数ある魔法の中から雷魔法を選んだのは間違いだったかもしれない。

最強願望者

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第二章『学園と黒竜』

閑話『フールの将来設計!?』

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ここは、皇国の王都である『エスカテート』。
そのギルドハウスの一室。
皇魔騎士団は法皇公認のギルドだ。
そしてその恩恵は、ギルドハウスと呼ばれる拠点を持つことを許されるまでに至る。
そして副団長であるボクは、そこそこ広い部屋を与えられていた。
そこには、最低限の生活のための家具と、果てしない量の絵が飾ってあった。
どれも同じような絵だ。
そしてどれも、1人の男の姿を描いていた。

「──あぁ・・・アダム・・・ボクは君がいないと生きていけないよぅ・・・」

泣きそうになりながら、机に向かう。
先程帰還の報を出し、法皇もそれを頷くだけで許してくれた。
・・・本当はもう少しあちらにいる猶予はあった。
だが、離れる瞬間が長引けば長引くほど、ボクもアダムも、苦しくなると思ったから。
だから、すぐに出た。
帰る前の日には豪華なレストランでディナーを楽しんで、2人で夜景を見に行ったりもした。
黒竜討伐のパーティーには行かなかったけど、アダムと一緒だったら、とてもロマンチックだったのではないかとも思える。
いや、そうとしか考えられない。
アダムはそういうことに疎いように思えて、実はとてもロマンチストなのだ。
あのデートだって、彼からの誘いだ。
・・・とても、落ち着いている。
それは、小さい頃から変わらない特徴だった。

「さて、と。新しい絵を描かないと」

この部屋を見たら、どんな反応をするだろうか。
顔を顰めて、ボクを罵倒する?
・・・ちょっと良いかもと思ってしまったが、彼に限ってそんなことはしない。
恐らく・・・というか、絶対笑顔で『すごい』って褒めてくれる。
だからボクは、彼の事が好きなのだ。

「ふんふんふーん」

色々な角度や表情、雰囲気や感情を感じてきた。
特に変わった様子もなく、彼はボクの好きな彼のままだった。
・・・それがとても、嬉しかった。
でもアダム、ごめんよ。
ボクは変わってしまった。
でもそれは、君のせいだからね?
こんなに愛おしいんだから、狂ったっておかしくないよね?
・・・ここまで考えても、彼が拒絶するイメージは湧かない。
・・・ふふ。ボクってばそんなに信頼してるんだぁ。


しばらく満足するまで絵を描いて、新たなその1枚を壁に飾る。 
そして、黒竜討伐の際にアダムと半分こにした報酬を机に広げた。
金貨四千枚と、白銀貨七百枚。
下から鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白銀貨だ。
鉄貨は1ギル(世界共通通貨)、銅貨は10ギル、銀貨は100ギルと桁が一つずつ上がる。
金貨の量が極端に多いのは、単純にボクがそうお願いしたからだ。
少し小さい額の方が分けやすいからね。

「えーっと・・・これが当分の食費で・・・武器と防具費用で・・・これが──」

金貨四千枚の内、千枚を皮袋へ入れる。
残りを全て、頑強な金庫に入れた。
それは、魔具の1つ。
外から見たモノより中が異常に広く、その扉は登録された魔力でのみ開く。
中を確認すると、そこには莫大な財産が。
これは、ボクのオリジナル魔具。 
そして、中身はボクとアダムの『結婚費用』。
これだけあれば、なんでも出来る・・・

「うぇへへ・・・」

これを見せたらきっと、あんまり表情の変わらないアダムでも驚くだろうなあ。
でも見せるのは、結婚してから!
・・・まぁ、殆ど確定だとは思ってるけどね。

「よし。疲れたから素振りしよう!」

あっちに居た時はアダムに見られないように朝早くにやっていた。
アダムは1度寝ると朝まで起きない。
かと言って、触ったり声をかけると起きてしまうのだ。

「──1047、1048、1049──」

1日三万。
上から下へ。
片腕でも二万回づつ。
ボクはあんまり筋肉はつかないけど、内在筋力?ってやつが凄く付いている。
多分膂力ならアダムにも負けてない。

「ふぅ・・・」

ノルマを終え、汗一つかかずに息を整える。 
目標は決まった。
とりあえず、災害級を瞬殺できる程度には──
ボクはならなくてはならない。

「──子供は3人で~男の子1人と女の子2人で~山奥の方にひっそり暮らして~たまーに王都に連れてきてあげて~」

でも、もう少し。
もう少しだけ、夢を見たい。
アダムは・・・うぇへへ・・・
何人子供が欲しいかなぁ?

「今のうちから服編まなくちゃ!」

その光景は、何ら異常はない、はず。
ただ、どうしてか。

「ふふふ♪」

何も無いはずの部屋が、とても華やかに見えた。

§

「おい!そっちに逃げたぞ!追え!」

「3号と92号が逃げたぞ!!追いかけろ!!」

白い拘束着。
腕と足は皮ベルトで縛られ、身動きが取れない。
そんな私を、みーちゃんが抱えて走る。

「あそこだ!!殺せ!!」

「『だ、めぇっ!!!』」

私と、みーちゃんを狙う『わるいひとたち』。
その『すごいちから』が見えて、私は咄嗟にそれを出してしまう。
みーちゃんが言ってた。
『それは、守る為の力なんだよ』って。
だから、私は!
みーちゃんと、私を守るんだ!

「『死んじゃえ!!』」

爆ぜる肉塊の後花火に追われ、2人は走る。
一人は、度重なる人体実験により、産み出された『クリーチャー』。
一人は、度重なる魔法実験により、産み出された『超能力者』。

その運命の歯車は、ようやく回り始めた。
ぐるり、ぐるりと。

「ぎゃあああああ!!!」
「くそっ!!誰か止めろぉぉお!!」

「『みーちゃん!!』」

『行こうか。キュー二』

「『うん!』」

そして、カチリと、噛み合った。
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