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魔王の譚
王都へ
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「なんだよ。手掛かりになると思ったのに……」
ずいぶんな落ち込み様だな。俺が悪いみたいじゃないか。
「なんだ。そんなにショックか?」
「いや。あ、まあ。そうだな。ショックと言えばショックだ。唯一の手がかりだと思ってたからな」
「だいたいお前さんはそれから何がわかると思ってたんだ?」
「あ、いや。まあ、そう言われれば。そうだな。何がわかるだろう。ユーザーの事を知ってる奴に会える……とか?」
「いや。「とか?」って聞かれても困るよ。やっぱりノープランじゃねぇか。まあ、研究者らしいっちゃぁらしいけどよ」
「そう言えば、あんたは前世……というか、この世界に来る前は何してたんだ?」
「……まあ、そうだな」
ルークスに俺の前世を伝えるか一瞬ためらった。
おそらく俺は死んでこの世界に来たって事なんだろう。そうすると現在の日本に住んでいるこいつなら、当時の俺がどうなったのか調べることが出来るかもしれない。これは奴の疑問を解くカギにもなる。
しかし、なぜだかそれを奴に頼むことは出来なかった。
「なあ、今の日本ってどんな状況だ?西暦何年だ?」
「今は2033年だな」
「2033……」
「どうした?何かおかしいか?」
俺の記憶にあるのは2021年の日本だ。この世界で300年以上生きてきた俺にとって当時の記憶はすでにおぼろげだ。
そこからの10年、日本はどんな風に変化したんだろう。そんな感傷的な気分に浸る俺に向かってルークスはずけずけと質問を投げかける。
「なあ?あんたはいつごろまでの記憶があるんだ?一体何やってたんだ?なあ。なあって」
「うるせぇな!」
ついイライラして声を荒げてしまった。と、その時部屋の天井に仕込んである伝声管から声がした。
「……フリードリヒ様。見逃した冒険者たちが王都に到着したようです……」
そうか。ようやく到着したか。
「伝声管って……古風だなぁ」
「良いじゃねぇか。これで十分事足りてるんだよ」
「いや、念話(チャット)使えばよくない?」
あ!そういやこいつらクレータ街に入る時になんか目配せしてやがったな。あの時やたらと意識がシンクロしてたけど……
もしかしてそれか!?
「その、お前の言う念話(チャット)は特定の相手と意思疎通が取れるって事か!?」
「お、おう。ほら。ゲームだから、これ。特定の相手に音声メッセージ送れるんだよ」
「そう言うことは早く言えよ」
気が利かない野郎だな。
「いや。聞かれなかったからさ」
「知らねぇもんは聞きようがねぇだろうが!」
「まあ、そう言うなよ。だからちゃんと教えたじゃねぇか。せっかく善意で進言したのに随分怒られてない?俺」
「あぁ。まあ。そのなんだ。その進言には感謝するよ。取り敢えず有益なツールがあれば教えてくれ。ギブアンドテイクだな。俺の方もお前達には便宜を図るよ」
とりあえず天命の書板についてはかなり有益だからな。こいつらには協力してもらいたいことが山ほどある。多少の融通を聞かせても問題ないだろう。
「そうか。そう言ってくれると助かるよ。俺とサトシだけじゃ限界があるからよ。まあ、ウチの従業員も居るがスキルが微妙だからな……」
部下からの報告では、奴らが雇っている従業員たちはそれほど魔力量が多い訳ではなかった。できる作業にも限界があるだろう。
その点俺が改変したNPCは魔力持ちだ。加えて魔力量もそこいらの魂持ちとは比較にならないほど潤沢だ。労働力として申し分ないだろう。後は奴らからいかに隠ぺいするかだが……
「そのあたりはウチの部下に手伝わせよう。ただ、あまり急速な発展をすると、また奴らに粛清されるからな」
「奴ら?」
「お前たち撃退した奴らだよ」
「ああ、あの天使」
「そういやこの間は天使型だったな。俺が昔食らった時は天使じゃなかったけどな」
「へ?天使じゃなきゃ何だったんだよ?」
「通常兵器」
「は?」
「だから。通常兵器だよ」
「ツウジョウヘイキって、あの通常兵器?戦闘機とかミサイルとか?」
「だからそう言ってんだろ。まあ、殆どが無人機だったな。大型の自爆ドローンで街の至る所を破壊されて、最後は核を積んだSRBM1撃だったな。ちんけな魔法じゃ勝ち目はねぇよ。あ、建物は一部残ったけどな。」
「……」
ルークスは驚きのあまり押し黙ってしまった。まあ、ファンタジーの世界で核攻撃されたなんて言ったらそうなるかもな……
って、よく考えたらこいつら核使ってEMP起こしてやがったっけ。やってることは一緒か。
