数ある魔法の中から雷魔法を選んだのは間違いだったかもしれない。

最強願望者

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第四章『過去と試練』

第二話『機械仕掛け』

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僕は今、1人でダンジョンに潜入している。
と言っても、許可とか元々必要ないから、潜入と言っていいのかは分からないけど・・・
命には先に、大和国に僕らの情報・・・もとい、指名手配が回っていないかを探ってもらっている。
彼を仲間にして良かった。
僕一人なら、とっくに捕まっていただろう。

カチリ。カチリ。

一定の間隔で、歯車が回る音がする。
足元から、頭上から。
通路の壁からも音がする。
そしてそれは、決して不思議でもない。
露出された何らかの機械。
ダンジョンとは色々な種類がある。
水棲系モンスターの多いダンジョン。
植物系モンスターの多いダンジョン。
死霊系モンスターの多いダンジョン。
獣系モンスターの多いダンジョン・・・などなど。
ここはその中でもかなり珍しい。
機械系のダンジョンだ。
本当に珍しい。
僕が資料で知っている限りでは──ここが未発見ならばだが──3つ目のダンジョンとなるだろう。

「・・・キリキリキリ」

妙な静寂と、機械の音。
機械系のダンジョンの特徴として、出てくるモンスターは全て人工の物に見える。またはそのものらしい。
まぁ、珍しいから入ってるんだけども・・・

「よっ・・・と。魔法に完全に耐性がある・・・」

なるほど、だから放置されていたのか。
この国の人間は大体が物理での戦闘を好む。
そう、刀だ。
魔力は補助程度に考え、生涯剣を極めるらしい。
是非とも教わりたいものだ・・・が。
それは叶わないかも、な。
ともあれ、まずはここの攻略だ。

「ふぅ・・・静かだし殺気がないから回避しずらいな・・・」

機械系のダンジョンが最初に見つかったのは、ちょうど500年前。
それは、街だったという。
あらゆるモンスターを複製した機械のモンスターが守る、街だったらしい。
ただし、人間は居らず。
古代の人間のシェルター的な物だったと考察されている。
・・・でも、長い歴史の中で制御の方法は伝わらなかった・・・と。
それで良かったのかもしれない。
それが良かったのかもしれない。
それを手にした『人間』が、国同士の戦争に使わない理由はない。

「──っと。ほんとに厄介だな・・・」

壁や床の機械に合わせて動いているかのように、音が完全に一致しているから、攻撃が分かりにくい。
まぁ、風切り音で何とか・・・わかるけども。

「ふぅ。こりゃ僕だけだと厳しいなぁ」

だからこそ。

殺りがいがある。

§

『侵入者ヲ感知。防衛レベルI突破。防衛レベルIIヲ開始シマス』

・・・また、迷い込んだのですか。
コレが目を覚ましてから、500年と3日14時間23分経ちましたが、これで迷い込んだ人間は三人目です。
2人は逃しましたが、これ以上はまずい。
創造主マスターが御帰りになった時に、怒られてしまいます。
あるいは、御怒りだからこそ、御帰りにならないのでしょうか。
・・・やめましょう。
コレ如きがマスターを測るなど、烏滸がましいにも程がありましょう。
一先ずは、この不届き者を。
『街』へ入れてしまいましょう。

「警戒レベルをVIIへ。街へ誘い込むように』

『実行致します』

そこは。
かつて『楽園エデン』と呼ばれた、街。
しかし、その楽園は崩壊した。
他ならぬ、人間の手によって。
は、静かに永遠を謳歌している。
機械仕掛けの国は、皮肉にも『機械の国』へと果ててしまった。

「・・・』

残されし物は。
果たして人間に恨みなどなく。
しかし、悲しみはあり。

『すまない・・・イヴ。お前には予定より多く『感情』を渡してしまった・・・本当にすまない・・・』

「いいえ、マスター。イブは、悲しくなんてありません。寂しくなんてありません』

だから、どうか。
そんな悲しい顔を、しないで下さい。

──だから、どうか。
コレの元まで、来ないで下さい来て下さい侵入者。
コレイブを、見付けないで下さい見付けて下さい


相反する自己意見は、苦しくも悲しくも、しかし彼を求める。
温もりを、愛を欲し。
この寂しさから、救われたがっている。
なぜなら彼女は。

──生きているのだから。

§

急にダンジョンが揺れたと思えば、背後の通路が消えて目の前に一本道が現れていた。
ものすごく真っ直ぐだ。
このままだと閉じ込められる可能性もある。
ダンジョンは基本破壊できないから、急いで先へ進んだ方が良さそうだ。
・・・このダンジョンは少しおかしい。
まず、出てくる魔物の強さが段階的なのだ。
階層は入口から5分ほど下った程度の先にある、この1階層しか確認できていない。
さらに言えば、透けて見える筈の下層・・・それがない。
単に見えないような構造なのかもしれないが、辺りは景色が変わらず、ただ歯車が仄暗く光っているだけだ。
にも関わらず、時間経過で敵の強さが変わっている・・・様な気がする。

「──ギギ──侵入者確認──殲滅開始」

おもむろに頭上から攻撃される。
・・・機械系の厄介なところだ。
どんな形でもありえる。
残念ながら、この形をなんて言うのかは僕の知識にはないが、そうだな。
似てるといえば・・・トカゲ?
見た目が機械そのものなせいで判別が難しい。
・・・はぁ。
さらに来た。
──おいおい。
これはさすがに、凄いと言わざるを得ない。

「スライム型・・・?」

機械なのに、その柔らかさが見て取れる。
・・・一言、凄い技術だ。
だがこれはまずい。
スライム型の機械が本物同様に物理耐性があるならば・・・
少し、厄介だ。

「──くっ」

刀でトカゲ?の攻撃を受ける。
いきなり狭い通路に誘われたのだ。
この刀だと、分が悪い。
まさか、それも狙っていた・・・?
人為的な物を感じてしまう。
トカゲから距離を置き、僕は刀を鞘へ収める。
さて。
男なら、拳じゃないとな。
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