・・ほぼ全ての魔力を使って、この空間は破綻させられる。
そして、その時が来る。
§
体の動きがゆっくりになる。
ボクはそれを感じながら、だけどアダムがどうにかしてくれることを信じていた。
彼はいつだってそうだ。
ボクが間違えそうになったり、危なかった時に、助けてくれる。
彼はボクの──
「『解放』!!」
──英雄なのだ。
視界が白く染まる。
しかし、することは分かっていた。
体に自由が戻る。
己が持つ最大の魔力を、この刀に込める。
「『ボクの剣』」
『ぎ、あああああああああああ!!!!!』
その一撃は、黒竜の頭蓋を叩き潰し、その熱によって体を溶かし、魔力すらも吹き飛ばした。
爆風と熱風が吹き荒れる。
しばらくして、風が収まり、雨が降り始めた。
クレーターへ倒れそうになり、しかし傍にいたアダムが支えてくれた。
「・・・お疲れ様。フール」
「・・・お疲れ様。アダム」
2人して、仰向けに倒れた。
顔を合わせ、ボク達は笑う。
声高らかに、爽快に。
よかった。これで──
「よもや、黒竜が殺られるとはな」
ゾクリとした。
嫌な汗が頬を伝う。
体を起こし、その声の主を見た。
得体の知れない魔力。
黒いフードを被った男だ。
アダムも険しい顔をしている。
「やっぱり、作られた魔物だったみたいだ」
「──気付いていたのか」
「予想だった。けど、確信に変わった」
アダムと男の会話。
黒竜の情報が齎された時、アダムは言っていた。
どうもおかしい、と。
襲撃のあった日に黒竜の情報が入り、アダムはそれをどこか意図されたように感じると言っていた。
・・・その時は恐らく、漠然とした疑問だったのだろう。
ボクはただ、運が悪いだけだと思っていたが。
「・・・やはり、ここで消すのが得か」
アダムが無心を持って立ち上がる。
ボクは魔力が空っぽになり、力が入らない。
アダムだって同じハズだった。
・・・クソっ!
絶体絶命。
それが、脳裏によぎった。
「死ね。クソガキ」
「──ッ」
瞬間、アダムの目の前に男が迫る。
アダムが防御の構えを取ろうとして、ダラりと腕を下げた。
その顔には、安堵の笑みが。
「やはり、来て正解だったか」
「・・・何者だ」
男が攻撃を受け止めた女を見る。
それは、白い長髪。
そして、白い着物。
その手にはいつの間にか、無名が握られている。
「つくもちゃん・・・」
「なんだ貴様ら、死に体ではないか」
狐の尾が十三本、目の前でフリフリと揺れる。
アダムの笑みの理由を知り、ボクも自然と笑を零した。
それを見た男が冷めた口調でこう言う。
「・・・神獣か。そこまでの人間なのか?そいつは」
ボクとアダムを見ながら言う。
つくもはそれに頷き。
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