「で、聞きたいことはそれだけか?俺はちょっと野暮用が出来たんだが……。そうだ。お前も一緒に来ないか?」
「どこに?」
「王都」
ずいぶんな落ち込み様だな。俺が悪いみたいじゃないか。
「なんだ。そんなにショックか?」
「いや。あ、まあ。そうだな。ショックと言えばショックだ。唯一の手がかりだと思ってたからな」
「だいたいお前さんはそれから何がわかると思ってたんだ?」
「あ、いや。まあ、そう言われれば。そうだな。何がわかるだろう。ユーザーの事を知ってる奴に会える……とか?」
「いや。「とか?」って聞かれても困るよ。やっぱりノープランじゃねぇか。まあ、研究者らしいっちゃぁらしいけどよ」
「そう言えば、あんたは前世……というか、この世界に来る前は何してたんだ?」
「……まあ、そうだな」
ルークスに俺の前世を伝えるか一瞬ためらった。
おそらく俺は死んでこの世界に来たって事なんだろう。そうすると現在の日本に住んでいるこいつなら、当時の俺がどうなったのか調べることが出来るかもしれない。これは奴の疑問を解くカギにもなる。
しかし、なぜだかそれを奴に頼むことは出来なかった。
「なあ、今の日本ってどんな状況だ?西暦何年だ?」
「今は2033年だな」
「2033……」
「どうした?何かおかしいか?」
俺の記憶にあるのは2021年の日本だ。この世界で300年以上生きてきた俺にとって当時の記憶はすでにおぼろげだ。
そこからの10年、日本はどんな風に変化したんだろう。そんな感傷的な気分に浸る俺に向かってルークスはずけずけと質問を投げかける。
「なあ?あんたはいつごろまでの記憶があるんだ?一体何やってたんだ?なあ。なあって」
「うるせぇな!」
ついイライラして声を荒げてしまった。と、その時部屋の天井に仕込んである伝声管から声がした。
「……フリードリヒ様。見逃した冒険者たちが王都に到着したようです……」
そうか。ようやく到着したか。
「伝声管って……古風だなぁ」
「良いじゃねぇか。これで十分事足りてるんだよ」
「いや、念話(チャット)使えばよくない?」
あ!そういやこいつらクレータ街に入る時になんか目配せしてやがったな。あの時やたらと意識がシンクロしてたけど……
もしかしてそれか!?
「その、お前の言う念話(チャット)は特定の相手と意思疎通が取れるって事か!?」
「お、おう。ほら。ゲームだから、これ。特定の相手に音声メッセージ送れるんだよ」
「そう言うことは早く言えよ」
気が利かない野郎だな。
「いや。聞かれなかったからさ」
「知らねぇもんは聞きようがねぇだろうが!」
「まあ、そう言うなよ。だからちゃんと教えたじゃねぇか。せっかく善意で進言したのに随分怒られてない?俺」
「あぁ。まあ。そのなんだ。その進言には感謝するよ。取り敢えず有益なツールがあれば教えてくれ。ギブアンドテイクだな。俺の方もお前達には便宜を図るよ」
とりあえず天命の書板についてはかなり有益だからな。こいつらには協力してもらいたいことが山ほどある。多少の融通を聞かせても問題ないだろう。
「そうか。そう言ってくれると助かるよ。俺とサトシだけじゃ限界があるからよ。まあ、ウチの従業員も居るがスキルが微妙だからな……」
部下からの報告では、奴らが雇っている従業員たちはそれほど魔力量が多い訳ではなかった。できる作業にも限界があるだろう。
その点俺が改変したNPCは魔力持ちだ。加えて魔力量もそこいらの魂持ちとは比較にならないほど潤沢だ。労働力として申し分ないだろう。後は奴らからいかに隠ぺいするかだが……
「そのあたりはウチの部下に手伝わせよう。ただ、あまり急速な発展をすると、また奴らに粛清されるからな」
「奴ら?」
「お前たち撃退した奴らだよ」
「ああ、あの天使」
「そういやこの間は天使型だったな。俺が昔食らった時は天使じゃなかったけどな」
「へ?天使じゃなきゃ何だったんだよ?」
「通常兵器」
「は?」
「だから。通常兵器だよ」
「ツウジョウヘイキって、あの通常兵器?戦闘機とかミサイルとか?」
「だからそう言ってんだろ。まあ、殆どが無人機だったな。大型の自爆ドローンで街の至る所を破壊されて、最後は核を積んだSRBM1撃だったな。ちんけな魔法じゃ勝ち目はねぇよ。あ、建物は一部残ったけどな。」
「……」
ルークスは驚きのあまり押し黙ってしまった。まあ、ファンタジーの世界で核攻撃されたなんて言ったらそうなるかもな……
って、よく考えたらこいつら核使ってEMP起こしてやがったっけ。やってることは一緒か。
「で、聞きたいことはそれだけか?俺はちょっと野暮用が出来たんだが……。そうだ。お前も一緒に来ないか?」
「どこに?」
「王都」
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