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サトシの譚
墓場の魔導士
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墓地での乱戦に雌雄が決する少し前。サトシは窓越しにその様子を眺めながら骸骨戦士の動きに違和感を感じていた。乱戦当初は特に気にしていなかったが、ホブゴブリンが防戦一方になり始めたころ、その違和感の理由に気づいた。
「なんで、すぐに湧くんだろう?」
サトシがレベル上げをしていた時は、ライトボールで殲滅した後、一度墓地を離れないと新たに骸骨戦士が発生することはなかった。
だが、今は無限湧きに近い状態になっている。当初はそこかしこにゴブリンがいるためだろうと納得していたが、ゴブリンたちが骸骨戦士を殲滅してもすぐさまリセットがかかり戦闘が再開される。
「ゴブリン全滅が楽でいいけど……」
サトシにとってみれば、骸骨戦士は養分として申し分なかった。ライトボールで殲滅が容易であり、加えて獲得経験値も高い。ゴブリンはと言えば、なんやかんやで耐久力が高い分、囲まれると分が悪かった。とくにホブゴブリンから一撃喰らうと一気に形成が逆転してしまい、場合によっては負けが確定する。ゴブリンと骸骨戦士(スケルトンウォリアー)の共倒れが理想的だが、それが無理なら骸骨戦士の勝利。またはゴブリンの数を可能な限り減らしての終戦が望ましかった。
そこから考えれば、この無限湧きは願ったり叶ったりと言えなくはないが、どうもサトシには気味が悪かった。
「何かあるのか?」
サトシは、椅子から立ち上がり窓から身を乗り出す。周囲を見回し、戦闘が行われている場所をくまなく観察する。が、特に変わった様子はない。
「気のせいかなぁ」
と、席に戻ろうと視線を動かしたとき、教会の入り口が視界に入り、サトシは二度見する。
何かがいる。
大きく開いた教会の入り口からは、真っ暗な礼拝堂の様子を見ることはできなかった。が、暗闇の中で何かが蠢いている気配があった。
サトシは窓から顔を半分出して、教会入り口の様子を窺う。
やはり何かがいる。
先ほどより明らかに骸骨戦士の数が増えている。ゴブリンはあらかた倒されて、ホブゴブリンが6匹ほど奮闘している状態だ。その周りを30体以上の骸骨戦士が取り囲んでいる。
骸骨戦士の勝利は確実だった。サトシはその戦いに見切りをつけて、教会の様子を探ることにする。
サトシは部屋を出て階段を降り、入ってきた窓から外に出る。周囲の様子に気を配りながら教会の裏口へと近づく。教会の裏口は半開きの状態のままだった。そこから中の様子を窺うが、暗すぎてよくわからない。サトシは右目を右手で隠し、暗闇に慣らす。ある程度目が慣れたところで中に入る。
うすらぼんやりと礼拝堂の様子が見える。祭壇のあたりまで行くと教会入り口から明るい外が見え、そこに人影がある。
フードを被ったそのローブ姿の人影は、しきりに外に向かって祈りを捧げているようだった。
サトシは気取られないように、祭壇の後ろに隠れステータスを確認する。
「屍術師 Lv27」
『母さんが会った魔導士ってのはこれか。』
ヨウトで起こった生ける屍騒ぎの元凶はこの屍術師だった。サトシは状況を理解したが、同時に悩み始める。
『どうしたもんかなぁ』
今のサトシのレベルでは、屍術師のステータスを確認することができない。いま倒せる相手なのか確信が持てなかった。
『たぶんこいつを倒すと、スケルトンの類は出てこなくなると思うんだよなぁ。』
その予想は正しく、この屍術師を倒せば、ヨウトに生ける屍は二度と現れなくなる。つまり、ヨウトで生活することが可能になる。
『ここに住めると生活水準上がるよなぁ』
サトシが悩んでいる間に、外は静寂に包まれる。最後のホブゴブリンが倒されたようだった。
すると、
「で、其方は何をしているのかなぁ?」
