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魔王の譚
仇
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「カルロス」
その名を呟くサトシの表情は読めない。この感情はどう表現すれば良い?
怒り・憎しみ・悲しみ。それに諦観
どうともつかない複雑な色を織りなしている。
「その、カルロスってやつは…」
カールが言いにくそうにサトシに質問する。
そりゃそうだ。家族同様だった少女の仇だからな。
が、サトシの反応は意外にも冷静なものだった。
「カルロスの行方はわかったんですか?」
「いや。まだよくわからん。しかし、尻尾の一端は掴んだと思うぜ」
「尻尾…ですか。具体的には?」
「やつの能力がわかった」
「「人心掌握」じゃないんですか?「まねっこ」の方ですか?」
「いや、それは表のスキルだ」
「表の?」
「ああ、お前たちが確認できたステータスは表面的なもんで、一番厄介なスキルは偽装してたってことだ」
「それは、なんですか?」
「「ひったくり(スナッチャー)」だ。体を乗り換える事ができる」
「体を?」
「ああ、だから外見はあくまで仮のものだ。やつは体を取り替えながら色んなところに潜んでるってことだ」
「「「そんな」」」
サトシたちは言葉に詰まっている。そりゃそうだろう。こんなスキル、敵に回すと厄介すぎて泣けてくるよな。
とはいえ、放っておくわけにもいかない。奴も俺のことを狙っているようだしな。いずれは一戦見(まみ)える必要があるだろう。
向こうから不意打ちをかけられると苦戦は必至だ。なら、こちらが先に見つけて勝負をかけるしかない。やつが最後に姿を消したのはウルサンだ。その足取りを追うしかないだろう。
「魔王自ら敵陣に乗り込もうってか」
背後から声がした。
オットーだ。
隣にはヨハンもいる。
「で、俺達も連れてってくれるんだよな?」
オットーはにこやかに圧をかけてきた。まあ、連れて行くつもりではいたが……このあたりは流石というべきか。
「ああ、もちろんだ」
そう言うと、オットーは満足そうな笑顔でカールの方を叩(たた)く。
「最近は充実した生活を送ってた見てぇじゃねぇか」
オットーが叩(たた)いた肩を、カールは汚れでも払うように叩(はた)く。
「何だよ。俺の事監視してたのか?鬱陶しいな」
カールはずいぶんオットーを疎ましく思ってるようだな。どうも相性が悪いらしい。まあ、今回はそんなこと言ってられないがな。
「それじゃ、揃ったところで出かけるか?」
「いや、すこし準備させてくれよ」
と、カール。
「何を準備することがあるんだよ。お前が一番身軽そうじゃねぇか」
と、オットー。
はたから見ると仲良さげなんだがな。カールはずいぶん嫌がっている。今のやり取りだけでイライラ度合いはマックスに近い。
取り敢えず、カールが爆発しないうちに話を進めよう。
「早くしろ。サトシ。お前もなにか準備するものがあるんじゃないか?」
「いや。俺は特にありません。
けど…」
「けど…何だ?」
「ルークスさんは、なんで魂を抜かれたんですか?」
一応気になるんだな。そりゃそうか。
「正直なところわからん。カルロスの抜け殻を発見して、そのことについて話し合ってるときに魂を抜かれたからな。だが、ソウルスティールってわけじゃない、多分な。だからやつの魂がどこにあるのかは俺にはわからん。が、死んでるとも言えない状態だ。まあ、復活できるかは五分五分ってところだがな」
「そうですか」
故人を悼む。ってわけでもないし。復活できそうで嬉しいってわけでもない。なんとも複雑な感情だな。
「お前とルークスの関係はどうだったんだ?」
俺は探りを入れてみた。
「関係…ですか」
その名を呟くサトシの表情は読めない。この感情はどう表現すれば良い?
怒り・憎しみ・悲しみ。それに諦観
どうともつかない複雑な色を織りなしている。
「その、カルロスってやつは…」
カールが言いにくそうにサトシに質問する。
そりゃそうだ。家族同様だった少女の仇だからな。
が、サトシの反応は意外にも冷静なものだった。
「カルロスの行方はわかったんですか?」
「いや。まだよくわからん。しかし、尻尾の一端は掴んだと思うぜ」
「尻尾…ですか。具体的には?」
「やつの能力がわかった」
「「人心掌握」じゃないんですか?「まねっこ」の方ですか?」
「いや、それは表のスキルだ」
「表の?」
「ああ、お前たちが確認できたステータスは表面的なもんで、一番厄介なスキルは偽装してたってことだ」
「それは、なんですか?」
「「ひったくり(スナッチャー)」だ。体を乗り換える事ができる」
「体を?」
「ああ、だから外見はあくまで仮のものだ。やつは体を取り替えながら色んなところに潜んでるってことだ」
「「「そんな」」」
サトシたちは言葉に詰まっている。そりゃそうだろう。こんなスキル、敵に回すと厄介すぎて泣けてくるよな。
とはいえ、放っておくわけにもいかない。奴も俺のことを狙っているようだしな。いずれは一戦見(まみ)える必要があるだろう。
向こうから不意打ちをかけられると苦戦は必至だ。なら、こちらが先に見つけて勝負をかけるしかない。やつが最後に姿を消したのはウルサンだ。その足取りを追うしかないだろう。
「魔王自ら敵陣に乗り込もうってか」
背後から声がした。
オットーだ。
隣にはヨハンもいる。
「で、俺達も連れてってくれるんだよな?」
オットーはにこやかに圧をかけてきた。まあ、連れて行くつもりではいたが……このあたりは流石というべきか。
「ああ、もちろんだ」
そう言うと、オットーは満足そうな笑顔でカールの方を叩(たた)く。
「最近は充実した生活を送ってた見てぇじゃねぇか」
オットーが叩(たた)いた肩を、カールは汚れでも払うように叩(はた)く。
「何だよ。俺の事監視してたのか?鬱陶しいな」
カールはずいぶんオットーを疎ましく思ってるようだな。どうも相性が悪いらしい。まあ、今回はそんなこと言ってられないがな。
「それじゃ、揃ったところで出かけるか?」
「いや、すこし準備させてくれよ」
と、カール。
「何を準備することがあるんだよ。お前が一番身軽そうじゃねぇか」
と、オットー。
はたから見ると仲良さげなんだがな。カールはずいぶん嫌がっている。今のやり取りだけでイライラ度合いはマックスに近い。
取り敢えず、カールが爆発しないうちに話を進めよう。
「早くしろ。サトシ。お前もなにか準備するものがあるんじゃないか?」
「いや。俺は特にありません。
けど…」
「けど…何だ?」
「ルークスさんは、なんで魂を抜かれたんですか?」
一応気になるんだな。そりゃそうか。
「正直なところわからん。カルロスの抜け殻を発見して、そのことについて話し合ってるときに魂を抜かれたからな。だが、ソウルスティールってわけじゃない、多分な。だからやつの魂がどこにあるのかは俺にはわからん。が、死んでるとも言えない状態だ。まあ、復活できるかは五分五分ってところだがな」
「そうですか」
故人を悼む。ってわけでもないし。復活できそうで嬉しいってわけでもない。なんとも複雑な感情だな。
「お前とルークスの関係はどうだったんだ?」
俺は探りを入れてみた。
「関係…ですか」
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