数ある魔法の中から雷魔法を選んだのは間違いだったかもしれない。

最強願望者

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第三章『地下ダンジョンと禁忌の実験』

十六話『帝国へ』

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「・・・・・・えーと」

「起きたかお前様」

傷が治っている。
つくもの力だろう。
よかった、銀も治してくれている。
そしてどうやら、負けたようだ。
・・・また、負けちゃったか。

「はぁ・・・ごめん、つくも。レヴィ」

「よい。貴様は弱い。ならば強くなれば良い。私やレヴィアタンも居る。・・・そして、こいつもな」

『とても凛々しく、尊い戦いで御座いました!さすがお父様です!』

「あれ、優しさに泣けるな・・・」

これっぽっちも出ない涙を拭き、僕の頭の下にある感触に意識を向けた。
そして、上から顔を覗く銀の姿も。
・・・膝枕ってやつか。
フールにも良くしてもらっていたなぁ。

「オレは今日から銀だ。お前様の番として、世話になる」

「なんだ銀、旦那様と呼ばないのか?」

「バッ!姐さん辞めてくれよ!は、恥ずかしいじゃねぇか・・・」

顔を真っ赤にして僕の目を抑える銀。
・・・・・・・・・ちょっと理解できない。
え?・・・え?
つまり、何?
返事OKされちゃったってこと?
・・・うっそぉ。
会って数時間ですけど・・・?
なんなら一日も経ってませんけど・・・
まぁ、僕の懐は広いのでね。
全員養って見せるぜ。
・・・なんてね。

「・・・お姫様は?」

「それがなぁ・・・アイツらちょっと見るに耐えなくてな・・・」

──思考が停止した。
嘘、だろ?
僕の一撃で、え?まさか。
死んだ──のか?

「あ、お前様・・・」

名残惜しそうな銀の頭を撫で、僕は半ば放心状態で馬車へ向かう。
そして、少し近付いて。
馬車が少し揺れていることに気付いた。
そして、小さく聞こえる嬌声も。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ。

「これだから、王族とか貴族は嫌いなんだよ」

「妹の方は純粋らしいがな。あの姉はダメだ。初めから貴様に色目を使っていたしな」

『あの女も臭かったんですよ。お父様の手前、言えませんでしたが』

たしかに、目の前で言うのはね・・・
というか、えぇ・・・
マジかよ・・・
なんか、うん。

「もう少し、寝ていい?」

「──お前様!枕ならこっちへ来るといい!」

「つくも、毛布」

「嘘だろ・・・?」

ブツブツ言いつつ、小さめの狐になって寝転がった僕の上に乗るつくも。
レヴィには周囲の警戒と残党処理を頼む。
ついでに、何も近付けるな、と。
頷き、小さな蛇になってつくもの上にとぐろを巻いた。
・・・はぁ、なんか。
護衛面倒くさくなってきた。

§

帝国とは、またの名を『傭兵国』と言う。
元は傭兵だった現国王が、前国王を殺し、国を奪い取った。
ただ強い。
そういう王だ。
前国王の娘を妃に迎え、子にも恵まれているという。
5人の王子に5人の娘。
妾がいないというのが不思議なほど、子宝に恵まれている。
傭兵の血というものは、中々争えないようで。
権威を争うことはなく、兄弟の中では最強かつ最高と名高い長男が継ぐことになっているらしい。
他の兄妹達も、その右腕として国に尽くすという、誓いが立てられているらしい。
つまりだ。
外者そとものに厳しいということ。
しかし、嫁を探しているのも事実。

「・・・・・・つくも、まだヤってる?」

「あぁ。あの運び屋・・・死ぬんじゃないか?」

今僕が座っているのは、馬を操る場所。
なんて言うのか残念ながら知識はないが、そこに座っている。
左からつくも、僕、銀の順だ。
レヴィは僕に巻きついて、馬の操作を助けてくれている。
握ってるだけで言うことを聞くのだ。
・・・恐怖からかも、しれないけど。

