数ある魔法の中から雷魔法を選んだのは間違いだったかもしれない。

最強願望者

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第四章『過去と試練』

第十二話『最後の試練』

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『ねぇ、⚫⚫⚫。まだ生きてる?』

「・・・もちろん。死にそうな位、痛いけどね」

あの後の戦いは、酷く一方的だった。
僕は、彼に愚直に向かって行き、そして。
彼は僕なのだ。
僕の本質は、弱さ。
弱い故の、強さ。
弱さ故の、戦い方。
地面に転がされ、僕の首に突き付けられた刀を見る。
・・・綺麗な刃文だ。
きっと、大したが打ったのだろう。

「ねぇ、アダム。僕は・・・何が、足りなかったのかな」

『・・・そうだね。過去、じゃないかな?』

そう言いつつ、アダムはその剣先を微塵も揺らさない。
・・・完全に、負け・・・か。
ここで終わってしまうのは・・・なんだか寂しいな。

「君は異常だよ、アダム」

『君もだろう?⚫⚫⚫』

「いいや、君は・・・特別異常だ」

僕はそう言って、完全に力を抜いた。
勝てる気がしない・・・最初は押していたのに・・・
その更に上から、成長してきた。
化け物だ、本当に。

『本当にさよならだ、アダム』

§

僕はその光の粒子になった⚫⚫⚫を見つめ、立ち尽くす。

「・・・異常、ね」

『試練合格おめでとう。部屋の外へ出るといい。そこで仲間が待っている』

は僕の方を向いて、後ろの扉を指した。
・・・酷い話だよ。
本当に。

「教えて下さい。これは・・・なんのための、試練なんですか」

『見極めだよ。アダム』

それだけ言って消えるガブリエル。
僕は記憶を失わず、何故か僕の『記憶』が記憶喪失になっていた。
おかしな話だよ、本当に。
所々に僕のじゃない記憶もあったし・・・
何故か、僕の記憶の方が挑戦者みたいだったし・・・
まぁ、実力は確かだったけど。

外は快晴──空がある。
しかしあれは、るーちゃんと同じ。
魔力の空だ。
・・・そろそろ、か。

「──アダムぅぅぅ!!!」

「わぷっ・・・フ、フール・・・落ち着いて・・・」

フールの胸が顔に迫り、僕は倒れる。
フールはこれでグラマスだから・・・正直調子が狂う。
が、まぁ、うん。
泣いているようだし、受け入れてあげようかな。

「アダム様!」

「お、命もおかえり。無事だったね」

「はい!──あ、ありがとうございます!」

僕は僕とフールと命に回復魔法を掛けた。
フールが一番ひどかった。
イヴはどこだろう?

「マスター、ただいま戻りました』

「おかえり・・・うんうん。無傷だね」

「はい』

僕はイヴを見やり、そして周りを見た。
・・・僕ら4人と・・・2人か。
減ったね。かなり。

『それじゃあ皆様!こちらへどーぞ!!』

そして僕らは、最後の試練へと向かった。

§

『最後の試練はただの迷路ですよ!ここをスタートにゴールまで向かいましょう!制限時間はありませんし、ルールも特にありません!たーだーし、迷宮内にはあらゆる神話のモンスターがいます!倒すもよし!逃げるもよし!隠れるもよし!迷宮内には2つセーフゾーンがありますので、そこを拠点に頑張ってくださいねー!』

・・・僕は説明を思い出し、周りを見た。
2人だ。僕ら以外に、居るのは。
協力して進む他、ない。

「えーと、僕はアダム。一応回復魔法が使えるよ」

「私はフール。炎属性の前衛です」

「イヴです』

「命と申します」

僕らはとりあえず、自己紹介をする。

「あー、アタシはミル、パーティーでの役割で言うなら盗賊。んでこっちがヤミエ。後衛の攻撃術士さ」

「・・・」

「人見知りなんだ。許してやって欲しい」

軽くポジションの確認をして、僕らはその迷路を見た。
・・・階層があるのか、どの程度の広さなのかも分からない。
神話のモンスターだって?
笑わせないで欲しい。
そんなの──つくも並の化け物じゃないか。
勝てるか勝てないかで言うなら、5分だ。
僕とフール、それにイヴと命が居るんだから。
だけど、数が分からない。
正直、他人である彼女たちを命懸けで守れる自信はないし、僕らだけでも死闘になる事は間違いない。
ならば取る方法は1つ。
隠密だ。

「気配を消してゆっくり着実に進もう。セーフポイントって所まで、一気に行く。・・・ゴールとは真逆の可能性もあるけど。イヴ、マッピングしてくれる?」

「了解しました』

気配察知能力の長けたミルを先頭に、僕らは先へ進む。
端的に言おう。
神話のモンスターとは、ミノタウロスのことだった。
牛頭の大男。
ハルバードと呼ばれる武器を持ち、徘徊している。
確認出来た数だけでは、4体。
これ以外の種類がいる可能性もある。
さらに言えば。
これから増える可能性も、無くはない。

「前方と左斜め後ろから一体ずつ」

ミルがそう言う。
僕はそれを聞いて、壁の隙間へ入り込むように全員に言う。
全員に僕は、聖属性の支援魔法をかけている。
『暗視』『消音』『俊敏上昇』『知覚上昇』。
その他にもいくつかあるが、魔力を無駄にしたくないから少しずつ掛けたり外したりしている。
というのも、何故かここでは。
のだ。
成長をしないと言った方が正しいかな。
いくら大量の魔力があっても、これじゃあ意味が無い。
ただ、迷路がここまで暗いのは逆に有難かった。
こちらは魔法で見えるが、奴らは暗くて良く見えてない・・・はず。
多少夜目が効いたとして、しかしここは完全なる闇だ。
多少期待してもいいだろう。

・・・ちなみに、僕とフールは暗視の魔法がなくても見えてたりする。
フールも僕も、魔眼の持ち主だから。
魔眼というのは、生まれつき手に入れるもの。
その魔力や効果は人それぞれだけど、僕らのそれは全く同じ。
そう。全く同じ効果。
というのも、フールの魔眼・・・というか、魔力そのものは特殊も特殊で、という、効果があったりする。
だけどそれは、要するに。
僕以上でも以下にもなれない。
隣に立つ権利と、彼女は呼んでいる。
何でも同じになる訳じゃない。
だけど、同じじゃない場所を探せば、指10本で足りてしまう。
例えば。
身長も、レベルも、技術も、戦闘能力も、頭脳も、才能も、その他のも。
全て同じだ。
ただ、本人が手を加えたもの以外は、同じになる。
だから、何が言いたいかと言うと。

彼女はこれを、僕のと言うが。
僕はこれを、呪いだと思っている。
彼女は僕と、同じ世界が見えているのだから。

「・・・おーけー。行ったよ」

ミルの合図で、再び僕らは先へ進む。
静かに、素早く。
会話はないが、全員が全員、ピリピリと緊張しているはずだ。

・・・僕の腕から離れない、フールを除いて。
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