数ある魔法の中から雷魔法を選んだのは間違いだったかもしれない。

最強願望者

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第三章『地下ダンジョンと禁忌の実験』

プロローグ『生徒会』

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単刀直入に言おう。
僕は今、上級生のSクラスと対峙している。
ここはそう、またまたコロシアムだ。
そして目の前には、生徒会副会長兼風紀委員長が居る。
その目には、怒りと疑惑があった。
なぜこんなことになったかと言うと・・・
あれはそう、フールを見送ったあとの話だ。

「おい、貴様。貴様の部屋に女が出入りしてるという情報がある。詳しく聞かせてもらおうか」

「え、と?貴女は?」

「私の事はいい。答えろ。不埒なことをしていたのか?」

唐突な質問。
というか詰問。
僕は少し混乱しながらも、やっぱりダメだったのかな・・・?と思いながら答えた。
なるべく悲痛そうに顔をゆがめて。

「そんな・・・彼女は僕の家族なんです。不埒でもなんでもありません」

「──そうか。来い。制裁を与えてやる」

・・・そうだ。
なにか確信を得た顔でここまで連れてこられたのだ。
自己紹介されて聞いたのは、3年Sクラスで、生徒会の副会長で、風紀委員長をやっている事だけだった。
名前は・・・・・・忘れてしまった。

「留学先から帰って早々にこうなるとはな・・・」

え、この人が皇国との交換留学生?
・・・なるほど、なるほど。
なんか、優等生!って感じするな。
なんでもいいけど、フールに会いたくなってきた・・・

「──貴様ァ!私を前にしてなんだその顔は!!その性根!叩き直してくれる!!」

「え、えぇ~・・・」

足元でつくもがこちらを見ている。
・・・え、守ってくれんの?
考えを読み取った僕に頷くつくも。
・・・よし。僕は今回は傍観しよう。

「行くぞ、変態」

「いや、それは僕としても否定したいところなんですが──」

瞬間、目の前の女性が消える。
いや、意識外に一瞬で移動した・・・のか。
縮地という技にとても似ている。
アレは魔力無しでやると難しいんだ。
すごいなぁ。

「・・・!?なんだ、その狐・・・私の剣を止めるとは、只の狐では無さそうだ」

つくもが頭の上で丸くなり、十三尾をゆらゆらと揺らしている。
背後から迫った剣を、尾で軽く防いでいた。
魔力無しでここまでの剣速、技術は中々すごい。
見た感じ風属性だし、もしかしたら僕より速いのかも?
・・・風は雷より早くないか。

「・・・・・・」

こちらを、というか、つくもを見つめる副生徒会長。
その緑の髪を風に任せ、強い眼差しは油断なく、しかし探るようにこちら見る。

「・・・使い魔か。しかし、ただの使い魔ではなさそうだ・・・」

そう話しながら、また背後へ回って剣を振るってくる。
そして、前、右、左、また後ろ。
等々、絶え間なく攻撃を続けられる。
正直なことを言おう。
・・・すごく弱く見える。
強い。確かに強い。
魔力を使っていないにも関わらず、この強さは果てしないと思った。
武術。
それが、この女性の強さ。
・・・だけど。
それも、神には届きえないものらしい。
欠伸をこぼすつくもを見れば、一目瞭然だった。

「ちょっとー!!なーにしてんのよ!!」

「──か、会長!?」

突然、5人の男女が乱入する。
──分かる。まぁまぁ強い。
会長と呼ばれたピンク髪で僕より頭一つ分背が低い女性が、僕を見上げながら首を傾げる。

「・・・・・・もしかしてもしかするけど。アダム君って君のこと?」

「えぇ、まぁ。どうも」

「うっわぁ!!ごめんなさい!!ほら、副会長も謝って!!新しい生徒会候補だよ!!」

「──すみませんでしたぁ!!!」

・・・唐突な手のひら返しに、僕もつくもも驚く。
会長(仮)は僕に手を差し出し、申し訳なさそうに笑う。
首の後ろをつつかれた。
僕は手を出さず、ニッコリと笑った。

「いえ、怪我はありませんよ。使い魔が防いでくれましたから」

興味を失ったかのように頭の上で丸くなり、尾を揺らすつくもを指す。
・・・この人、今なにかしようとしたな。
つくもが首裏をつつかなければ、気付かなかった。

「・・・・・・そっかぁ。ごめんね?ウチの脳筋が突っ走っちゃって?」

「いえ、本当に大丈夫ですから」

「ごめんねぇ・・・今度生徒会室においで?お詫びするからさぁ」

「えぇ、そのうち」

適当に相槌を打って、僕は部屋へ戻る。
あれは・・・うん。
フールと同じ匂いがする。

§

気付かれるとはなぁ。
いくら警戒してるからって、私の笑顔に見とれて大抵の男なら握るんだけど・・・
力量も測れなかったし・・・
あの狐ちゃんも相当だしなぁ。
困った困った。

「会長、ただいま戻りました」

「おかえり、副会長。さっきはありがとね」

「!?い、いえ、勿体なきお言葉・・・」

生徒会は、会長が絶対の組織。
それは、永遠に変わってはいけない。
特に、私が会長である間は。

「どうしようかなぁ。あの子」

疑い百パーセントの目だった。
あれは・・・難しい。
小さい頃から、疑いを貫いてきた目だ。
人間生活を出来てるのが不思議なほど疑っている・・・ように見える。
けど、フールって子と、狐ちゃんには信頼の目を向けていた。
・・・・・・慣れじゃあない。
・・・なんだろう?
愛かな?

「じゃあ私に惚れさせればいいか!」

簡単な話だ。
私は可愛いし、完璧だから。
最悪、ねじ伏せればいい。
でもやっぱり、自分から服従してくれた方がこちらとしてはとても気持ちがいい。

「あー楽しみ!」

あの目がハートに変わるのがね。

§

フールの言う通り、会長は油断ならぬ相手だ。
『アダムをよろしくね。つくもちゃん』そういった奴の目に信頼はなく、当たり前かのように言い放っていた。
・・・よもや番犬扱いか?私は・・・
餌付けされていたのは否めないが・・・

あの小娘は、恐らく魅了の魔法(スキル?)が使えるようだ。
手に触れていれば恐らく、アダムはフールと同レベルの好意を奴に寄せるだろう。
・・・なにせ、アダムの事だ。
そういう感情にも疎いような気がする。
それも、フールに対すれば絶対の信頼があるのだが・・・
今回は何故か、危機感を感じた。

『(あれが魔女という奴か・・・)』

フールとは違う。
別の気味悪さを感じた。
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