数ある魔法の中から雷魔法を選んだのは間違いだったかもしれない。

最強願望者

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第四章『過去と試練』

第十話『第二の試練』

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光が収まると、僕はそこに1人だった。
さっきとは違い、暗く狭い部屋だ。
あまりにも唐突な変化に目が慣れるのが遅い。

『第二の試練へようこちょ!あたちはミカエル!ここではちみの判断力と決断力を試しまちゅ!』

拙い言葉遣いだ。
決断力・・・か。
自慢じゃないが、僕は最高に優柔不断なんだ。
迷うんじゃない。
考えてしまうんだ。

『部屋の中央を見てくだちゃい!そこにあるのは貴方が1番大切だと思っている人でちゅ!もう片方は偽物にちぇものでちゅがね!』

──フール?
僕は中央に近づく。
しかし、見えない壁があるように前へ進むことが出来ない。
・・・いや、あれは。


『制限時間は5分でちゅ!その間に、その片方を殺してくだちゃい!殺さなかった方の人と共に次の試練へ向かっちぇもらいまちゅ!』

・・・質問は許されない、か。
この言葉遣いのせいで何が大事な事なのかがいまいち掴めない。

『もしどちらも殺さない場合には~・・・』

なぜだか、僕には、その声の主が。

『3人とも死にちにまちゅ!』

気味悪く笑っているような気がした。

§

『3人ともちにまちゅ!』

馬鹿げた話だ。
私のアダムがこの2人のうちのどちらか?
・・・クソが。
被っている布のせいで体格と身長が計りずらい・・・
或いは似せている?
例えば片方がアダムだとして、どちらも動かないのは何故だ?
あちらには今の声が聞こえてない?
・・・質問すら許してくれないとは。

「やることなすこと、本当に汚い・・・」

恐らく今回の試練の目的は私達が悩む所を見たいだけだろう。
これはあくまで『余興』なのだ。
つまり、本戦があるのかも・・・。
いや、今はこれに集中しよう。
万に一つ、いや、億に一つも彼がこのうちの1人だとすれば。
私はどちらを選べばいい?
動かないのは気絶しているから?
或は人形とか?
・・・いや、呼吸の動きが見える。
確かに、暗くて見ずらいが、それくらいなら見える。
魔力も通さない結界・・・
厄介なことこの上ない。

「・・・」

いや、私なら分かる筈。
私ならば、彼じゃないか彼か、分かる筈だ。
観察していよう。

──いや、待て。
五分以内にどちらかを殺さなければ3人とも死ぬと言っていた。
つまり、生存は問わない?
間違えたらどうなる?
・・・何も言っていなかった。
恐らく、間違えても何もないのだ。
それはなぜか。
あれが『彼』では無いから。
冷静に考えよう。
この試練までたどり着いたのは決して私だけではない。
アダムや命さん、イヴさんも居るはず。
何故あそこに居る可能性があった?
同じ試練を受けてる可能性が高い筈だろう。
・・・騙された。
要は悩んでる私達を見て笑いたいだけなのだろう。

「──ホンットに悪趣味ね」

私は迷わずをしている方を選択する。
そのボタンに触れた瞬間に、選択した方の布が剥がれ、爆発した。
やはり、人形か。

しばらくして、その声が鳴り響く。

『はい!試練は終了です!なんだー大体の方は騙されませんでしたねー。こーゆー子供騙しの方が意外と引っかかるものなんですよー?』

さっきとは全く違う話し方だ。
要は、それも演技だったのだろう。
突然の理解不能に次ぐ理解不能。
その中でこんなことをされれば・・・そりゃあ迷うだろう。

が選んだ方と逆のお人形には、自分の魂の欠片を入れて置いたのですよー?もし選んでいたら死んでましたねー』

全く動きの無かった方を見やる。
・・・なるほど、そういう罠もあったのか。
ほんと、辞めて欲しいよね。
誰もが自分を一番に考えてる訳じゃないのに。

『では、次の試練へ転移しますねー!』

§

『第三の試練へようこそ。私はガブリエル。ここは、真実の部屋』

目の前には光の玉が浮いている。
真っ白な部屋で、だけどどこか薄暗く感じる。
全くそんなことは無いのに。

「──僕は誰?」

『ここでは貴方達には、自分と戦って貰います。言われたでしょう?助けた方と共に次の試練へ向かってもらうと』

わからない。
この光が何を言ってるのかがさっぱりだ。
そもそも、ここはなんなんだ?
真実の部屋?
何故僕はここに居る?

『ここでは貴方達の真実と、今があります。この試練では貴方達の覚悟と信念を試させて頂きます』

「え?・・・なんで?」

『では』

そう言って消える光。
僕はその場に立ち尽くして、気付く。
──僕が、居る。
鏡ではない。
そんな雰囲気では、ない。
あそこに、僕がいる。

『やぁ。アダム』

「・・・?アダム?」

『君の名前だよ。アダム』

「違うよ。僕の名前は──」

§

何か大事なことを忘れているような気がする。
私は何を忘れているんだろう・・・?
とても、そう、とても大事なこと・・・
ここにいる理由にも、多分関係してる・・・

『貴女が望むことを、思い出して』

そう、優しく光に言われ、私は目の前の私と対峙した。
そう、紛れもなく、私。
・・・だけど、なんだろう?
何かが、足りてない?

『ねぇフール?思い出せないの?彼のこと?』

フール・・・フール。
私の、名前。
大事な誰かに、付けてもらった名前。
・・・誰、だっけ?

「彼・・・?」

『そう、彼。彼はきっと、今も貴女を想っているのに。貴女は彼を覚えてすらいない』

憎たらしく、そう嘲笑される。
だけど、やはり。
思い出せない。
ただ、その『彼』が。
今の私に足りてない『ナニカ』だと思う。

『覚えてないなら、彼のこと──』

私はその言葉を、拒否した。
それだけはダメだと。
それだけは許さないと。
そう、魂が叫ぶ。

『私が貰うね?』

§

ここは・・・どこだろう?
僕は・・・僕は?
僕は、なんだ?
僕はなんで生きてる?
どこで産まれたんだ?
どこで生きてきたんだ?
何の為に、今生きている?

『主の為ですよ。命』

「・・・主・・・?僕に・・・?」

僕が僕に、そう語り掛ける。
主・・・そう、主。
この国に産まれたからには、必要たる存在。
絶対的な服従を誓うべき、相手。
・・・僕は・・・?

『思い出せないのですか?彼を?命をかけて御守りするべき、あの方を?』

僕がそこまでして?
何故だ?
でもたしかに。
何か穴があいたかのような──
そんな、違和感がある。
でも・・・?
ダメだ・・・思い出せない・・・が。

「これは、私のモノだ。お前には、やらない」

『・・・ならば、守って見せなさい』
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