なぜ、僕達がこっちに座っているか。
わかる人は分かるかもだけど、馬車の中では『命の危機を感じて子孫を残す欲求が限界に達した男』と『慈悲に満ちた女神のような姫』が情事を行っているから、だ。
妹君にとりあえず危機が去った事を伝え、中入りたくないから僕らが帝国まで馬車を操って行くと伝えたのだ。
妹君が凄く疲れた顔で、青い顔だったのは言わなくてもわかると思う。

「はぁ・・・」

音は聞きたくないから、わざわざつくもに音を遮断して貰っている。
・・・つくもが便利キャラになっているような・・・
まぁ、変わらず大事な仲間だ。
なんとなしに、右腕に絡みついている銀を撫でる。
さっきまでの殺意の目は消え、そこにはただの可愛らしいペットが居る。
もちろん人型だ。
服を着てないのは頂けなかったので、レヴィの創造魔法でワンピースを作ってもらった。
真っ白なワンピースだ。
正直、最高に可愛い。
今度フールにも着せてあげよう・・・

「4日かかるんだっけ?先は遠いなぁ・・・」

「そうだな・・・お前様、修行するか?」

銀はぶっちゃけ最高の修行相手だ。
つくもを姐さんと呼ぶのは、それだけ力の差があるからだ。
レヴィの事は『かみさま』と呼んでいる。
僕より少し強くて、最高に修行相手にピッタリなのだ。
あんまり命懸けでもないしね。
まぁ、フールに比べれば・・・
それは言わない約束だ。

「うーん。とりあえず、超能力使えるようになりたいな」

§

「・・・・・・そうなの?次の『候補』の護衛ってのがアダムって奴なの?」

「らしいぜ帝王?どうやら、和睦を結びてぇってのは、本当らしい」

今回の見合い・・・それは、相互不干渉の交渉も兼ねている。
それはあちらの国王からの言葉。
お互いに手を取り合う時代が来た・・・などと謳っている。
俺は王になって初めて、その言葉の重さを理解した。
国の王としての、責任。
そして強さ。
正直国政は嫁に任せとけば全てなんとかなる。
そのかわり、自由を約束しているしな。
俺の目的は既に達した。
あの女はもう殺してもいいかもな・・・
いや、体裁というのは必要か。
優秀な臣下が現れるまでは待たなければ。

「・・・・・・しかしまぁ、なんでランクAのレベル6なんかを?」

「しかし黒竜を皇魔騎士団の副団長と討伐したらしいしな」

アダム。
未だ素性の知れない少年だ。
その出生は不明。
皇国のフール副団長の幼馴染であり許嫁との噂もあるが。
なにより、皇国の最上級の強さを持つフールと肩を並べる存在だと言う。
しかも、そいつは。
『かみさま』が言っていた奴の可能性もある。
あの男は、アダムという存在に妄執していた。
アダムと同様の存在を作り出す事に固執していた。
・・・怪しい。
それだけじゃない。
実験体も、アダムと接触した可能性かあるとも言っていた。
奴は一体何がしたいのだ・・・?

「・・・あまり事を荒らげたくはないが、どうせなら手合わせ願いたいな」

「だな。帝王、俺にも殺らせろよ?」

「わーかってるって」

この親子は。
この王族は。
数多くの貴族を全て処刑し、前王族も妻だけを残し、全て処刑している。
全ての『闇』と共に、屠ったのだ。
そして、まっさらになった国は、あまりにも自由だった。
帝王の知り合いである傭兵などは全て現騎士団として帝国中に散布され、領土なども、傭兵が管理している。
犯罪は全て否定し、どんな軽い罪でも極刑であった。
だから、成り立っている。
この20年間、この国では1度も犯罪らしい犯罪は起きていない。

「・・・さて、今回はどうかな」

戦争という、大罪以外は。
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