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サトシの譚
虐殺の果て
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サトシは燃え上がる炎と、上空へ立ち上る煙をぼんやり眺めていた。
視界の端に動く影を見つけ、慌てて森の中に目を向ける。
地面に置いた剣を拾い上げると体勢を整える。
森から姿を現したのは、
アイだった。
ふらふらと夢遊病のように森から出てくると、サトシの10mほど手前で力尽きて倒れこむ。
体中に無数の切り傷を受け、いたるところから血が流れている。サトシは急いで駆け寄り、「治癒」を行う。体中の傷はふさがり、荒かった息も落ち着いてきた。
サトシはゴブリンの残党がいないか周囲を見て回った。集落の建物はほとんどが焼け焦げ原型をとどめていなかった。
「もう居ないな。」
サトシは誰に言うわけでもなくつぶやくと、アイのもとに戻った。彼女を背負うと、とりあえずこの場を去ることにした。
道すがらサトシは今後のことを考える。結局ダンたち3人を救うことはできず、またアイと二人だけになってしまった。未来が変わっていないなら今日カール達が集落に立ち寄るはずだが、すでにゴブリンの集落は壊滅しており、次の襲撃はないだろうとサトシは思う。
「さて、カールさんたちにはなんて説明しようかなぁ。」
カールには剣術の稽古をつけてもらいたいし、エリザベートにも聞きたいことがたくさんある。そして何より、これだけ繰り返しても家族を救えないのならこの集落やヨウトにいる意味も見いだせなかった。魔王討伐がどのようなものなのかが気になるが、カール達についていった方が良いのでは?とサトシの心は揺れていた。
「カールさんたちに会うなら集落がいいけど……、ヨウトの方が何かと便利だしなぁ。」
ダンたちがほとんどの生活用品をヨウトに持ち込んだことで、ヨウトの方が生活しやすくなっていた。しかし、カール達は集落を通過するはずである。集落からヨウトまでは距離があるため、入れ違いになる可能性もある。サトシはどうしたものかと思案していた。
「まあ、まずはアイの手当と食事か。」
治療自体は済ませているが、休息は必要だろう。何もない集落よりは、多少ゴブリンに荒らされていてもヨウトの方が適していると判断し、サトシはヨウトに向かう。
ヨウトは相変わらず静まり返っていた。昨日襲撃を受けた割にはそれほど荒らされた様子がなかった。ダンの生家も玄関が壊された程度で、家の中はそれほど散らかってはいなかった。
不自然さを感じはしたが、都合が良いとサトシはそれ以上考えることはしなかった。
「あ、そうだ。」
サトシは、アイを2階のベッドに寝かせながら、パーティーのことを思い出した。そして忘れないうちにアイとパーティーを組むことにした。パーティーを組みステータスを確認する。
『アイ 職業:子供 LV:10 HP:98/134 MP:10/10 STR:15 ATK:15 VIT:12 INT:12 DEF:12 RES:10 AGI:63 LUK:73 属性適合 魔術 光:Lv0 損傷個所:無し』
「?!?」
サトシはわが目を疑った。最初にアイに出会ったときはLv1だったはずだ。加えて属性適合まで発現している。これはエリザベートと出会ってから発現したはずだった。
サトシはしばらく呆然としてその表示を眺めていた。そして、ぶつぶつと独り言を言いながら考え事を始める。
「んっ。うぅん。」
アイが目を覚ます。
サトシは、その様子を静かに眺めていた。アイに不信感を抱かれないようにするための方策を必死で考えていた。が、アイの反応はサトシが思ったものとは少し違っていた。
「サトシ!」
「気が付いたかい?」
サトシは務めて静かに語りかける。
「ジルが、母さんが。アンヌさんも……」
「ああ、大変な目にあったね。二人のことは残念だった。」
サトシはそういいながら、どのように切り出そうか考えている。何より確認することがあった。
「アイ?もしかして僕のこと覚えてる?」
視界の端に動く影を見つけ、慌てて森の中に目を向ける。
地面に置いた剣を拾い上げると体勢を整える。
森から姿を現したのは、
アイだった。
ふらふらと夢遊病のように森から出てくると、サトシの10mほど手前で力尽きて倒れこむ。
体中に無数の切り傷を受け、いたるところから血が流れている。サトシは急いで駆け寄り、「治癒」を行う。体中の傷はふさがり、荒かった息も落ち着いてきた。
サトシはゴブリンの残党がいないか周囲を見て回った。集落の建物はほとんどが焼け焦げ原型をとどめていなかった。
「もう居ないな。」
サトシは誰に言うわけでもなくつぶやくと、アイのもとに戻った。彼女を背負うと、とりあえずこの場を去ることにした。
道すがらサトシは今後のことを考える。結局ダンたち3人を救うことはできず、またアイと二人だけになってしまった。未来が変わっていないなら今日カール達が集落に立ち寄るはずだが、すでにゴブリンの集落は壊滅しており、次の襲撃はないだろうとサトシは思う。
「さて、カールさんたちにはなんて説明しようかなぁ。」
カールには剣術の稽古をつけてもらいたいし、エリザベートにも聞きたいことがたくさんある。そして何より、これだけ繰り返しても家族を救えないのならこの集落やヨウトにいる意味も見いだせなかった。魔王討伐がどのようなものなのかが気になるが、カール達についていった方が良いのでは?とサトシの心は揺れていた。
「カールさんたちに会うなら集落がいいけど……、ヨウトの方が何かと便利だしなぁ。」
ダンたちがほとんどの生活用品をヨウトに持ち込んだことで、ヨウトの方が生活しやすくなっていた。しかし、カール達は集落を通過するはずである。集落からヨウトまでは距離があるため、入れ違いになる可能性もある。サトシはどうしたものかと思案していた。
「まあ、まずはアイの手当と食事か。」
治療自体は済ませているが、休息は必要だろう。何もない集落よりは、多少ゴブリンに荒らされていてもヨウトの方が適していると判断し、サトシはヨウトに向かう。
ヨウトは相変わらず静まり返っていた。昨日襲撃を受けた割にはそれほど荒らされた様子がなかった。ダンの生家も玄関が壊された程度で、家の中はそれほど散らかってはいなかった。
不自然さを感じはしたが、都合が良いとサトシはそれ以上考えることはしなかった。
「あ、そうだ。」
サトシは、アイを2階のベッドに寝かせながら、パーティーのことを思い出した。そして忘れないうちにアイとパーティーを組むことにした。パーティーを組みステータスを確認する。
『アイ 職業:子供 LV:10 HP:98/134 MP:10/10 STR:15 ATK:15 VIT:12 INT:12 DEF:12 RES:10 AGI:63 LUK:73 属性適合 魔術 光:Lv0 損傷個所:無し』
「?!?」
サトシはわが目を疑った。最初にアイに出会ったときはLv1だったはずだ。加えて属性適合まで発現している。これはエリザベートと出会ってから発現したはずだった。
サトシはしばらく呆然としてその表示を眺めていた。そして、ぶつぶつと独り言を言いながら考え事を始める。
「んっ。うぅん。」
アイが目を覚ます。
サトシは、その様子を静かに眺めていた。アイに不信感を抱かれないようにするための方策を必死で考えていた。が、アイの反応はサトシが思ったものとは少し違っていた。
「サトシ!」
「気が付いたかい?」
サトシは務めて静かに語りかける。
「ジルが、母さんが。アンヌさんも……」
「ああ、大変な目にあったね。二人のことは残念だった。」
サトシはそういいながら、どのように切り出そうか考えている。何より確認することがあった。
「アイ?もしかして僕のこと覚えてる?」
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