数ある魔法の中から雷魔法を選んだのは間違いだったかもしれない。

最強願望者

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第四章『過去と試練』

プロローグ『第零話』

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世界地図から見て『極東』の国。
それに名はなく、国自体では一つとして数えられない。
国の中にある領地によって、名が違うのだ。
更には領土の奪い合いにより領土が狭まったり広くなったりする。
だから仕方なく、これは一つの国として。
しかし名もなき国として記される。
そこの住民は仁義を重んじる侍と呼ばれる戦闘民族で、女子供以外は相当な手練であるのが普通らしい。
他国からの旅人は拒まないが、少しでも疑われると終わりだ。
・・・そう、今みたいに。

「大人しくしていてくれ。命までは取らない」

「はい。僕は身の潔白を信じてここに居ます」

「助かる」

つくもがよく着ていたそれとは違うが、似たような着物を着た男が僕を牢屋へ入れる。
ここはどこかの独房。
僕の『始まり』として選んだ国に入り込んだのは良いものの、ダンゴ?とやらを食べていたら捕らえられてしまった。
どうやら機密文書を盗んだシノビ?と間違えられているらしい。
・・・確かに僕は黒髪だし、この国が普通は黒髪だとしても。
まさか同人種に間違えられるとは。
ちょっと嬉しい。
そこまで思考を回して、僕は背後に居る存在に気付いた。
懲罰房のようで、僕のことを殺る気満々だと思っていたが、どうやら先客が居たようだ。

「・・・やぁ。──原点はじめ。君は・・・あー。喋れるか?」

僕の目の前にいる少年を見やる。
裂傷に次ぐ裂傷。
打撲跡に次ぐ打撲跡。
あらぬ方向に曲がっている足と腕。
そして、その顔。
パンパンに腫れ上がっている。
こちらを恐れと興味の目で見ている。
・・・ふむ。
なんか、闇深だな。

「は、初め、まして・・・僕は、命です。発散係を、しています」

あぁ、なるほど。
彼はこの独房で、このクソ野郎どもの感情の捌け口にされているのか。
しかも、回復すらさせて貰えていない。
場合によってはその方が辛いが。
これを見るに、そうは言ってられないだろう。
どう見たって死に体だし、足の先端が壊死している。
・・・見るに堪えないな。

「ちょっと待ってろ。今治してやるから」

僕は命に手を翳し、それを唱える。

「『悲しみを断ち、その魂を正常に導け。彼の者の名はアダム。彼の者の名は原点。哀れな者の名は命なり』」

みるみるうちに、体が再生する命。
それを不思議な様子で見つめ、やがて完治するとぺたぺたと地面を触っている。
・・・それで、正常かどうかが分かってしまうほど、重傷だったのだ。
よく、生きていたものだ。

「ありがとう、ございます。はじめ様」

「うん。礼と言っちゃあなんだけど、なんでここに居るのか教えて貰える?」

「・・・僕は──」

話してくれた内容はこうだ。
彼は名家の末弟で、しかし1番の落ちこぼれだと言う。
魔力も心力(恐らく度胸とか根性とか)がなく、刀すら与えられずにここへ売られ、それ以来十数年間サンドバッグ状態なのだそうだ。
この国は産まれた時に、刀を渡される。
僕らがいた国で言う、魔力の契約みたいなもので、一生その刀を使って戦うという、産まれた家への宣誓があるらしい。
しかし、その刀すら折られ、産まれた事実と共に抹消されたそうだ。
・・・胸糞悪いが、さて。

「でもなんで、魔力と心力がないって分かったの?」

「この国には『巫女』と呼ばれる神の言葉を聴く存在が居ります。その巫女に産まれた僕を見せた時に、判明した・・・と推測します」

なるほど、分からないと答えない辺り優秀だ。
・・・本当に出来損ないなのか?
生まれて直ぐにここで育ったと言う割には、やけに言葉遣いや知識がある。
まぁ、いいか。
どうやら家には捨てられたようだ。
僕もちょうど、寂しくなってきた所だ。
・・・命なら、大丈夫かな。

「来るか?一緒に」

「──え?」
 
「君は優秀だ。俺が君を鍛えよう。俺が君に教えよう。だから、共に行かないか?」

僕の言葉に目を丸くする命。
別に他意はないさ。
僕は単純に彼を助けたいと思ったし、彼はきっと・・・勘だけど、役に立つ。
少ししか話をしてないけど、僕はここに来るまでに色んな人を見た。
少しは人を見る目、あると思う。多分。

「・・・貴方様の本当の御名前を、お聞きすることをお許し願います」

その言葉に、僕の方こそ驚いて目を丸くする。
・・・なんだ。
一生懸命(3秒)考えた名前、要らなかったな。
いや、この国ではこの名前でやってこうかな?

「──僕の名はアダム。強さを、求めている」

「あぁ・・・アダム様・・・私の名は紅葉 命。この命、この魂、貴方様に捧げましょう。どうか、お供する事をお許し下さい」

「願ったり叶ったりだ」

こうして僕は、命という仲間を手に入れた。
誰も知らない、その物語。
まだ始まらない。物語は。
この先ずっと、止まらない。




プロローグ第零話のまま、進み行く。





§

その男は、神に嫌われし者。
巫女に忌み嫌われ、親にすら捨てられた少年。
その国で、忌み子はこう呼ばれる。
『鬼』と。
彼は何もしていない。
彼は何も知らない。
彼が忌み子たる所以は、その刀なのだ。

彼は神に嫌われている。
その理由は、神の力すら必要としない、その力にある。
彼が産まれた時に打たれた刀は、妖刀だった。
だからこそ、彼は蔑まれ、捨てられた。

だが彼は、それを知らないながらも許していた。
仕方が無いと、思えていた。
なぜならそれは、今日の為。
いずれ出会うであろう、最高の主人の為。
信じていた主を、見つけた為。
いつか許せるであろうそれを、先に許していた。
そしてその願いは。
それが報われる時が来た。
そう、それは。

──最高の主人が、現れたのだから。











これは始まりではなく、終わりでもない。
過去は消えないし、記憶は残る。
だからこれは、終わらない物語第零話

主君の為の道筋プロローグ
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