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生方蒼甫の譚
ウルサン自由連合
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「俺「も」ってのはどういうことだ?」
「その言葉のまんまさ」
「ほかにも異世界人を知ってるのか?」
「さてな」
食えねぇジジイだ。ある意味エンリルに似てるか。まだこっちの方が信頼できそうだが……さて。どうしたもんか。
「で、最初の質問にも答えてくれないのかい?」
「ああ、生まれる前の記憶か……それは。無いな」
「生まれはウルサンか?」
「ああ、生まれも育ちもウルサンだ。」
「そうか。じゃあ、質問を変えよう。あんたらの仕事は何だ?」
「俺たちはウルサン自由連合と名乗ってる」
「自由連合」
「ああ、この街の治安を維持してるんだ」
治安……って、おっしゃいました?
俺、この街の通りを歩いて、10mほどで2回も因縁付けられましたけど。
おそらく貴方の配下の者に。
「治安を維持?」
俺はモビーの顔を見る。モビーはバツが悪そうに視線をそらした。
それをジジイは見逃さない。
「てめぇ!まだそんなしょうもねぇことやってんのか!」
どすの効いた声で爺が凄むと、モビーの顔色が途端に悪くなる。
「す。すいません!」
「重ね重ねすまねぇな。どうも若けぇもんは血の気が多くていけねぇ」
「で、ウルサン自由連合ってのは?」
「昔からここは荒くれ物の街だった。王都や周辺諸国から追われた奴らの吹き溜まりだ。欲しいものがあれば奪い取るって考え方の奴がほとんどだ。
とはいえ、真面目に商売をしようって人間も少なからずいる。俺たちはそんな奴らを守ってやってるんだ」
「そりゃ役人の仕事じゃねぇのか?」
「そうだなぁ。この町にも役人は居るが、汚職にまみれてほとんど機能してねぇ。そんな中では騎士や衛兵は権力者の犬に成り下がってる。むしろ権力を持ってる分まじめに働いてる弱い奴らを甚振って私腹を肥やしてる。だから俺たちが真っ当なこの町の住民を守らなきゃいけねぇのさ」
「自警団みたいなもんか?」
「そんなに規律正しくはねぇよ。なにより、相手は悪逆非道な奴らだ。権力まで笠に着て攻め立ててくる。こっちが品行方正にしてたんじゃ太刀打ちできねぇよ。だから暴力に訴えるのさ」
ああ、まんま任侠というか、極道と言うか。ヤクザと言うか……
「必要悪ってことか」
「まあ、言葉は悪いがそう言うことだ。まっとうに商売してる店の用心棒として俺たちが揉め事を解決してるってわけだ」
「で、|見ケ〆(みかじめ)料を貰うと」
「ミカジメ?」
「いや、良い。何でもない。で、報酬をもらうってことだな。それじゃあ、お前さんたちはこの街の裏稼業って認識で合ってるか?」
「ああ、そう言うことだ」
「じゃあ、その裏稼業の旦那に質問だ」
「なんだい?」
「この町に人買い稼業があるのか?」
ハルマンの目つきが鋭くなる。
「そんな話をどこかで聞いたのか?」
「いや、ちょっとした伝手からな」
ハルマンは顎に手を当て、俺の顔をじっと見つめる。が、諦めたように口を開く。
「まあ、俺が答えなくても、お前なら見つけ出すまでこの町を破壊しつくしそうだな」
「人を化け物みたいに言いやがんな」
「違うのか?さっきの魔力。途轍もなかったがな」
ああ、そういや奴のスキルに魔力感知があったな。
「で、教えてくれるのかい?」
「そうだな。隠したところで仕方ないだろう。ただし条件がある」
「条件?」
「ああ、俺はお前に情報をやろう。その中にはお前が望む情報があるかもしれん」
「で、俺はどうすればいい?」
「俺たちを手伝ってくれ」
「手伝う?」
「ああ」
「嫌だと言ったら?」
