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終章
持久戦
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ブォン!
ルークスの姿が一瞬ブレたかと思うと、アズラーイールの背後に現れる。
アズラーイールは驚いた表情も見せずに、背後にあるルークスの顔面めがけて裏拳を放つ。
しかし、ルークスはその裏拳を右手で絡め捕ると、そのままアズラーイールの関節を決めたまま投げを打つ。
逆関節を決められたアズラーイールは大きな軌道で後ろへと投げ飛ばされるが、空中で体(たい)を入れ替え、ルークスと対峙する形で着地する。
アズラーイールは左手でルークスの顔めがけ手刀で突きを放つ。
その突きをルークスは紙一重で躱しながらその手を掴み関節を決めようとひねる。
が、その動きを利用してアズラーイールがルークスのみぞおちめがけて肘を打ち込む。
ルークスはその肘を左手で受け流しつつアズラーイールの足を払い体勢を崩す。
腰のあたりまで下がったアズラーイールの顔めがけルークスは膝蹴りを打つが、そのままアズラーイールに足を取られて投げ飛ばされた。
「さすがは日本で教育を受けていただけありますね。柔道や空手はお手の物ですか?」
アズラーイールは余裕の表情でルークスに尋ねが、ルークスは離れた所に辛うじて着地すると、苦い表情で答える。
「せいぜい体育の授業で柔道を齧った程度だよ。あんたこそ太極拳はお手の物ってか?」
「人民の嗜みですね」
アズラーイールはそう言うと、しゃがんだままのルークス目掛けて勢いよく膝蹴りを打ってきた。
ルークスは体をひねり辛うじて膝蹴りを躱す。スキルをすべて封じていても力の差は如何ともし難いものがあった。
ルークスは眉を寄せながら後ろに飛び退きアズラーイールと距離を取る。
サトシは上空を見つめながら肩をぐるぐると回していた。
「さあ。かかってこいヤァ!」
サトシの視界には、エンリルからの通知が所狭しと表示されている。空一面に散らばるタングステンシャフト。
それに加えて上空を高速で通過する複数の軌道衛星にマークが付けられていた。
「まずは、タングステンシャフトだな」
ひとしきりストレッチを終えたサトシは、上空のタングステンシャフトに向けて手を伸ばし、意識を集中する。
サトシたちのはるか上空。軌道衛星から放たれたのは、先端の尖った巨大なタングステンシャフトだった。
後部のロケットブースターが点火される。地球の引力に引かれて大気圏に突入するシャフトは、
大気との断熱圧縮により真っ赤に加熱されながらもどんどん加速して行く。
「まずはお前だ!」
サトシの声と同時に、上空のタングステンシャフトの先端に、大きな皿状の物体が現れる。
サトシの作り出したイモータライトの円盤。
突然現れた直径100mにも及ぶ巨大な物体によって、神の杖は、大皿の中心に立てられた小さなろうそくのような状態になった。
タングステンシャフトのロケットブースターは明々と炎を上げ必死に加速しようとするが、前部に取り付いた大皿により、思うように加速できないようだった。
しかし、重力の影響を受けながら徐々に加速して行く。
「ん~。今一つかなぁ」
サトシはそう言うと、シャフトに向けた掌に一段と魔力を込める。
途端に、円盤がひと回りもふた回りも大きくなり一段と加速を阻害する。
『どっすか?イケてます?』
サトシは現状をエンリルに確認する。
『良い案だとは思うが、この数全部行けるか?』
『数は問題ないんですけど、思ったより減速できてない気がするんですよね。メテオストライクは回避できても、地震くらいの衝撃はありそうですよね?』
『十分じゃないか?』
『ん~。十分ですかぁ』
エンリルは呆れ気味に褒めるが、サトシは納得のいかない様子で考え込む。
皿の部分で大気を受け止めながら、周囲に熱をまき散らしてタングステンシャフトは徐々に降下していた。
その横を猛スピードで通り過ぎる別のシャフトがあった。
『エンリルさん。この周辺で、神の杖が落ちても被害が少ない場所ってあります?』
エンリルはサトシの意図が理解できたものの、残念そうに答える。
