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生方蒼甫の譚

別行動

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 攻略サイトにもマンティコアに関するそれらしい情報は無かった。

 やっぱり領主に聞くのが手っ取り早いかなぁ。

「ん?」

 急に戦闘時の記憶が頭によぎる。最後、マンティコアに殺されかけたとき、あいつなんか言ってなかったっけ?

 アイの観察ログを確認する。

「おう、あの戦闘はすでに6日前か、ログ溜まり過ぎだな。」

 スキル発動:茨の道、ダッシュ、スキル発動:茨の道、ダッシュ……

 この6日間、サトシのログにはこれの連続だ。たまに思いついたように回復が挟まれる。

 アイ……がんばれ。


 で、6日前だ。

 音声データが一部残ってるな。

「エンリル!!まだ我の邪魔をするか!」

 ヌーじゃなくて?

 エンリルって何だっけ。

 覚えがあるような。ないような。

 ああ、ヌーもらった時を調べてみればわかるか。あいつに助けてもらったんだし。

 え~っと。いや、随分前だなぁ。サトシ無駄に日数使うから……

 とりあえず、検索かけてみた。

「ヌー」と

 あれ?ヒットしない。

 ヌーは居ただろ。少なくとも。

 その後も思いつく限り検索キーワードを入力し探すが、「ヌー」に関するものはおろか、「エンドゥのジジイ」に関する内容も出てこなかった。

 アイの奴、変なとこサボってる……ってわけでもないよな。なんだろう。


 仕方ない。気を取り直して当初の作戦通り、領主に話を聞くか。


 ログインする前に、ステータスも確認する。

 やっぱりスキルが無効化されている。
 一時的なもんじゃないな。完全にグレーアウトしてる。消してから付け直すか。

 あれ、削除もできん。なんだよ。手詰まりか。マジかぁ。

 ゲームしてまで痛みを感じたくないけどなぁ。

 まあ、仕方ないか。


 とりあえず、できる事からやっていこう。

 まずは金。拝金主義というわけでもないが、あって困るものではないな。
 ただ、このゲーム変なとこリアルだから、小銭が多いと嵩張るんだよね。

 10リル,50リル,100リルあたりの銅貨が使い勝手よさそうだ。

 20枚ずつ持っておけば当面困ることもないだろう。

 他のステータスも確認しておく。

 わお、サトシ上げてるねぇ。いつの間にやら俺もLv100超えてるよ。俺はLvだけ低めに設定してたから、パラメータの上がり方半端ないな。
 にしても、「職業:武闘家」はやっぱりおかしかろ?魔導士だよ。おれ。

 スキルが使えない分、防御力(DEF)だけ上げておこうかな。2000はやり過ぎな気もするが、背に腹は代えられん。痛いの嫌だし。

 よぉし。腹も膨れたし、領主のところに行って来よう。


 ……


 宿屋の部屋から出て、一階のカウンターに向かう。

「お客さん、部屋にこもって何してたんすか?」
「ああ、ちょっと考え事をな。」
「6日も?なんかの修行っすか?」
「まあ、いろいろあるんだよ。あんまり客の事を詮索せんことだ。」
「ああ、すんません。こっちも商売なんで、死んでんじゃないかって噂になってて。それに、そろそろ追加の代金をいただかないといけないもんで。」
「そういうことか。じゃあ、あと10日ほど頼む。」
「まいど!
 ところで、これからお出かけすか?」

「ああ、領主様のところに行こうかと思ってね。」
「領主様すか。お約束でも?」
「いや、約束はしてないんだが」
「いきなり行っても会えないんじゃないっすかね。約束がないとなかなか会えないらしいっすよ。」

 それもそうか。っていうか、このゲームAIことごとく良くできてんな。普通に日常会話出来てるじゃねぇか。

 というわけで、AIの勧めもあり現在冒険者ギルドに向かってます。
 なぜって?
 そりゃギルマスに相談しようかと思ってさ。こないだのミノタウロスの件もあるし、途中経過の報告も含めてね。


 ってわけで、冒険者ギルド到着。

「どうも。ギルマス居る?」
 受付嬢に気さくに声をかける。と、
「あ、ルークス様。ようこそお越しくださいました。ギルドマスターですね。少々お待ちください。」

 随分この間と対応が違うな。「様」と来たか。

 受付嬢は、そそくさと二階に上がって行く。
 ほどなくして、受付嬢が下りてきた。

「お待たせいたしました。こちらへどうぞ。」

 また二階に案内される。
 今度はギルマスの部屋のようだ。

「よう。ルークスさんよく来たな。」
 サン付けと来たか。悪い気はしないが。

「あとの二人はどうした?」
「いや、今野暮用で別行動中だ。」
「そうか、以前のミノタウロスの事だろ?買取金額は決まったんだが、いまギルドには資金が無くてな。もうしばらく待ってもらえねぇか。」
「いや、別に慌ててないからいつでもいいよ。」
 むしろ、金はどうでもいいんだよ。死体を引き取ってくれさえすれば。という本心は置いておこう。後は素材かな。

「素材は一部分けてもらうことは可能かい?」
「ああ、その分買取金額から引くことにはなるが、それで良ければこっちも助かるな。」
「そうか、今度ウチのサトシと来るから、その時に相談しよう。」
「わかった。で、なんだ、今日はその話じゃなかったのか?」

 そ、それはついでだ。本題に入ろう。

「実は、鉱山の奥まで行って、マンティコアと戦いはしたんだが……」
「やったのか?」
「いや、危うく殺されるところだったよ。で、相棒たちは次に向けての準備中だ。でだ、出来れば奴を倒すための情報が欲しい。こないだ聞いた話以外に、何か攻略のヒントになるような話は無いか?」

 ギルマスは神妙な顔で俺の話を聞いていたが、しばらく考え込んで、重い口を開く。

「そうだな。ギルドには目ぼしい情報はほとんどない。正直なところ情報を持ってるとすれば……」

「領主様か?」
 軽くギルマスに睨まれたが、やれやれと言った表情で言葉を続ける。
「そうだ。おそらく俺たちの知らない情報もいくつか持ってるだろうな。」
「それは、お貴族様の件も含めてってことかい?」
 ギルマスの眼が一段と鋭くなる。

「……余計なこと言っちまったな。わかった。俺から領主様に取り次ごう。」
「本当かい。ありがたい。助かるよ。」

 よし。良い感じだ。これで少しは進展しそうだな。
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