「そうだな。俺の持ってる情報は手に入らなくなるな」
「そんな情報要らないって言うかもしれんぞ?」
「まあ、価値があるかどうかは聞いてみないと分からんだろ?」
「あ~。それは値切れるか?」
「値切る?」
「ああ、お前らを手伝うといっても、何をするかわからんからな。リスクが大きすぎる」
「それもそうだな。で、値切るってわけか?」
「ああ、で、どうだ?お前さんが頑なに手伝いを要求するなら、お前たち全員を痛めつけて情報を聞き出すってこともできるんだが……」
流石にちょっと言い過ぎたかなぁ。これじゃどっちがヤクザかわからんな。
「痛めつけられたくらいで俺が吐くとでも?」
「お前を甚振らなくても、お前の子分を一人ずつってのもあるが」
「ほう。思ったよりも鬼畜だな」
ですよね。ちょっとサトシに感化されすぎカモ。
いや、サトシもここまではしてないな。すまん。言い過ぎた。
「しかし、そんな風には見えんがな」
っと、お見通しか。流石に脅すことはできても、実力行使は気が引ける。正直痛めつける前にこの場を去るだろうな。俺は
「とはいえ、お前さんに過度な要求をして悪印象を持たれるのも得策じゃないな。そうだな……」
ハルマンは言葉を区切り、俺の目をじっと見つめながらイケボで続ける。
「俺たちに敵対しない。ってのでどうだ?」
そうきたか。
「まあ、良いか。そのくらいなら」
「じゃあ、交渉成立ってことでいいな」
「ああ、わかったよ。手伝うかどうかはわからんが、少なくとも敵対はしないでおくさ」
「ああ、助かる」
よし。交渉成立。
ん?
あれ?俺よく考えたら交渉ぼろ負けじゃねぇ?
痛めつけて話聞いた方がよっぽど効率的だった様な気が……
ああ、やっぱり交渉下手だな。俺
「どうした?」
「いや、まんまと嵌められたことに気づいたよ」
「まあ、そう言うな。俺の情報にどのくらいの価値があるかはわからんが、話してやるよ」
へいへい。ありがたく頂戴しましょうかねぇ~。チキショウ。
「その言葉のまんまさ」
「ほかにも異世界人を知ってるのか?」
「さてな」
食えねぇジジイだ。ある意味エンリルに似てるか。まだこっちの方が信頼できそうだが……さて。どうしたもんか。
「で、最初の質問にも答えてくれないのかい?」
「ああ、生まれる前の記憶か……それは。無いな」
「生まれはウルサンか?」
「ああ、生まれも育ちもウルサンだ。」
「そうか。じゃあ、質問を変えよう。あんたらの仕事は何だ?」
「俺たちはウルサン自由連合と名乗ってる」
「自由連合」
「ああ、この街の治安を維持してるんだ」
治安……って、おっしゃいました?
俺、この街の通りを歩いて、10mほどで2回も因縁付けられましたけど。
おそらく貴方の配下の者に。
「治安を維持?」
俺はモビーの顔を見る。モビーはバツが悪そうに視線をそらした。
それをジジイは見逃さない。
「てめぇ!まだそんなしょうもねぇことやってんのか!」
どすの効いた声で爺が凄むと、モビーの顔色が途端に悪くなる。
「す。すいません!」
「重ね重ねすまねぇな。どうも若けぇもんは血の気が多くていけねぇ」
「で、ウルサン自由連合ってのは?」
「昔からここは荒くれ物の街だった。王都や周辺諸国から追われた奴らの吹き溜まりだ。欲しいものがあれば奪い取るって考え方の奴がほとんどだ。
とはいえ、真面目に商売をしようって人間も少なからずいる。俺たちはそんな奴らを守ってやってるんだ」
「そりゃ役人の仕事じゃねぇのか?」
「そうだなぁ。この町にも役人は居るが、汚職にまみれてほとんど機能してねぇ。そんな中では騎士や衛兵は権力者の犬に成り下がってる。むしろ権力を持ってる分まじめに働いてる弱い奴らを甚振って私腹を肥やしてる。だから俺たちが真っ当なこの町の住民を守らなきゃいけねぇのさ」