『ここのずっと南西にある砂漠地帯なら大丈夫だと思うが、あの質量の物体をそこまで運ぶのは難しいと思うぞ』
『まあ、やってみますよ』
こいつ大丈夫か?とエンリルは、サトシの軽さに心配をせずにはいられなかったが、サトシに頼るしかないと該当する場所をサトシに示す。
『じゃあ、いってみよう!』
そう言うと、落下中のシャフトを目掛けて掌を向ける。
すでにかなりの速度まで達しているそのシャフトは、真っ赤に加熱されながら地上に向かってさらに加速していた。
サトシの言葉と共に、そのシャフトの中腹と後部に翼が現れる。その姿は先ほどまでとは打って変わり、主翼と尾翼を持ったジェット機のように変化してゆく。
そして、その翼の昇降舵、方向舵が動きタングステンシャフトが向きを変える。
「おりょ!?ちょっと厳しいか?」
翼に対してタングステンシャフトの質量が大きすぎるのだろう。サトシが期待するほど軌道が変化しない。
「このサイズじゃ無理があるかなぁ……もうちょい足すか」
タングステンシャフトの主翼と尾翼の長さが倍以上に伸び、昇降舵と方向舵もより大きくなった。
すると、タングステンシャフトは大きく弧を描き進行方向を南西に向け、砂漠地帯へと向かって滑空してゆく。
『何でもありだな……おまえ』
エンリルはその様子に驚きを隠せなかった。
『イケるもんですね。じゃんじゃん行きましょう!』
「参拾参號は素晴らしい対応力ですね。若干精神的破綻が見て取れるのが難点ですが、おおむね実験は成功ではないですか?生方先生」
アズラーイールはルークスの攻撃を躱しつつ、反撃を加えながら語りかける。
ルークスにはその言葉に返す余裕など全くなかった。
「どうしました?生方先生」
ルークスは揶揄するように嗤うアズラーイールを睨みつけるが、その実力差に閉口するしかなかった。
すべてのスキルを封じた状態ですらこのありさまだ。
「先生が頑張らないと、参拾参號にさらなる試練が降りかかりますよ」
その言葉にルークスは一旦アズラーイールから距離を取る。
アズライールがにこやかに空を見上げる。
すると、サトシたちの視界には落下中のタングステンシャフトを示す表示が、視界を埋め尽くさんばかりに出現する。
「……これは……追いつかないっすね……」
ルークスの姿が一瞬ブレたかと思うと、アズラーイールの背後に現れる。
アズラーイールは驚いた表情も見せずに、背後にあるルークスの顔面めがけて裏拳を放つ。
しかし、ルークスはその裏拳を右手で絡め捕ると、そのままアズラーイールの関節を決めたまま投げを打つ。
逆関節を決められたアズラーイールは大きな軌道で後ろへと投げ飛ばされるが、空中で体(たい)を入れ替え、ルークスと対峙する形で着地する。
アズラーイールは左手でルークスの顔めがけ手刀で突きを放つ。
その突きをルークスは紙一重で躱しながらその手を掴み関節を決めようとひねる。
が、その動きを利用してアズラーイールがルークスのみぞおちめがけて肘を打ち込む。
ルークスはその肘を左手で受け流しつつアズラーイールの足を払い体勢を崩す。
腰のあたりまで下がったアズラーイールの顔めがけルークスは膝蹴りを打つが、そのままアズラーイールに足を取られて投げ飛ばされた。
「さすがは日本で教育を受けていただけありますね。柔道や空手はお手の物ですか?」
アズラーイールは余裕の表情でルークスに尋ねが、ルークスは離れた所に辛うじて着地すると、苦い表情で答える。
「せいぜい体育の授業で柔道を齧った程度だよ。あんたこそ太極拳はお手の物ってか?」
「人民の嗜みですね」
アズラーイールはそう言うと、しゃがんだままのルークス目掛けて勢いよく膝蹴りを打ってきた。
ルークスは体をひねり辛うじて膝蹴りを躱す。スキルをすべて封じていても力の差は如何ともし難いものがあった。
ルークスは眉を寄せながら後ろに飛び退きアズラーイールと距離を取る。
サトシは上空を見つめながら肩をぐるぐると回していた。
「さあ。かかってこいヤァ!」
サトシの視界には、エンリルからの通知が所狭しと表示されている。空一面に散らばるタングステンシャフト。
それに加えて上空を高速で通過する複数の軌道衛星にマークが付けられていた。
「まずは、タングステンシャフトだな」
ひとしきりストレッチを終えたサトシは、上空のタングステンシャフトに向けて手を伸ばし、意識を集中する。