地の底から響いてくるような、怖気を震う声がサトシの耳元に届く。サトシは飛び上がり、祭壇から距離を取る。
教会入り口近くにいたはずの人影は、祭壇の横まで来ていた。
「なんで、すぐに湧くんだろう?」
サトシがレベル上げをしていた時は、ライトボールで殲滅した後、一度墓地を離れないと新たに骸骨戦士が発生することはなかった。
だが、今は無限湧きに近い状態になっている。当初はそこかしこにゴブリンがいるためだろうと納得していたが、ゴブリンたちが骸骨戦士を殲滅してもすぐさまリセットがかかり戦闘が再開される。
「ゴブリン全滅が楽でいいけど……」
サトシにとってみれば、骸骨戦士は養分として申し分なかった。ライトボールで殲滅が容易であり、加えて獲得経験値も高い。ゴブリンはと言えば、なんやかんやで耐久力が高い分、囲まれると分が悪かった。とくにホブゴブリンから一撃喰らうと一気に形成が逆転してしまい、場合によっては負けが確定する。ゴブリンと骸骨戦士(スケルトンウォリアー)の共倒れが理想的だが、それが無理なら骸骨戦士の勝利。またはゴブリンの数を可能な限り減らしての終戦が望ましかった。
そこから考えれば、この無限湧きは願ったり叶ったりと言えなくはないが、どうもサトシには気味が悪かった。
「何かあるのか?」
サトシは、椅子から立ち上がり窓から身を乗り出す。周囲を見回し、戦闘が行われている場所をくまなく観察する。が、特に変わった様子はない。
「気のせいかなぁ」
と、席に戻ろうと視線を動かしたとき、教会の入り口が視界に入り、サトシは二度見する。
何かがいる。
大きく開いた教会の入り口からは、真っ暗な礼拝堂の様子を見ることはできなかった。が、暗闇の中で何かが蠢いている気配があった。
サトシは窓から顔を半分出して、教会入り口の様子を窺う。
やはり何かがいる。
先ほどより明らかに骸骨戦士の数が増えている。ゴブリンはあらかた倒されて、ホブゴブリンが6匹ほど奮闘している状態だ。その周りを30体以上の骸骨戦士が取り囲んでいる。
骸骨戦士の勝利は確実だった。サトシはその戦いに見切りをつけて、教会の様子を探ることにする。
サトシは部屋を出て階段を降り、入ってきた窓から外に出る。周囲の様子に気を配りながら教会の裏口へと近づく。教会の裏口は半開きの状態のままだった。そこから中の様子を窺うが、暗すぎてよくわからない。サトシは右目を右手で隠し、暗闇に慣らす。ある程度目が慣れたところで中に入る。
うすらぼんやりと礼拝堂の様子が見える。祭壇のあたりまで行くと教会入り口から明るい外が見え、そこに人影がある。
フードを被ったそのローブ姿の人影は、しきりに外に向かって祈りを捧げているようだった。
サトシは気取られないように、祭壇の後ろに隠れステータスを確認する。
「屍術師 Lv27」
『母さんが会った魔導士ってのはこれか。』
ヨウトで起こった生ける屍騒ぎの元凶はこの屍術師だった。サトシは状況を理解したが、同時に悩み始める。
『どうしたもんかなぁ』
今のサトシのレベルでは、屍術師のステータスを確認することができない。いま倒せる相手なのか確信が持てなかった。
『たぶんこいつを倒すと、スケルトンの類は出てこなくなると思うんだよなぁ。』
その予想は正しく、この屍術師を倒せば、ヨウトに生ける屍は二度と現れなくなる。つまり、ヨウトで生活することが可能になる。
『ここに住めると生活水準上がるよなぁ』
サトシが悩んでいる間に、外は静寂に包まれる。最後のホブゴブリンが倒されたようだった。
すると、
「で、其方は何をしているのかなぁ?」
地の底から響いてくるような、怖気を震う声がサトシの耳元に届く。サトシは飛び上がり、祭壇から距離を取る。
教会入り口近くにいたはずの人影は、祭壇の横まで来ていた。
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