「自警団みたいなもんか?」
「そんなに規律正しくはねぇよ。なにより、相手は悪逆非道な奴らだ。権力まで笠に着て攻め立ててくる。こっちが品行方正にしてたんじゃ太刀打ちできねぇよ。だから暴力に訴えるのさ」
ああ、まんま任侠というか、極道と言うか。ヤクザと言うか……
「必要悪ってことか」
「まあ、言葉は悪いがそう言うことだ。まっとうに商売してる店の用心棒として俺たちが揉め事を解決してるってわけだ」
「で、|見ケ〆(みかじめ)料を貰うと」
「ミカジメ?」
「いや、良い。何でもない。で、報酬をもらうってことだな。それじゃあ、お前さんたちはこの街の裏稼業って認識で合ってるか?」
「ああ、そう言うことだ」
「じゃあ、その裏稼業の旦那に質問だ」
「なんだい?」
「この町に人買い稼業があるのか?」
ハルマンの目つきが鋭くなる。
「そんな話をどこかで聞いたのか?」
「いや、ちょっとした伝手からな」
ハルマンは顎に手を当て、俺の顔をじっと見つめる。が、諦めたように口を開く。
「まあ、俺が答えなくても、お前なら見つけ出すまでこの町を破壊しつくしそうだな」
「人を化け物みたいに言いやがんな」
「違うのか?さっきの魔力。途轍もなかったがな」
ああ、そういや奴のスキルに魔力感知があったな。
「で、教えてくれるのかい?」
「そうだな。隠したところで仕方ないだろう。ただし条件がある」
「条件?」
「ああ、俺はお前に情報をやろう。その中にはお前が望む情報があるかもしれん」
「で、俺はどうすればいい?」
「俺たちを手伝ってくれ」
「手伝う?」
「ああ」
「嫌だと言ったら?」
「そうだな。俺の持ってる情報は手に入らなくなるな」
「そんな情報要らないって言うかもしれんぞ?」
「まあ、価値があるかどうかは聞いてみないと分からんだろ?」
「あ~。それは値切れるか?」
「値切る?」
「ああ、お前らを手伝うといっても、何をするかわからんからな。リスクが大きすぎる」
「それもそうだな。で、値切るってわけか?」
「ああ、で、どうだ?お前さんが頑なに手伝いを要求するなら、お前たち全員を痛めつけて情報を聞き出すってこともできるんだが……」
流石にちょっと言い過ぎたかなぁ。これじゃどっちがヤクザかわからんな。
「痛めつけられたくらいで俺が吐くとでも?」
「お前を甚振らなくても、お前の子分を一人ずつってのもあるが」
「ほう。思ったよりも鬼畜だな」
ですよね。ちょっとサトシに感化されすぎカモ。
いや、サトシもここまではしてないな。すまん。言い過ぎた。
「しかし、そんな風には見えんがな」
っと、お見通しか。流石に脅すことはできても、実力行使は気が引ける。正直痛めつける前にこの場を去るだろうな。俺は
「とはいえ、お前さんに過度な要求をして悪印象を持たれるのも得策じゃないな。そうだな……」
ハルマンは言葉を区切り、俺の目をじっと見つめながらイケボで続ける。
「俺たちに敵対しない。ってのでどうだ?」
そうきたか。
「まあ、良いか。そのくらいなら」
「じゃあ、交渉成立ってことでいいな」
「ああ、わかったよ。手伝うかどうかはわからんが、少なくとも敵対はしないでおくさ」
「ああ、助かる」
よし。交渉成立。
ん?
あれ?俺よく考えたら交渉ぼろ負けじゃねぇ?
痛めつけて話聞いた方がよっぽど効率的だった様な気が……
ああ、やっぱり交渉下手だな。俺
「どうした?」
「いや、まんまと嵌められたことに気づいたよ」
「まあ、そう言うな。俺の情報にどのくらいの価値があるかはわからんが、話してやるよ」
へいへい。ありがたく頂戴しましょうかねぇ~。チキショウ。
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