サトシたちのはるか上空。軌道衛星から放たれたのは、先端の尖った巨大なタングステンシャフトだった。
後部のロケットブースターが点火される。地球の引力に引かれて大気圏に突入するシャフトは、
大気との断熱圧縮により真っ赤に加熱されながらもどんどん加速して行く。
「まずはお前だ!」
サトシの声と同時に、上空のタングステンシャフトの先端に、大きな皿状の物体が現れる。
サトシの作り出したイモータライトの円盤。
突然現れた直径100mにも及ぶ巨大な物体によって、神の杖は、大皿の中心に立てられた小さなろうそくのような状態になった。
タングステンシャフトのロケットブースターは明々と炎を上げ必死に加速しようとするが、前部に取り付いた大皿により、思うように加速できないようだった。
しかし、重力の影響を受けながら徐々に加速して行く。
「ん~。今一つかなぁ」
サトシはそう言うと、シャフトに向けた掌に一段と魔力を込める。
途端に、円盤がひと回りもふた回りも大きくなり一段と加速を阻害する。
『どっすか?イケてます?』
サトシは現状をエンリルに確認する。
『良い案だとは思うが、この数全部行けるか?』
『数は問題ないんですけど、思ったより減速できてない気がするんですよね。メテオストライクは回避できても、地震くらいの衝撃はありそうですよね?』
『十分じゃないか?』
『ん~。十分ですかぁ』
エンリルは呆れ気味に褒めるが、サトシは納得のいかない様子で考え込む。
皿の部分で大気を受け止めながら、周囲に熱をまき散らしてタングステンシャフトは徐々に降下していた。
その横を猛スピードで通り過ぎる別のシャフトがあった。
『エンリルさん。この周辺で、神の杖が落ちても被害が少ない場所ってあります?』
エンリルはサトシの意図が理解できたものの、残念そうに答える。
『ここのずっと南西にある砂漠地帯なら大丈夫だと思うが、あの質量の物体をそこまで運ぶのは難しいと思うぞ』
『まあ、やってみますよ』
こいつ大丈夫か?とエンリルは、サトシの軽さに心配をせずにはいられなかったが、サトシに頼るしかないと該当する場所をサトシに示す。
『じゃあ、いってみよう!』
そう言うと、落下中のシャフトを目掛けて掌を向ける。
すでにかなりの速度まで達しているそのシャフトは、真っ赤に加熱されながら地上に向かってさらに加速していた。
サトシの言葉と共に、そのシャフトの中腹と後部に翼が現れる。その姿は先ほどまでとは打って変わり、主翼と尾翼を持ったジェット機のように変化してゆく。
そして、その翼の昇降舵、方向舵が動きタングステンシャフトが向きを変える。
「おりょ!?ちょっと厳しいか?」
翼に対してタングステンシャフトの質量が大きすぎるのだろう。サトシが期待するほど軌道が変化しない。
「このサイズじゃ無理があるかなぁ……もうちょい足すか」
タングステンシャフトの主翼と尾翼の長さが倍以上に伸び、昇降舵と方向舵もより大きくなった。
すると、タングステンシャフトは大きく弧を描き進行方向を南西に向け、砂漠地帯へと向かって滑空してゆく。
『何でもありだな……おまえ』
エンリルはその様子に驚きを隠せなかった。
『イケるもんですね。じゃんじゃん行きましょう!』
「参拾参號は素晴らしい対応力ですね。若干精神的破綻が見て取れるのが難点ですが、おおむね実験は成功ではないですか?生方先生」
アズラーイールはルークスの攻撃を躱しつつ、反撃を加えながら語りかける。
ルークスにはその言葉に返す余裕など全くなかった。
「どうしました?生方先生」
ルークスは揶揄するように嗤うアズラーイールを睨みつけるが、その実力差に閉口するしかなかった。
すべてのスキルを封じた状態ですらこのありさまだ。
「先生が頑張らないと、参拾参號にさらなる試練が降りかかりますよ」
その言葉にルークスは一旦アズラーイールから距離を取る。
アズライールがにこやかに空を見上げる。
すると、サトシたちの視界には落下中のタングステンシャフトを示す表示が、視界を埋め尽くさんばかりに出現する。
「……これは……追いつかないっすね……」
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